名古屋アマデウス室内管弦楽団とウィーンに因む名曲を

毎年のお楽しみとなったこのオーケストラの演奏会に、sige君と参上しました。



この日は移り変わりの大きい春の日。日差しが指したと思ったら、驟雨。
そんな天候も影響してなのか、オーケストラの皆さんも音程を確保するのが大変だった様子も感じられました。この団体の演奏ではあまり経験したことのないことでした。

今回は「ウィーン」という都市をめぐってのプログラム…と指揮者の中村さんがスピーチ。その「裏テーマ」はおそらく「フリーメイソン」。これは当時中産階級の中で勢力を増していた謎の宗教結社で、モーツァルトもハイドンもその一員だったと言われています。モーツァルトの2曲の短調作品には確かに暗く謎めいたものがありますし、ハイドンの隠れ名曲、交響曲第99番も、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」とそっくりの和音で厳かに開始されます。この曲、長調作品ながら短調への傾斜が大きく、特に前半二つの楽章がそうです。

さて演奏です。
「葬送音楽」はちょっと聴きにはモーツァルトの曲とは思えない、重い曲想渦巻くテンポの遅い音楽で、コントラファゴット、バセットホルンという低音木管楽器が重厚な音色を加えます。滅多に聞けない名曲がライヴで聞けただけでもありがたいのですが、弦楽器と管楽器がいまひとつ溶け合わず、荘重な主題が隠れがちに聞こえたのはちょっと残念でした。

続くピアノ協奏曲第20番はモーツァルトの曲中でも特別な人気作で、暗い情熱の嵐の中に愛すべきメロディや軽妙さまでが混じり込む多様な曲です。ベートーヴェンが長大なカデンツァを書いているのも有名で、この日もそれが演奏されました。
ソリストの南谷さんは大柄な人で、みるからに力強い演奏を期待したのですが、ソロのはじめの一音から聞こえないくらいの繊細なタッチで弾き始めたのに驚きました。第1楽章、第3楽章の二度にわたって登場するカデンツァではさすがに華麗なピアニズムが溢れ出たものの、全体としてはやや遅めのインテンポで弱音を主体として内面的な演奏になっていたと思います。
一方、中村さん指揮するオーケストラは音が熱く、攻めの伴奏に終始。ソロとのコントラストを明瞭に示そうとする姿勢が感じられました。

後半一曲目のコントルダンスは配置が変です。指揮者は客席から向かって右後方に座り、ぐっと人数を刈り込んだオーケストラが起立して指揮者の方を向いて演奏します。観客は斜め後ろからそれを聞いている格好です。
当時のダンスパーティの並びにならったのかもしれません。面白いし、演奏も楽しげな舞踏感にあふれていましたが、これだと一番いい音が後ろに行ってしまうような…

トリのハイドン 交響曲第99番は、この日の最大の聴きものでした。
彼の交響曲としてはニックネームも表題性もない「中身で勝負」の曲ですが、前半の気宇壮大さと後半の躍動感の対比が鮮やかで、特に後に行くほど熱気を加えて盛り上がっていく雰囲気が最高でした。

アンコール曲は、K609と同じ時期に書かれ、賑々しい進軍の様子が描写されるコントルダンス《戦争》 K.535。今度はハイドンと同じ編成で演奏され、会場を大いに湧かせました。

■ネコパパと第99番

今日はハイドンの交響曲第99番のディスクをご紹介します。
地味な曲ながらそれなりに数があるようですけれど、ネコパパの聴いているのはこの4種類です。

ヨーゼフ・クリップス指揮ウィーン・フィル 
1957年録音 英デッカ (キング盤LP)



この曲の演奏では古典とすべき盤ですね。ウィーン・フィルの美音が存分に聴けると評価されていますが、生き生きと弾む情熱的なリズムや、曲想の変化を鮮やかに描き分ける自在さに、曲を完全に自分のものにした指揮者の自信が伝わってきます。


ラファエル・クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団 
1982年ライヴ録音 蘭オルフェオCD



ベートーヴェンのような重厚感に満ちた、モダンオーケストラの響きが聴きものです。第1楽章主部の彫りの深い気迫に満ちた響きや、第2楽章展開部の壮大なクレシェンドなど、ロマンティックな表情が随所に聞かれます。
この曲を聞くときにネコパパが真っ先に取り出すのは、この盤です。

ヘルムート・ミュラー・ブリュール指揮 ケルン室内管弦楽団
1995年録音 NAXOS CD


少人数のモダン楽器による演奏ですが、ピリオド奏法を取り入れた斬新な奏法が聴きものです。見通しが良く音の細部かくっきりと聞き取れ、演奏も凝縮感が強く前のめりの勢いがありますが、クリップスやクーベリックに比べると奥行や陰影に乏しく、聴き続けるうちにちょっとがちゃついたうるささが気になってくるのです。

マルク・ミンコフスキ指揮 ルーブル宮音楽隊 
2006年ライヴ 仏NaiveCD


ピリオド楽器、ピリオド奏法を使った近頃主流のハイドン演奏。しかしミンコフスキの指揮はセンスに溢れ、独特の音の癖が気になりません。弦楽を全面に押し出し、ティンパニも低く重い音というサウンドバランスも万全です。
素晴らしいのは、各フレーズに込められた音圧が高く、本気度が感じられる音だということです。表情の陰影も多彩で、激しさを基調としながらときにささやくようなピアニシモを聞かせます。ただ、モダン楽器と比べると、音色のパレットはやはり少なく、普通のオーケストラでこの表現を聞きたい気持ちが湧いてきてしまうのもまた確かです。
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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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