積木、そこに人生が


一人の老人が、水面に浮かぶような一軒の家に住んでいた。
この町は水位が上がり、ほとんどの家が海中に没している。
残っているのは老人の家だけだ。
しかしその家も、その日、入り口に積み上げた砂嚢を超えて海水が浸水。
彼は、屋根に上り、煉瓦を漆喰で固めながら、積み上げていく。
老人は、海面が上昇するたびに、上へ上へと家を建て増しすることで暮らしていたのである。

ある日、彼はお気に入りのパイプを海中へと落としてしまう。
パイプを拾うために彼はダイビングスーツを着込んで海の中へと潜っていく。
海面下に次々現れる家々は、老人がかつて共に暮らしていた妻や娘、その家族。
彼の人生の思い出を一つ一つに封じ込めた『つみきのいえ』であった。

仏題:La maison en petits cubes
2008年に発表された加藤久仁生監督による日本の短編アニメーション映画である。
沈み行く町と家は、老人の人生を象徴すると同時に
人の生きる時間の象徴でもあり、
また、水という境界に隔てられた記憶と無意識の広大な空間を表しているようにも見える。
また、地球温暖化による地球と人類の運命を描いたかのようにも読み取ることができ、
そうすると、老人はすでに過去のものとなりつつある
「人類」をあらわしているとも受け取れよう。
パステルで描いたような温かく素朴な描線が、
ナレーション抜きの静かな時空をゆるやかに描き出す。
圧巻は、海の底にあるかつての「大地」
そこに建つ大樹の周りを回りながら、かつて少年だった老人が、連れ合いとなる少女と出会い、ともに成長し、抱きあい、カメラが樹上をアップで捕らえた瞬間、鳥たちがいっせいに空に向かって飛び立つ場面。
ここは本当に美しい。

2009年2月、第81回アカデミー賞において邦画初となる短編アニメ映画賞を受賞。
世界水準で認められた作品の描き出す世界は気負いがなく、優しいまなざしに満ちている。

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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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