3月某日
今日は妻と二人でコンサートに行きました。
竹澤恭子(ヴァイオリン)室内楽コンサート
共演: Edoardo Strabbioli(pf)We-Sinn Yang(Vc)
プログラム:
ヤナーチェク:ヴァイオリン・ソナタ
ブラームス: ヴァイオリン・ソナタ3番
チャイコフスキー:トリオ「偉大な芸術家の思い出に」
妻いわく「マシュマロのようないい音」で
心地よく聞ける竹澤さんのヴァイオリンでした。
会場は年配の人が多く、花粉症のせいかなかなかに雑音の多い状態だったものの
そのマシュマロのようなふっくらした音色は
時代錯誤に装飾された、広大な会場の隅々にまで鳴り響いたのでした。
竹澤さんは地元近隣のO市の出身。
そんな縁もあってこの小さなT市にある、大きなホールで演奏することになったのでしょう。
竹澤さんのヴァイオリンに生で接するのはおよそ二十年ぶり。
朝比奈隆指揮大阪フィルハーモニーと共演した、ブラームスのヴァイオリン協奏曲以来。
ヴァイオリン・ソロは正直苦手で、
奏者の不調か、楽器の不調か、原因はいろいろでしょうが、
時にかすれた、頭に響くような摩擦音が発せられることもしばしばあり、
それは名手と呼ばれる奏者も例外ではなく、
この気難しい楽器を手なづけることは並大抵ではないのだな、
と感じたものでした。
ところが竹澤さんのソロはそんな不安は一切なく聴くことができた。
すべるように滑らかに、豊かな音楽があふれ出る…
あの日のブラームスも、かすかな記憶ながら、終始心地よく楽の音に浸ることができたことを思い出します。
ヤナーチェクのソナタの最初の一音から、その音楽は健在、いやますます豊かになっている。
さらにブラームスでは、初めて聞くような歌い回し
新鮮な解釈が冒頭から感じられ、
妻も「CDで聞いた曲とほんとに同じなの?」
と私に述べたほどでした。
後半のチャイコフスキーでは
音色の美しさは少しも変わらないのに
共演した強者のピアノ、チェロの二人をも圧倒する
強靭な響きと
あふれ出るような表現のほとばしりを聴かせ、
まさしく一級の輝きを放っていました。
チャイコフスキーの数ある名曲の中でもとりわけ傑作と思える
この50分の大曲が短く感じられるほどの演奏。
竹澤さんはまさに絶頂期にあると確信できる音楽を生み出していました。
それなのに
会場ロビーの販売コーナーに彼女自身のCDが一枚もないとはさびしい限り。
天下のRCAレーベルの所属なのに
もう4年も新録音が出ていません。
表現することで食っていくことの大変さを改めて思います。
そういえば
昨日購入してきた「のだめカンタービレ」20巻でも、
時間とお金のハードルに追われて苦悩する若き音楽家たちの姿が
壮絶に描かれていました。
竹澤さんのますますの活躍を期待したいと思います。
Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。
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