ネコパパ、ついにSP盤を購入する

■ネコパパ、蛮勇を奮う

「エヂソン」からお預かりしたSP盤の中に、こんなお宝がありました。

シューベルト 交響曲第8番「未完成」
ブルーノ・ワルター指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音1936.5.19、21
日本コロムビア



電気再生すると、SP特有の針音はそれなりに出るのですが、音のふくよかさ、細部まで曇りなく見通せる鮮明さには驚きました。
この録音、復刻LPやCDでは何度も聞いているのですが、後年のニューヨーク・フィルとのステレオ録音に比較すると、どうしても情報量が少なく、演奏の特徴はわかっても、音楽に浸り切るほどではありませんでした。
ところが…このSPは、5分ごとに中断という不便が気にならないくらい、素敵な音楽の時間を引き出してくれるのです。

友人のsige君を呼んで一緒に聞いたのですが、彼もすっかり驚いた様子でした。

ワルターの、一小節ごとに変わっていると思うほどの細かなテンポの動きが、聞き取りやすい。それに演奏しているウィーン・フィルの音色が、他のオーケストラ録音とはずいぶん違うこともよくわかります。
弦のピッチはやや高め、アンサンブルは微妙に合わず、そのためにフレーズのアクセントやスフォルツァンドも付きにくい。それが柔らかい響きの木管と溶け合って、ちょっとこの世離れしたようなサウンドを作り出しています。



こんな音を聞かされたのではたまりません。
他の盤も聴いてみたいという気持ちが抑えきれなくて、ヤフオクを検索…すると、あった!
クラシックSP盤33枚、在庫処分」。



盤の詳細はよくわからないのですが、写真にはコロムビア盤ばかりが写っていて、ぐっと拡大するとワルターの名が、2枚に読み取れます。
開始価格は2000円、入札なし。
これなら駄目もと、と思って入札したのですが、
侮りがたしヤフオク、終了時間が迫るに最高額が更新され、気が付くと開始価格の4倍超になっていました。
どうする、ネコパパ。
一世一代の蛮勇をふるって落札しました。

品物はすぐに到着。
開封すると、思ったとおり、ワルター指揮の盤が続々と、出てきました。含まれていたのは…

ハイドン
交響曲第86番  ロンドン交響楽団 1938年
交響曲第96番「奇蹟」 ウィーン・フィル 1937年
交響曲第100番「軍隊」 ウィーン・フィル 1938年
ブラームス
交響曲第3番 ウィーン・フィル 1936年

いずれも日コロムビア盤。
その他に、日ビクター盤のアルトゥーロ・トスカニーニ指揮NBC交響楽団、ベートーヴェン「英雄」1939年全曲なども。多少汚れや破損盤があったものの、概ね盤質は良好でした。
ヤフオクで初めてのレコード落札でしたが、ビギナーズ・ラックだったかもしれません。

■ただ「鳴らす」だけで

さっそく聴いてみましょう。

疾風のような速いテンポでさっそうと、しかし俊敏に表情を変化させながら演奏される第86番。



それとは対照的に、ウィーン・フィルにすっかり任せて、らくらくと棒を振っている風情の第96番「奇蹟」。



でもこれら2枚は、「オーパス蔵」のCD復刻盤の解説にあるように、戦争によって物資が不足してきた時代の盤と言われ、レーベルデザインから「すだれ盤」と呼ばれているもの。
音自体はしっかりしていますが、針音がかなり大きく、ストレスがあります。

一方第100番「軍隊」とブラームスの3番はより以前の、高品質と言われた時期の「青盤」です。



確かに音は違います。針音は少なく、そのせいか、音も一段としっかりしているように聴こえました。

ゆっくりとしたテンポの「軍隊」は、第86番とは対照的な表現で、ウィーンフィルの魅力を積極的に生かした演奏です。
ブラームスの3番は、これまでの復刻盤で聞いた印象とはかなり違って聞こえました。
優美ではあるけれど、解釈がそれほど徹底している印象はなく、ワルターらしさはニューヨーク・フィル盤(1953モノラル録音)やコロムビア響盤(1960ステレオ録音)の方が、より明瞭に出ていると思っていたのですが、SP盤で聴くと、実際にはワルターの音楽が、オーケストラの隅々にすっかり浸透していたことがわかります。
ことさらダイナミックな部分で力んだり、魅惑的なメロディラインを強調しなくても、ただ「鳴らす」だけで、ぴたりと落ち着くべきところに落ち着いてしまう。
感服するほかはありません。




「ネコパパ君。これはねえ…ちょっとまずいんじゃないか。入ってはいけない場所に入りかけているぞ」
一緒に聴いたsige君の忠告に、うん、確かに、とは思いつつ、ひそかに次は何を狙おうか…と考えているネコパパでした。

それでは皆様、よいお年を。



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コメント

コメント(13)
No title
こんばんは。
いやあ~~~ ついにSP盤まで手を伸ばしましたか~~~
SP盤は実は音が良いと、よく聴きますが聴いてみたいですね。
落札は4倍になりましたが概ね盤質は良好とのこと、これはお宝になるのでは・・・
良いお年になるようですね。。。

HIROちゃん

2017/12/31 URL 編集返信

No title
> HIROちゃんさん
楽しいことがまたまた増えました。皆様きっと呆れておられるでしょうね。
それにしてもSP盤の存在感は大きいです。1枚400グラムもありますし、製造は戦前で、80年もの時を経て手元に到来しているわけですから、おいそれと聞き流すわけにも行きません。一枚一枚丁寧に拝聴していくつもりです。

yositaka

2017/12/31 URL 編集返信

No title
ダブリで頂いた ブラームス交響曲第3番 ウィーン・フィル 1936年ブルーノワルター バキュームをかけたらより良くなりました。
ワルターは、マイペースの楽友協会の楽員を見事にコントロールしていますね。貴重な盤をありがとうございました。
来年も宜しくお願い致します。

チャラン

2017/12/31 URL 編集返信

No title
年の瀬に泥沼に片足を突っ込んでしまいましたね(笑)
子供の頃にご近所で聞かされたSPも、思いの外勢いのある音だったのを覚えています。
しかし、妙にSPを集めると、本とは比較にならない重量で、本当に家が傾きかねませんからねぇ…

でも、これで良い年を迎えられそうですね。
来年もよろしくお願い致します。

gustav_xxx_2003

2017/12/31 URL 編集返信

No title
> チャランさん
おっと、ブラームス3番が良盤2セットあったのは、内緒だったのに、、、
この盤は品薄で、コンディションの良いものがなく、復刻盤が作りにくいとオーパス藏盤ライナーノートに書かれていたので、2セットは貰いすぎと思ってお譲りしました。
さらに改善できたとは、、、今度私のもバキュームお願いします😃

yositaka

2017/12/31 URL 編集返信

No title
> gustavさん
泥沼が怖いのでほどほどにしておきます。重量があることも実感しましたので、、、
来年もよろしくお願いします‼️

yositaka

2017/12/31 URL 編集返信

No title
おお、ワルターのSPがこれほどまとめて揃うとは、掘り出し物ですね!
この手の出品者のものは、組み物であっても全曲揃っていないことも多いのですが、その点でもよかったですね。
日本コロンビアの青盤は優れた音質で、わざわざ高価な英国盤に手を出す必要がないほどだと思っています。
日本コロンビアの青盤は、レコード最内周の無音部分に○囲み文字の刻印がないものが一番優れた盤質なので、ヤフオクで購入する際には質問で確認するようにしています。刻印があるものについては、丸囲みの「T」「N」「5」(以下数字が大きくなる)の順に盤質が悪くなっていきます。もしご存知でしたら失礼いたしました。

ポンちゃん

2018/01/03 URL 編集返信

No title
> ポンちゃんさん
初心者の私には初耳の情報、ありがとうございました。早速確認してみます。
青盤の良さにしても、今回体験的にわかったことでした。SPの世界は奥が深いですねえ。
これからもご教示ください。

yositaka

2018/01/03 URL 編集返信

No title
yositakaさん
こんばんは\(^o^)/
神田オーディオというお店は、もしかしたらSP時代からの由緒あるお店だったのでしょうか?

”神田オーディオは秋葉原の駅前の地下一階にあって薄暗い一角にありました。オーディオ一般を扱っており蓄音機を主体と言う訳ではありませんでした。昭和40年頃店を始めた当時はSONYとの契約でマランツ♯7のプリアンプなどを扱っていたそうです。無口は店主と仲良く口をきける様になったのは私が定年退職する5年前ほどで、閉店時間になるシャッターを閉め、奥の冷蔵庫から北欧のウイスキーなどが出て来てショーケースの上に並ぶのでした。遅い時は夜の10時ころまで昔話に花が咲くのでした今もあの時の親父さんとの楽しい会話は財産です。どう言う訳か親父さんは私には大変良く接してれ閉店する時も業者より先に私に話してくれたのでした。

つづく

Yさん

2018/01/04 URL 編集返信

No title
yositakaさん

続きです。

神田オーディオには欲しい物も一杯ありました。

竹針のカッターやソーン針(サボテンのトゲ)を
削る手回し器、、、VICTORのサウンドBOX デッカのカートリッジ、等々

しかし、何だかハイエナの様に漁るのも何なので綺麗に片付いた頃に伺い、業者が手を付けなかったSP盤を頂いて来た次第です。

私はクラッシックを聴いて蘊蓄を語るほどの素養はありませんので ”豚に真珠””ネコに小判”だと思いますが大切に使って行きたいと思います。



ではでは

Yさん

2018/01/04 URL 編集返信

No title
> Yさん
神田オーディオの店主さんは、きっとY三の人間性に魅かれたのだと思いますよ。そういうことは自然に伝わるものなんです。
それは、早くに連絡を受け取りながら、きれいに片付いた頃に来店する…そんな人間性です。
私なら絶対ハイエナ化しますよ。間違いなく。

それしても最後まで業者が手を付けなかったのはSP盤でしたか。状態を見たのでしょうね。でも、意外に耐久性があるもので、手入れをすれば、ケース類も含めてかなり復活します。
でもそれは業者の仕事ではないのでしょうね。

Yさんのところに引き取られたのはよかったと思います。

yositaka

2018/01/04 URL 編集返信

No title
昔の日記へのコメントで恐縮です。このワルターの未完成は私も持っています。でもデジタル化しただけで、まだズボラにも聞いていません。ただ古色蒼然とした旧字体の解説書がついていて、「「未完成」の別名を以て我々に親しまれているシューバートの「交響曲 第八番 ロ短調」・・・」などと書いてありました。中古レコードの楽しみは、思いもかけずこんな当時の面影の残るおまけが入っていた時です。

さっそく聞いてみる事にします。因みに、うちにあるのは、Tに丸がこみです。比較的良いもののようです。

如月

2018/04/20 URL 編集返信

No title
物品税刻印Tは、昭和12年(1937)から14年の間の発売で「未完成」は1936年の録音ですから、最初期の、国内盤としては最も品質の良いものです。
私の架蔵盤も同じです。
ここに記録された音楽そのものは、音質も含めて現在も魅力を失っていませんが、物品としてみると古色蒼然…このタイムカプセルのような落差が、なんともいえず面白いのですね。

yositaka

2018/04/20 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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