2018年の読書③



「落穂ひろい」(1982)「絵本論」(1985)「児童文学論」(2009 以上福音館書店)の三部作は瀬田貞二の主著と言えるものですが、すべて著者没後に出版されたもの。編集者としてこれを世に出した人が荒木田隆子氏です。本書は瀬田の初めての評伝であるとともに三部作を読み解く格好のガイドブックと呼べる重要な一冊。
瀬田貞二といえば「ホビットの冒険」「指輪物語」などの翻訳者として記憶されている人も多いと思いますが、福音館の松井直、理論社の小宮山量平とともに、戦後児童出版の基礎を作り上げた編集者・評論家と言えるでしょう。彼がなぜ、どのようにしてそれを成し遂げていったかを知る、唯一の本がこれだと思います。





瀬田貞二の児童文学論三部作は、連載、記事、書評など瀬田の残した多くの文章を前述の荒木田氏が編集して出来上がったものです。
掲載媒体による対象読者に応じての文体の不統一や内容の重複などが目について、なかなか精読できないでいたのですが、「子どもの本のよあけ」を読むことで本の筋目が見えて、この二冊をようやく読み通すことができました。
膨大な内容を自分の中でどのように「消化」するのかは今後の課題です。
例えば瀬田は「ファンタジー」という用語の日本への紹介者でしたが、「児童文学論」を読むと、この言葉の意味するものについてさまざまな方向から検証を続ける瀬田の苦闘の足跡をたどることができます。
今後「ファンタジー」を安易に口にすることはできないなと思いました。



2018年12月に行われた日本イギリス児童文学界の研究大会では「少女小説」についての研究成果が多く発表されました。その印象冷めやらぬところでこの本に出会いました。
一般向けのムック本ではありますが、欧米の少女が日本でどのようにアレンジされ、紹介されてきたのかを、当時の絵本、雑誌、絵物語などのカラー図版を豊富に用いて紹介したもので、なかなかこれだけの資料を目にすることは難しく、貴重な一冊と言えるでしょう。研究でしばしば言及されるイギリスとインドの関係についても説明があります。
個人的にはその昔、小学校の低学年図書館で読んだ「講談社の絵本・家なき子」が完全復刻で掲載されていたのには感激でした。ただ、この種の本の通例なのか、執筆者名が一部を除き掲載されていないのが残念です。






この二冊は、蓄音機クラブ例会でコメントするため、戦後の来日演奏家について調べる中で出会ったものです。
「少年とバイオリン」は、ユーディ・メニューインが戦後最初の外来演奏家として来日した折のエピソードを朗読台本化したテクストに、宇野亜喜良の魅力的な挿絵を加えたもの。実話をもとにした人情話という風情があります。
「マリアンは歌う」は、根強く残る黒人差別に対し、歌の力で道を開き、最初の黒人オペラの歌手として成功をおさめたマリアン・アンダーソンの半生を描いた大型絵本です。彼女の生きた時代のアメリカの実情が浮かび上がる力作です。
クラブ例会では軽く触れる程度でしたが、今年からスタートする図書館の「音楽を楽しむ会」では、読み聞かせも含めたプレゼンをしてみたいなと思っています。




孫のテンコは6歳、本を読むことに熱中しています。
そんなテンコの近頃のお気に入りがこのシリーズで、何度読み返しても飽きない様子。何がそんなに…と手にとったのがこの一冊。いやー、見事なまでに「遊び」に満ちた本ですね。主人公のおしりたんていの必殺技は、もちろん○○○なのですが、それ以外は至って上品な物腰の紳士。
ストーリーは古今東西の冒険物、推理もののパロディで、これはこれで大人も楽しめます。ですが一番の楽しみは、戦後日本の絵本氏が培ってきた「細部を読む楽しみ」「探し物の楽しみ」を存分に生かしていること。「おしりさがし」「まちがいさがし」など、かなり緻密にできていて、大人も知らず知らず熱中してしまう。
さらにこの「かいとうVSたんてい」には、説明もなく、大人でないとわからない「見立て」の面白さも隠されていました。親が先に気づいたら、親子で会話もできる、そんなコミュニケーションの楽しみも含まれているのです。
売れているだけのことはありますね。これは侮れない。
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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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