望月衣塑子さんの講演会を聴く

昨日は地元の市民運動グループ主催の講演会に、アヤママと二人で出かけました。
講師は東京新聞社会部記者の望月衣塑子さんです。




この日も猛暑だったのですが、話をされる望月さんの、大きな身振り手振りを伴って、機関銃のような口調で話される勢いの熱いこと。満席の会場の温度がどんどん上がっていくように感じたくらいでした。

テーマは
「進む政治の私物化、瓦解する官僚たち~安倍政権とメディア~」

望月さんの記者としてのテーマは、「権力側が隠そうとすることを明るみに出すこと」。講演はその姿勢を頑固に守った取材活動の一端を示すものでした。

まずは「武器輸出」の問題です。

望月さんは「私の記事を最もすみずみまで丁寧に読んでくれる愛読者は防衛官僚の方々」と言われます。プレッシャーをかけつつも、彼女の報道をおそれている。鋭い事実があるからなのでしょう。目下政府は日本の武器輸出を推進しているのですが、防衛企業とされている会社を取材すると、「軍事に携わると企業評価はが下がる。そんなリスクはとりたくない」「現在の日本では機密流出を防ぐ手立てがなく、安易に輸出すれば日本の機密が垂れ流しになる」として「本当はやりたくない」という意見が少なくないようです。

■膨張する防衛予算

日本は日米首脳会談などで米国製の武器の購入を迫られる。
武器購入実績は2010年の551億円に対し、2016年には4858億円に増加している。防衛省予算は過去最高を年々更新して2017年は5兆1900億円です。
待機児童2万6千人の問題解決には342億円かかるそうですが、これなどオスプレイ3機気分で解決です。
攻撃技術の研究も進められています。例えば高速滑空弾という兵器の射程延長に関する研究で、これは防衛庁内の議論を経ず官邸主導で行われていますが予算100億円。高度な攻撃力をもった兵器で、導入の決まった長距離巡航亜音速ミサイル(一発1.6億円)などとともに、専守防衛の逸脱が懸念されます。

政府は中東・アジア各国で武器ビジネスの推進を計画。
国際武器見本市でも、これまではオブザーバーとしての参加だったのに、近年は日本製として堂々と展示しています。
望月さんは一見もっともそうな「9条加憲」の主張の中に、「戦力不保持」「交戦権否認」を無力化し、日本を戦う国に変質させようとする糸が隠されているのではないかと主張しました。

もうひとつの話題は「権力とメディア」。
題材は森友・加計疑惑です。

■報道をためらった大手メディア

2017年2月9日、財務省近畿財務局が「森友学園」に、国有地を近隣の10分の1の価格で売却し、下この価格を非公表としたことが朝日新聞によって報じられた。
これをきっかけに現在まで続くスキャンダルが始まり、朝日に続いて毎日新聞、それに主要週刊誌も加わって次々に報道がなされていったわけですが、実は当初、東京だけは反応が鈍く、テレビ報道も行ったのは日経系列のテレビ東京だけでした。
その裏には、報道は公平公正中立に、という総務省からの通達に「忖度」する大手メディアの姿勢がありました。
通達はあきらかに政府によるメディアへの報道規制と思われますが、電波法を握られている総務省に大手メディアは反発できなかったようです。
これがアメリカなら、聞いたふりをしてしっぺ返しをするのがメディアの基本姿勢なのですが、日本はどうしても引きずられる。横並びしたがる。
報道の自由度ランキングで日本は67位と言われていますが、その理由はメディアが「報じられたくないことを報じるのがジャーナリズム」(オーウェル)という基本を見失っているせいではないか、と望月さんは問いかけます。

もっとも、続けざまの疑惑の連鎖に国民の関心はますます高まり、結局はどのメディアも報道攻勢をかけることになったのですが…

東京新聞でも森友問題の取材チームが結成されることになりました。メンバーは主に政治記者ですが、社会部記者の望月さんは志願してその一員に加わります。「そのあたりの柔軟さが東京新聞らしいところ」

以降、土地値引きの根拠追求、財務省の関係文書改ざん疑惑から書き換えの事実判明に至るまで、望月さんは事実解明に奔走しますが、とりわけ印象的なのは、記者会見の場での、徹底した食い下がり質問でしょう。

■記者会見での、怒涛の追求

6月8日の菅官房長官との会見では、通常十分ほどで終わるものが、望月さんの多角的な切り込み質問のために30分に延長。
前川前次官に対する言動、国家戦略特区による加計学園獣医学部新設の経緯に関する政府の説明不足などについて矢継ぎ早に質問する望月さんに対し、菅官房長官は「紋切り型の返答」で応じ続けたのですが、翌日には文書の再調査が決定します。
望月さんの質問姿勢には、批判の声も上がりました。
記者クラブの中にはこうした追求を嫌がり、「記者が記者の質問を遮る」ような動きもあったとのこと。
官邸への順応を求められ、それが習い性となったような記者クラブの現状に「メディアの役割」を改めて見直す必要を、望月さんは強く感じておられるようです。

■それでも希望は手放さない

望月さんの信条は、「重要なのは行為そのもの。行為が実を結ぶかどうかは自分の力でどうなるものではなく、生きているうちに分かるとも限らない。だが、正しいと信じることをせよ。何もしなければ何の結果もない」というガンジーの言葉に示されています。
難題は多く、政権の暴走はなかなか阻止できない。
しかしそれでも望月さんは、武器開発に戸惑う防衛企業の本音や、多額の補助金を示されながらも軍事研究に決して協力しない大学の平和志向を希望を持って語ります。
また、報道規制に忖度しない少数のメディアの姿勢が、視聴者からの支持を得ることで規制をはねのけたという事実に、国民の力への希望を見出します。

それどころか、望月さんは
「あんな記事を書きやがって」
と罵倒する防衛企業の重役や、防衛官僚を「記事をすみずみまで読んでくれる愛読者」と呼び、記者会見で追求した菅官房長官さえも「時間を延長してすべての質問に付き合ってくれた」、として好意的に語ったりもするのです。
なかなかにしぶとく、器の大きなジャーナリストとお見受けしました。
なによりも講演中、ほとんど間を開けず、時間の経つのも忘れて聴衆に向かって熱弁する姿には、彼女が尊敬するという幣原喜重郎の「自ら買って出て、素晴らしい狂人となる」精神が宿っているようにも思えました。

今後の望月さんの取材活動に、注目していきたいと思います。




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コメント

コメント(2)
No title
このヒト、かっこいいですねえ~♪
個人的に“強い女子”はダイスキなので、素手でバッタバッタと敵を倒すヒロインになぞらえて、尊敬しています‥‥というと、ちょっと軽く見た言い方になるのでいけませんが。

彼女の著書販売ページや動画ページには、悪罵コメントの暴風が舞っていますが、現状に至るまで公文書改竄が露呈してきた背景には、彼女の執拗な追及が、与って力があったのです。

こういう人たちの尽力・活躍がある一方、国会が完全に機能停止させられた醜態と、それでも国民はそれをきっちり批判も拒否もしない現状のほうに驚倒します。

へうたむ

2018/07/20 URL 編集返信

No title
> へうたむさん
ジャーナリスト本来の姿は、身を投げうって事実を明らかにすることだと思います。大変厳しい仕事だし、強い責任感も求められると思います。だからそ、読者は報道内容をしっかり読み、自分で判断する責任があると思います。追求している党の相手こそが最高の愛読者というのは、望月さんの国民に対する痛烈な批判でもあり、反発のあることは想像できます。だからといって彼女は自分の姿勢は変えない。そんな気骨のジャーナリストがもっと出てきて欲しいと切に思います。

yositaka

2018/07/20 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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