2018年の読書②



ポスト大学入試センター試験として提示された「共通テスト試行問題」を詳細に分析。契約書や自治体の景観保護ガイドラインなどの実用文を複数提示して参照し合うことを「実践力」とみなし、文学の読みを後退させている傾向が顕著です。広島大の難波教授が「このままでは文学部もなくなり、文学研究そのものが消滅してしまう」と警告するのもわかります。
では、文学教育はなぜ必要なのでしょうか。人間にとって文学は必需品なのか。「もちろん」とネコパパは考えますが、その理由を説明するとなると…(´・ω・`)




内田樹氏の著作は社会の様々な問題について考えるヒントを「すぱっと明確に」提示してくるので、重宝しています。本書は長い期間に渡る筆者の書評による思索遍歴の足跡をたどるもので、これまで読んだどれよりも「内田樹のすべて」が一冊に集約されている、という手応えを感じました。
例えばこんなところに。
 「知性の切れ味というのは、平たく言えば、『誰かを知的に殺す武器としての性能の高さ』のことである。でも、その性能は、『「知的にも、霊的にも、物理的にも、人を損なってはならない』という禁戒とともにあるときに爆発的に向上するのである。」
 



昭和のオーディオブームに少年時代を送った者なら、誰もが経験したはずの、数々のエピソードが、洒脱な文章とイラストで描き出された一冊です。
初版は2009年で、これは増補改訂版。
オーディオを「ステレオ」と呼んで憧れていた時代の空気が蘇り、思わずジーンときました。ただ、著者は後に行くほど、かなり本格的にオーディオを志向されていくので、未だに「家電オーディオ」愛好者のネコパパにはちょっと付いて行きにくくなります。一般の人が「オーディオ」に別れを告げたのは、はたしていつなのか…




片山杜秀はNHKFMで「クラシックの迷宮」というレギュラー番組を持っていて、それはかつて吉田秀和の担当した「名曲の楽しみ」の後続番組なのです。
彼は本書で吉田秀和賞を受賞した、いわば吉田自身が後継者と認めた人。この番組で、一体どこから仕入れてくるんだと思うような膨大な知識と、縦横無尽な語り口を披露しています。これを聞いているうちに、著書も読みたくなって購入…
いや、これは面白すぎる。
この人の本は今後いろいろ読んでいくことになりそうです。



蓄音機クラブの人々にはタンゴファンが多く、ネコパパもちょっとは勉強しないと…と思って読みました。
アルゼンチン・タンゴの歴史と日本の受容史がきっちりとまとめられ、特に後者は大変興味深く読みました。特に面白かったのは、後半の日本歌謡曲への単語の影響を考察した文章で、筆者によれば昭和初期の歌謡曲の圧倒的多数がタンゴのリズムを生かした「タンゴ歌謡」だったとのこと。例えば「有楽町で会いましょう」もそうだというのは、にわかに信じがたい気もするのですが、いろいろ聞いてみたいという気持ちになったのは間違いなしです。




日本でレコードというメディアがどのように受け入れられ、発達してきたかを多くのデータをもとに叙述。とくにレコードの価格についての資料は参考になります。
ただ、現在の形は初版時の半分程度に削除圧縮したもののようで、読んでして「もっと詳しい資料があれば」と思ってしまうのはそのせいでしょう。岩波書店はなぜ完全版で出さなかったんでしょうね。
興味深いのは、日本のレコード史が常に「海賊盤」と隣あわせで進んできたこと。近年のうるさすぎる著作権問題にはいろいろ思う所があるのですが、この歴史を読むと、レコード業界、音楽業界の歴史がある意味海賊盤との戦いに明け暮れた歴史であり、その流れとして今があることに気付かされます。
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コメント

コメント(9)
No title
牧野さんの本は最初の出たときに買って読みました。蛙の鳴き声生録には笑ってしまいましたが似たことはぼくもしていたと思います。岡崎の人だったのでは。
片山さんの本は、ぼくはなぜか2冊持ってたのです。差し上げればよかったです。高橋悠治と藤井貞和とについては第1巻にありましたよね。第2巻も快調ですよ。
片山さんは日本の右翼思想研究も勉強になります。図式化するのが上手です。上手過ぎて警戒してしまうくらい。
小倉さんの本は、是非とも初出の完本を探して読んで見てください。抄本とは異なる迫力を感じます。マニアはこうありたいものです。
趣味の本が楽しい。国語関係は商売感覚になって辛いこともあります。

シュレーゲル雨蛙

2019/01/05 URL 編集返信

No title
ちょっとコメントしづらい当記事に、新年のご挨拶を ― 遅まきながら。

今年もよろしくお願いいたします。

片山氏は、音友ムックで珍曲・珍盤をあまた紹介され、一時期追っかけて購入し、けっきょく何ひとつ愛聴曲、愛聴盤にならなかった、というイタい思い出があります(笑)。
例:カール・アマデウス・ハルトマンの交響曲全集
ですが、愛聴ラジオ番組《荻上チキ Session-22》で、天皇制・日本の近代化などがテーマの時にコメンテーターに呼ばれることが多く、お声に接してはおります^^。

内田氏は、話題作『下流志向』を読み、当方にいささかの敵意があったせいもあり、“噴飯もの”以外の印象がなかった著者でした。別の本を読んだら印象が変わるかも。

『日本レコード文化史』は、東書選書版が原本でしょうか。東書選書版のほうがページ数が少ないようです…。
ふむ~、とりあえず片山本と牧野本を注文しようかな、と…。

へうたむ

2019/01/06 URL 編集返信

No title
> シュレーゲル雨蛙さん
生録されましたか。私はそのブームには出会いませんでした。子どもの頃は妹と歌を歌ったのを録音したりしてました。

片山杜秀氏は政治学の本も読んでみたいと思っています。取りあえずは先日出たばかりの「ベートーヴェンを聞けば歴史がわかる」を読むつもり。
図式化については、年末の「音楽ハイライト」でのコメントでも感じました。そりゃ、ざっくり言いすぎですよ…と思いましたが、その分野に明るくない人には、やっぱりわかりやすい。戦略的にそうしているんだと思います。

「日本レコード文化史」は1979年刊、東京書籍の単行本で全534ページの大冊でした。削除圧縮は小倉さんの方から言い出したらしいので、元版の再販は難しそうですね。古書は入手困難ですが、探してみるつもりです。

yositaka

2019/01/06 URL 編集返信

No title
> へうたむさん
コメントしにくい記事に長文のコメントをありがとうございました。今年もよろしくお願いします。

片山氏の本は、ちくま文庫でも出るようです。二冊目の『音盤博物誌』と合わせて「音盤放浪記」として再構成されているようです。私はこちらも入手してみるつもりです。再刊でタイトルを変更するのは、知らない読者には混乱のもとで、なるべく避けて欲しいのですが、長田弘のように「再刊も新しい本である」という考えの人もいますから、何とも言えません。せめて、目立つところに明記は必要ですね。

片山氏は未知未聴の現代曲に一種の恍惚を感じる人らしいので、そこは「そういう人なんだ」と思いつつ享受するしかありません。
内田樹氏も同様で、「武道家としての身体的直感」が彼の著述の原動力になってることは良かれ悪しかれ、承知しておくべきだと思っています。それをぬけぬけと開陳している部分は、私はさらっと飛ばして読むことにしています。

yositaka

2019/01/06 URL 編集返信

No title
タンゴについて、書くの忘れました。タンゴの歴史という3枚組LP(パイオニア盤だったような)がありました。日本人、タンゴ大好きですよ。神田の古書店街裏のタンゴ喫茶ミロンガは今も現役です。歌謡曲全般の分析は初めて知りました。読んでみたいです。
片山さんの勧める盤は、ぼくは意識して買ったことないのですが、FMのクラシックの迷宮はときどきエアチェックします。面白い音源がありますから。山田和男(一男)作曲の「おほむたから」などは興味深く聴きました。またナクソスの日本人作曲家シリーズは買い揃えました。が遺憾ながら半分は聴いていません。耳がまともなうちに聴いておかなくては。片山さんの勧める盤は、未知の曲、未知の演奏家が中心で、既知のそれの発掘音源、新録音でないところから、何か取っつきにくいです。しかし、一つ当たりがあれば大きい気がします。

シュレーゲル雨蛙

2019/01/06 URL 編集返信

No title
> シュレーゲル雨蛙さん
蓄音機クラブにはタンゴ好きが大勢いらっしゃるので自然に興味がわきました。1930年代のアルゼンチンタンゴは大恐慌後、アメリカ経済が南米に注目した時期からレコードを通じて世界に広まったのです。音楽的にも、文化史的にも、面白いジャンルだと思います。

片山氏がアドバイザーになったと思われるナクソスの日本人作曲家シリーズ、私も何枚か買いました。
音楽には、周辺事情から迫る面白さも確かにありますが、「聴いておかなくては」と思ってしまうと億劫になる面もあります。年を取るにつれて初めての曲を消化する感受性も鈍ってくるようです。
そんなときにいい刺激になるのがラジオですね。

yositaka

2019/01/07 URL 編集返信

No title
> シュレーゲル雨蛙さん
あれから「日本レコード文化史」東京書籍版を入手しました。
昭和54年初版で、翌55年には早くも重版していましてこれは第2刷、美本です。箱入りの立派な本で、資料の多さは圧倒的。これでは岩波版には到底戻れませんね。
プレミア付きのものを相当見かけましたが、幸運にも2,641円で入手できました。

yositaka

2019/01/12 URL 編集返信

No title
> yositakaさん
それはお値打ちですよ! 資料分厚いでしょう? これぞ趣味です。手段と目的とが別れていない。倉田さんは、きっと子どもの遊びの感覚だったと思います。

シュレーゲル雨蛙

2019/01/16 URL 編集返信

No title
> シュレーゲル雨蛙さん
見ても読んでも楽しい本です。類書もないし、絶版のままではまずいです。増補改訂版にしなくちゃ。

yositaka

2019/01/17 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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