フリッツ・レーマンの「田園」~重厚なロマンの香り

ベートーヴェン 交響曲第6番ヘ長調Op68「田園」
フリッツ・レーマン指揮
チェント・ソリ管弦楽団





DCF22 仏クラブ・フランセ LP 初出 1956年(MONO)

第1楽章 13:58
遅いテンポで重々しく開始。全体に遅めのテンポを崩さず、強弱の幅を広く取った、後期ロマン派の足取りで進められていく。強いクレシェンドと、熱い意志の力を感じさせるフォルティッシモが魅力だ。
音の作りも、チェロやコントラバスを深々と響かせるドイツ的なもの。音色は終始柔らかく溶け合い、その中にフランス風の明るい木管の音色が明滅する。提示部の反復実行もあって、スケールの大きい演奏だが、ブレンドされた音色がやや単調に聞こえるのが惜しい。

第2楽章 15:24
第1楽章と比べてもまた一段と遅い。音色や演奏の特徴はここまで同様、びくともしないピラミッド・バランス。重い響きでひたすら柔らかく鳴らしていく。オーケストラの特徴を考えると、フルート、オーボエ、ファゴットはもうすこし表に出て音彩を加えて欲しいと思わせるが、この柔らかく溶け合った響きこそ、指揮者が求めているものなのだろう。
唯一木管の音色で酔わせる小鳥の歌の後の沈み込むような弱音は感傷の極み。

第3楽章 5:35
後半は打って変わって活気がみなぎる。
まずは、曇り空に陽光が差し込むように、明るく活発なスケルツォ。主部の管楽器の活躍は目覚しく、強弱の明確なオーボエ、ヴィヴラートたっぷりのホルンがフランスの色香を撒き散らす。対するトリオは遅めでリズムを尖らせず、柔らかく進む。

第4楽章 3:33
わめかず、叫ばず、でも十分な迫力を秘めた嵐の音楽である。付け足しの盛り上げを感じさせないのは、フレーズ冒頭にアクセントつけず、一息入れてから強くするやり方によるのだろう。ティンパニも弱めに抑えている。

第5楽章 8:50
前楽章から急激にテンポを変えるような演出はなく、すっきり導入する。
ブリッジ・パッセージのホルンのヴィヴラートが強いこと!
弦による感謝の主題はごく弱く入って、大きくクレシェンドをかけて盛り上げる。
ここでのフォルティッシモは強く深い。フィナーレこそこの曲のクライマックスであると宣言するかのようでもある。
これ以降は、クレシェンドとともにアッチェレランドをかけ、押しては返す波のような楽想が繰り出される。それは後にいくほどテンポが上がっていくように感じられる。その一方で、音楽の鎮まる波間の部分は柔らかく情感豊かに歌い上げる。
この解釈は、誰かに似ている。
そう、ブルーノ・ワルターのフィナーレの造形にそっくりなのだ。そういえば、フリッツ・レーマンの姉、ロッテ・レーマンはワルターと親しい歌手で、二人が共演したシューマンの歌曲の録音も残されていたっけ…

それはさておき、このドイツ・ロマンの香りにフランスの彩を加えたこの「田園」は、なかなかの魅力作であった。



フリッツ・レーマンは、(Fritz Ludwig Lehmann, 1904年5月17日 - 1956年3月30日)は、ドイツの指揮者。ドイツ各地の歌劇場や音楽祭の監督として活躍し、バッハの権威者として知られ、カール・リヒターの先輩格に当たる。
52歳の若さで死去している。ウィキによれば、ミュンヘンでバッハの《マタイ受難曲》を演奏中に急逝したとのこと。

チェント・ソリ管弦楽団は、フランスの録音用オーケストラで、メンバーはパリ音楽院管弦楽団、フランス国立放送管弦楽団の団員が中心になっていたそうである。「チェント・ソリ」は「100人のソリストたち」という意味。いかにもフランスらしい命名だ。

Youtubeにもアップされていたのでご参考までに。
ただこの動画、ちょっと音が…


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コメント

コメント(2)
No title
レーマンの田園、全部聞きました。
聞き始め(うわっ、遅い!)と思ったのですが、聞き進めると意外と馴染んでくる。
曲が終わると(なかなか良いじゃないか)思うようになりました。
気に入りました。

不二家 憩希

2018/11/29 URL 編集返信

No title
> 不二家 憩希さん
お聞きいただきありがとうございます。
LPの音質もさほど良好ではなく、ちょっとボケ気味ではあるんですが、YOUTUBEは高音の歪が残念です。まあ、上がっていただけでも驚きでしたが。
レーマン自身の解釈はドイツ風ですが、オーケストラが勝手に?撒き散らすフランス風の音色がいいんです。東京の店で見つけて、買おうかどうか迷ったのですが、裏と表のはじめを試聴させてもらって「いいな!」と思い入手しました。

yositaka

2018/11/29 URL 編集返信

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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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