角野栄子氏がAERAの表紙に

「魔女の宅急便」の原作者としてお馴染みの児童文学者、角野栄子さんが週刊誌「AERA」(朝日新聞社出版)2018/07/23号の表紙になっています。
このジャンルの住人に脚光が当たるのは珍しく、嬉しいことでもありますが、とても表紙映えのする、魅力的な方なので、この号の売上げはきっと良かったことでしょう。



といっても角野さんや児童文学についての大きな記事が出ているわけでもありません。わずか5ページです。

最初は、「表紙の人」として、角野さん国際アンデルセン賞受賞のニュースが1ページ。
タイトルは「読んだ瞬間から、その人の中で生き始める、そういう物語を書きたい

まずはファッションの話から。
「髪が白くなる日れて身に付けるものが自然に鮮やかな色になってきました。ワンピースはいつもお願いしている方がいて、気に入った布を見つけると、同じデザインで仕立ててもらっています」
続いて子供の頃の読書の思い出と読書の素晴らしさについてコメントします。
「読書の素晴らしさは、読む楽しさはもとより、自分の身体の中に一生使える言葉の辞書が出来ていくこと。使える豊富な言葉を持てば、表現が豊かになるし、その人の世界も広がっていくと思います」
気になるのは、作品のテーマや意図を聞かれることで、
「例えば平和について考えていたとしても、それをそのまま書きたくはない。面白い物語を通じて読者が受け取ってくれるものがあるといいな、と思っています」

次の記事は、作家高橋源一郎さんとの対談です。見開き2ページ。
タイトルは「読んだ瞬間からあなただけの物語
以下、ネコパパの印象に残った箇所を書き写しておきます。

■物語の発想

高橋 書き始めるとき、タイトルを先に考えますか?
角野 タイトルを思いつくこともあるけれど、たいてい絵を描くんです。絵といっても、いたずら書きで、人や街、建物の間取りを描いたり。
高橋 そのとき、どこまで具体的に描くんでしょう。
角野 例えば「魔女の宅急便」は、娘が描いた「ラジオを聴きながら黒猫と箒に乗っている魔女」の絵を見て、思いつきました。
高橋 かの有名な絵ですね。
角野 本人は「誰の絵だと思っているの」と不満そうに言いますけどね。その時の娘と同じ12歳くらいの女の子を主人公にしようと、それだけ決めて考え始めたんです。



高橋 エピソードを考えるんじゃないんですね。
角野 「その子がどういう格好をして、どんなところにいるのかな」などと考えているうちに、登場人物から、吹き出しみたいなセリフが生まれてくるんです。
角野 私は自分のことを書いたのは『トンネルの森 1945』だけ。あとはみんなうそ話。

■子どもを書く作家の姿勢

高橋 リンドグレーンの書く子どもを読むと、「子どもそのものがいる」という感じで、かなわないと思う時がありますね。
角野 『長くつ下のピッピ』が出るのは1945年、戦後です。だから戦争について思うことはあっただろうけれど、リンドグレーンは一言も触れていない。そのかわり、面白い物語を通じて、他人に左右されない、強い人間でいることの大切さを書いています。



高橋 ケストナーもそうですね。大人は自分に責任があるけれど、子どもは自分の運命は選択できないのに厳しい状況に置かれている。子どもを書く作家の向き合い方はきついです。
角野 大人は責任を取らなきゃいけないけれど、お話の中で押し付けてもいけないのね。
高橋 子どもを描きながら、大人はどうしたらいいのか突きつけられる側面が児童文学の背景にはあるんだと思います。

■物語を読むことの素晴らしさ

高橋 生まれた時からインターネットやスマホがある世界に生まれた子どもたちでも、やっぱり物語は必要なんですよね。
角野 そうなんでしょうね。本の場合は書かれている世界を想像しながら読むから、その瞬間から、読者だけの物語になっていくのよね。私が書いたものでも、読者その人の物語になる。そこが本で物語を読むことの素晴らしいところだと思うの。



対談の次の2ページは角野さんを離れて「世界観が変わる子どもの物語」と題して、3人の著名人の推薦する子どもの本の紹介になっています。
三つの記事の筆者は同一で、「ライター 矢内裕子」となっています。
ネット検索してみると矢内さんは編集部の記者ではなく、フリーランスのライター&編集者で、マンガ、美術のほか、古典芸能、茶道など伝統文化について執筆・編集をおこなっている方とのこと。「AERA」は外注したわけです。ということは、推薦者の人選も矢内さんなんでしょうね。



この三人の選書ですが、なかなかユニークでしたので、以下に引用します。みなさん、何冊ご存知でしたか?

【NASAエンジニア 小野雅裕さんが選ぶ3冊】

『よるくま』酒井駒子作 偕成社/「ママあのね」と、お休み前のベッドの中で男の子が話すのは、夜中に出会った、「よるくま」という子熊との小さな冒険
『もこもこもこ』谷川俊太郎作 元永定正絵 文研出版/空と地面の絵に「しーん」から始まり、「もこもこ」「にょきにょき」など、オノマトペだけで展開する驚きの絵本
『機関車トーマス』W・オードリー作 R・ダルビー絵 桑原三郎、清水周裕訳 ポプラ社/架空の島・ソドー島で働く、顔を持った蒸気機関車トーマスと仲間たちの生活を描く



【アナウンサー 赤江珠緒さんが選ぶ3冊】

『トマトさん』田中清代作 福音館書店/ある夏の昼下がり、真っ赤に熟して地面に落ちたトマトさん、その迫力ある姿で、小川に入ろうとして……
『うどんのうーやん』岡田よしたか作 ブロンズ新社/うどん屋さんは人手不足。うどんのうーやんは自分で出前に出かけたが、川を渡り山を越え、果たして無事に着くのか?
『どろぼうがっこう』かこさとし作 偕成社/山のはずれにあるおかしな「どろぼうがっこう」、大泥棒の先生と生徒たちのおかしなどろぼう修業を描く




【作家 中島京子さんが選ぶ3冊】

『だれも知らない小さな国』佐藤さとる作 村上 勉絵 講談社/大事にしている秘密の小山を流れる川で、小さな人たちが手をふるのを見たぼく。日本初の本格ファンタジーの傑作
『ハックルベリー・フィンの冒けん』マーク・トウェイン著 柴田元幸訳 研究社/困難を機転でのりこえてゆくハックののびやかな語りで、19世紀のアメリカ社会の様子、奴隷制などを描いた名作



『大いなる遺産』ディケンズ著 佐々木徹訳 河出文庫/少年・ピップに莫大な遺産を贈ってくれたのは誰か、その理由は? 物語の仕掛けと魅力に満ちた傑作小説


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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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