蓄音機サロン・ジャズ特集






■ドリス・デイを偲んで

急逝を受けて、第1部は追悼プログラム。井上マスターがドリス・デイの人生と歌の特徴を語りました。
もともとダンサー志望だったのが交通事故で断念、歌と映画女優の道へ。
初めてのヒット曲「センチメンタル・ジャーニー」は、レコーディングの段階でスタジオに居並ぶ強者スタッフたちを傾聴させたそうです。
歌はバラードが断然素晴らしい。バラードがいいのは、本物の歌手である証拠。
「ですから、むしろLPでじっくり聞かれるべき人と思います。」
選ばれた曲では2曲目と3曲目がバラードでした。
SP盤では聞き取りにくいけれど、息遣い(ブレス)の音までも雰囲気を高めています。きっと、意図的にやっているのでしょう…
4曲目の「恋に落ちたとき」では、ネコパパの耳でもその「ブレス」がくっきりと聞き取れました。



なかなか言葉にしにくい、歌唱の特徴も、マスターは見事な分析で解き明していきます。
フレーズの終わりにかかるヴィヴラートの効果、普通はブレスを入れて一息おく「さび」の入りで、間を置かず一気に音を伸ばして突入する爽快感。
そしてジャズ的なアレンジ。
どこがジャズ的なのか?ドリスは生粋のジャズシンガーとは違って、基本的にメロディーラインは変えません。けれども、ワンコーラスが終わった最後のエンディングで、僅かに一音だけ音程を上げたり、スイング感を加えることで、ジャズの味を出すのです。

そういえば…とネコパパは思います。ジョン・コルトレーンのバラード演奏も、それに似ているかもしれない。ほとんどメロディーそのままなのに、なぜかジャズそのものになっている。目立つアドリブではなく、リズムと少しのアレンジでジャズが生まれている…不思議ですね。

■スイングからジャズへ

第2部は、バンク・ジョンソンからスタート。
これはサットモことルイ・アームストロングの演奏で有名な曲ですが、バンク・ジョンソンも劣らず素晴らしい。ディキシーランド・ジャズは地方の黒人音楽で、発祥の当時は全国的な注目は集めませんでしたが1940年代にリバイバル、バンク・ジョンソンらも健在なうちに、注目が集まりました。
モダン・ジャズとは違って聞きなれないとわかりにくいかもしれません。三つの管楽器が最初からいっぺんに音を出します。トランペット、トロンボーン、クラリネット。主旋律はトランペットです。このリズム感にのって、体を動かしながら楽しみたいですね。

2曲目はサッチモ。このころは歌いません。ドラムの代わりにバンジョーが活躍する初期のヒット曲です。タイトルの「マスクラット」はビーバーみたいな動物だそうです。でもこの頃の、いやジャズ全般に、曲名は適当なものが多いですね。

3曲目はシドニー・ベシェ。活発な音楽ももちろんやりますが、この曲のようにソプラノ・サックスで朗々たるバラード演奏が評判になりました。グリッサンドで歌い上げるアルトサックスの名手にジョニー・ホッジスがいますが、ベシェはその先達です。


4曲目、またサッチモ。12インチ盤に収められたライヴで、ジャック・ティーガーデンとのデュオがふたりの老いた黒人の心境を表現しています。悲哀というより、悲痛な境遇に耐えたのちの死を待つ喜びみたいなものを感じますね。からみあうトランペットのもうひとりはリー・ワイリーとの共演でも有名なボビー・ハケットです。





5曲目のグッドマン、すごいメンバーでの演奏です。ジョージ・オールド、カウント・ベイシー、そしてギターはチャーリー・クリスチャン…ネコパパには、これが第2部で最も凄い演奏と思われました。ベイシーとクリスチャンのソロからは、時代を超えたジャズの魂みたいなものが伝わってきます。



6曲目のアーティ・ショウは戦後のアメリカ音楽がラテンアメリカに大きく傾斜していたことを如実に表す音楽。アーティ・ショウは勉強家で多彩なアレンジが持ち味となり、その分ジャズからは距離感が…でもこれはいいですね。

7曲目に予定されていた「マリー」は諸般の事情で取りやめ、ドリス・デイをフューチャーしたハリー・ジェームズの演奏に。「言葉で言えない美しさ」は映画「ア・マン・ウィズ・ザ・ホーン」の挿入曲です。控えめな歌唱のドリス・デイよりハリーのミュート・トランペットのジャズらしいそろが聴きどころです。

8曲目と9曲目はグレン・ミラー。「マリー」にかわって「チャカタヌーガ・チューチュー」と「真珠の首飾り」。グレン・ミラーはアレンジャーとして有名で、ジャズとは認識されていない風でもありますが、井上マスターは「ムーンライト・セレナーデ」よりもずっとジャズ、とおっしゃる。EMGのハイパワーな響きで聞くこれら2曲は、紛れもないジャズでありました…



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コメント

コメント(8)
No title
おはようございます\(^o^)/

サッチモは蓄音機で聴いたらたまらんでしょうね。\(^o^)/ 低音も高音もない音が魂を揺さぶるんですから、、、。

ではでは

Yさん

2019/05/31 URL 編集返信

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おはようございます。

あ、、、サッチモ聴きたくなってきた。
復刻のLPですが。(^^ゞ
「ナイス!」です。(^^)

tan*oi*y*n

2019/05/31 URL 編集返信

No title
> Yさん
1947年ライヴの「ロッキン・チェア」くつろぎの雰囲気の中に漂う哀愁がたまりません。
EMGの再生音は、まさに魂を揺さぶられる響きがしました。是非聞いていだだきたいですね。

yositaka

2019/05/31 URL 編集返信

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> tan*oi*y*nさん
「ナイス!」ありがとうございます。
LPでも十分に音楽は伝わると思いますよ。ぜひお楽しみください。

yositaka

2019/05/31 URL 編集返信

No title
「ナイス」☆☆☆
サッチモ、グレンミラー・・・LPや、CDなら手許にあるのですが・・・蓄音機で聴いたらたまらんでしょうね~~~

HIROちゃん

2019/05/31 URL 編集返信

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> HIROちゃんさん
ありがとうございます。たしかに「たまらん」のですが、それはEMGという銘機の存在も大きく、どんな蓄音機でもというわけにはいかないでしょう。
蓄音機にもハイエンドはあるのです。私のチビグラ2号では、ノスタルジーの響きになりそうです。
手軽にいい音を聴くなら、LPCDも十分にいいですよ。

yositaka

2019/05/31 URL 編集返信

No title
機械屋からEMGは、いいね!
ドリス・デイさんはもちろん、私の驚いたのはシドニー・ベシェの演奏「音の輪郭」が素晴らしい。
音圧が、低かったけれどキッド・オリーのソロも少し聴けました。
上も下も出にくい蓄音機ですが、音溝を拾ってダイレクトに拡声する為かな???
井上マスターが、SP盤ジャズにこだわる気持ち分かりますね。

チャラン

2019/06/01 URL 編集返信

No title
> チャランさん
シドニー・ベシェの良さがあまりわからなかったネコパパでしたが、これには参りました。蓄音機の強みは中身の詰まった中音域、こういう録音にはやはり相性がいいですね。ベシェのヴィヴラートの付けかたの朴訥な味わいがリアルに伝わってきました。

yositaka

2019/06/01 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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