ト短調の誘惑



某中古店で発見した。
カール・ベーム指揮バイエルン放送交響楽団の、モーツァルト後期三大交響曲。1972年録音。(写真上)
同じ店で、昔なじみのアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の盤も購入。
すでに所有しているが、リマスター、紙ジャケットで、なにより裏面に懐かしいグロリア・シリーズの緑のジャケットが復刻されていたので、つい手を出したのだ。(写真下)
中学生時代は、この900円盤を買うのだって、散々考えた。
当時の900円は、何しろ大金だったから。

聴いてみると、これがいい。
まずバイエルン盤。これは隣接著作権延長前に大量に出ていたマイナーレーベルのひとつ。
音はややぼけているが十分聴ける。客を入れない放送録音のように思う。
ミュンヘン・ヘルクレスザールの豊かな響きのなかで、例のがっしりとして微動だにしない構成の音楽が響く。
スタジオ録音のときと違い、奏楽に勢いと熱気がある。音が立ち上がってくる気配がすばらしい。

交響曲第40番 ト短調

ワルターと同じく遅めのテンポだ。しかし、憧れの歌を感じさせるワルターとは違って、沈みこむような暗さがあるのがベーム。クラリネットが入らない『原典版』の使用も、全体のトーンに似合っている。
哀しみの第一主題が、しかし提示部の繰り返しになると、心なしか艶を増す。高鳴る。これだ。ライヴでの燃焼が始まっているのだ。一度火がつけば、すべての奏者が競うように輪郭の立った、あふれるような音で指揮者の棒に応える。
そうなれば、聴き手は一気に引き込まれる。がっちりした中での音の強弱、わずかな表情変化が的確にきまる。
フィナーレでの、早めの滑り出し、展開部の折り返し地点での鋭いテンポの切り替え。激情の終結。
ひさしぶりに、魅惑のト短調を堪能する演奏に、出会った。

コンセルトヘボウ盤も聴いてみる。
この三曲、私の初めて入手したモーツァルトの交響曲であった。
実は迷って購入した割にその900円盤の盤質は悪く、何度も聴いた記憶がない。
40番が盤の途中から始まり、前半で面が変るのも、集中できなかった原因かもしれない。
しかし、このCDの音は鮮度があり、特に管楽器が粒立ちがよく、こんなにすてきな演奏だったかと改めて思う。
1954年録音。バイエルン盤とは二十年近く開きがあるが、造形もテンポもまったく変っていないといっていいほどだ。
スタジオ録音のクールさはある。
でも、これも名演。幸運な再会。

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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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