音楽を楽しむ会・楽器の世界①ピアノ

今回の記事は2019年1月12日(土)に開催された「音楽を楽しむ会」の解説原稿です。
場所は豊明市図書館2階視聴覚室。



約30名の参加者がありました。皆さん、ありがとうございました。

■就任のごあいさつ

おはようございます。
今回から音楽を楽しむ会の解説を務めさせていただくことになりました、ネコパパと申します。
27年も続いている会の二代目の解説者をご拝命ということで、先代のK先生の知識と実践に裏付けられた味わい深いお話には到底及びませんが、ひとつよろしくお願いします。

さて第1回目の今日は、楽器の世界その1としてピアノをテーマに音楽を楽しんでいきたいと思います。
それではまず、この曲からお聞きいただきましょう。

■ピアノという楽器

ぴあの 谷川俊太郎 詞 谷川賢作 曲


この詩には、ピアノを習う子どもの二つのイメージがうたわれていると思います。
一つは厳しい練習を耐えて習わなければならない楽器、という痛みのイメージ、もうひとつはその音色が時と場所、生と死を超えて人を慰める、そんな憧れの楽器としてのイメージです。
作曲家の谷川賢作は詩人の谷川俊太郎の息子で、この録音でピアノを弾いていたのも彼です。あちこちにピアノの名曲をちりばめているのも愉しいですね。
モーツァルトのロンドニ長調、シューベルトの軍隊行進曲、バッハのメヌエットとコラール前奏曲「主よ、人の望みの喜びよ」などが聴き取れました。

さて、現在私たちが親しんでいるピアノという楽器の語源はgravicembalo col piano e forte、強弱を持つチェンバロという意味です。
ルネサンス音楽やバロック音楽で広く使用された鍵盤楽器チェンバロはピアノのように弦を叩いて音を出すのではなく、ギターのようにはじく構造でしたが、強弱が出ないという欠点もあって、18世紀後半からピアノの興隆に伴って徐々に音楽演奏の場から姿を消していきます。

ではここでチェンバロからピアノへの音の移り変わりを、同じ曲の冒頭部分で聴き比べてみましょう。

バッハ  「ゴールトベルク変奏曲」から「アリア」(4つの楽器の聴き比べ)

クラヴィコード (小型のチェンバロ)  
バロックチェンバロ 
フォルテピアノ   
ピアノ 


■リストとショパン      

ここからは19世紀の名ピアニストで作曲家、リストとショパンの作品を聴いていきます。
モーツァルトもベートーヴェンもシューベルトもピアノ曲を作曲しましたが、ピアノという楽器が宮廷や貴族のサロンから市民に広がり、普及したのは19世紀、産業革命の時代でした。
8000個の部品を工場で組み立て、大量生産されるピアノは、歴史に初めて誕生した市民に手の届く楽器であり、観衆を前に華麗な技巧を披露するピアニストは、当時の大スターになったのです。

次にお聞きいただくリストの「ラ・カンパネラ」の正式名称は『パガニーニによる大練習曲』第3番。
当時絶大な人気を誇ったヴァイオリンの名手ニコロ・パガニーニのヴァイオリン協奏曲第2番第3楽章『ラ・カンパネラ』の主題をもとに書かれたものです。
名前の Campanella は、イタリア語で「鐘」という意味です。
ピアノの高音が鐘の音を再現する、華麗な曲想をお楽しみください。

リスト  「ラ・カンパネラ」   ゲリー・グラフマン(P) 


アメリカの名ピアニスト、ゲリー・グラフマンは、昨年10月に90歳を迎えた、世界最長老のピアニストの一人です。
彼は伝説の巨匠ホロヴィッツの弟子にして、現代のスターピアニスト、ラン・ランやユジャ・ワンらの師匠でもあります。

グラフマンの弾くリストをもう1曲。「愛の夢」第3番です。

原曲は、「おお、愛せるだけ愛してください」という、情熱的な恋愛を歌った歌曲で、作曲は1850年、親友ショパンの死の翌年でした。
リストは当時、パリを中心としたコンサート活動に区切りを付け、ワイマールの宮廷楽長として作曲や指揮活動に専念していました。この曲の抒情的な味わいや「ノクターン」の副題にはショパンの影響も感じられますが、前触れなく、さわりのメロディーからいきなり入って、後半で華麗な展開を聴かせる構成は、さすがに「ピアノの魔術師」ですね。

リスト 「愛の夢」第3番   ゲリー・グラフマン(P)



続いては、ポーランド生まれの「ピアノの詩人」ショパンの作品です。
リストとともにパリの人気を集めたショパンでしたが、リストと違って内向的な性格で、大きなコンサートにはあまり興味がなく、富裕層のサロンで演奏することが多かったようです。
まず、「雨だれの前奏曲」。
1838年から39年にかけて作曲された「24の前奏曲」の一つで、このときショパンは、リストの紹介で親しくなった女流詩人ジョルジュ・サンドとマヨルカ島での同棲生活をしていました。島は当時地中海性気候の雨の多い時期で、長く降り続く雨が曲想に影響を与えたとも言われています。

ショパン 「雨だれ」のプレリュード 仲道郁代(P) (動画はコルトーで)


  
前半最後の曲は、「バラード第1番」です。
パリ滞在中の1831年から1835年に作曲された曲で、ピアニストとしての人気絶頂期ですね。
ジャズやポピュラー音楽でバラードというと、ゆっくりとした叙情的な曲をさしますが、ショパンのバラードは「譚詩曲」つまり、物語詩的なドラマをはらんだ音楽です。この第1番は音階の急激な上昇と落下によって、聞き手をジェットコースター的な感覚に陥れ、しかも情感も豊かという聴きごたえ十分の曲。映画「戦場のピアニスト」のクライマックスで用いられたほか、フィギュアスケートでも浅田真央選手が2010-2011シーズンのエキシビションで使用、羽生結弦選手も3つのシーズンのショートプログラム使用されています。

ショパン バラード第1番  ウラディーミル・ホロヴィッツ(P)



★蓄音器コーナー★
蓄音器は電気を使わないオーディオ装置で、日本では明治時代から戦後まで、およそ60年にわたって製造されていました。
これは1937年に発売された日本コロムビアのポータブル蓄音器No204です。製造されて80年たっていますが、なかなか元気な音を出してくれます。
今日はこれでアルフレッド・コルトーの演奏するショパンの「幻想即興曲」を聴いてみましょう。

ショパン 幻想即興曲 アルフレッド・コルトー(P) 録音:1933年



最後の1曲は、ショパン若き日の大曲、ピアノ協奏曲第1番です。

1830年完成、ショパン20歳。初演は、同年の10月11日にワルシャワ国立歌劇場でショパン自身のピアノ演奏で行われ、翌年ショパンは祖国ポーランドに永遠の別れを告げることになります。協奏曲と言っても主役はピアノ、哀愁を帯びた旋律が華麗な技巧によって展開される、聴きごたえ十分の大作です。
ギャリック・オールソン(1948年- )は、ニューヨーク出身のピアニスト。
1970年に第8回ショパン国際ピアノコンクールで優勝(2位は内田光子)、大柄な体格と強靭な指を生かして豪快なフォルティッシモを轟かせるが、決して荒々しくならず、独特の柔らかみと温かみのある音色の持ち主です。

ショパン ピアノ協奏曲第1番    
ギャリック・オールソン(P)
アントニ・ヴィト指揮 ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団



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コメント

コメント(4)
No title
近所の図書館でこのような催し物があったら絶対出かけると思います。
ネコパパさんならではの工夫が凝らされた選曲と演奏がとても興味深いですが、拝読しながら自分だったらどのような曲を選んで誰の演奏をお聴かせするだろうかといろいろ考えてしまいました。
蓄音機コーナーがあるのもネコパパさんらしいですが、蓄音機のサウンドはどのように受け止められたのでしょうか。

ハルコウ

2019/01/13 URL 編集返信

No title
> ハルコウさん
実際は、演奏の特徴や演奏者ホロヴィッツやコルトーのエピソードなどもつい調子に乗って話してしまい、時間ギリギリになってしまいました。
小さな蓄音器が広い会場でどれだけ鳴るか心配もありましたが、そこそこ聞けて、参加者の皆さんも近くによって見に来られたり、関心を持っていただけたと思います。マイクの使用など、反省点は多々あるのですが、2回目以降、少しずつ改善していければと思っています。

yositaka

2019/01/13 URL 編集返信

No title
ネコパパさん、お疲れさまでした。
(4つの楽器の聴き比べ)は、音色の違いが良く分かり良かったです。
欲を言えば視聴覚室の為、SPの焦点がスクリーンにあったように思えますのでスクリーンに各楽器の画像があったらいいなと思いました。
最後のギャリック・オールソン(P)の演奏映像は、解説の指揮者と演奏者のアンウンの呼や演奏者の鍵盤のタッチ、スタンウェイの音色が良く分かり良かったです。

チャラン

2019/01/13 URL 編集返信

No title
> チャランさん
土曜の午前というのにわざわざ名古屋からお出かけいただき、感謝感激です。
スクリーンの活用についてですが、目下のところ映写室で操作するしかないため、私のスピーチとタイミングを合わせて画像を映写することができにくいのです。
もしもPCをつないでプレゼンしながら話ができると一層いいのですが。そのあたりの設備が古くて、「視聴覚室」の体をなしていない。空調設備も旧式。何とか予算化してもらえるといいのですが、今後の課題ですね。

オールソンのショパンには驚きました。あんなに細部まで明晰かつ魅力的な演奏もめったにないでしょう。まるで師匠アラウの魂が乗り移っているみたいです。ヴィトの指揮の緩急自在な合わせっぷりにも脱帽です。40分イッキはさすがにきついかと思いましたが、演奏の力で持ちこたえたと思います。

yositaka

2019/01/13 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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