久々の聴き会、inネコパパ庵

11月23日勤労感謝の日、肌寒くも晴天。
久しぶりにSige君、Sumi君、Emo君が来訪して、ネコパパ庵で聴き会です。
大抵は11時くらいに集まって、まず1時間くらい聞いた後で、外にお昼に出かけ午後1時半くらいに再開してあとは夕方まで一気に聴いていく、という会の流れができあがっています。
それはネコパパ庵だけではなく、チャランさんやBassclef君やKonken君、Mnさん…どのお宅でも大体そう。
でも今日はSumi君所用で午後1時過ぎまでしか居られないとの連絡です。それでは、と開始時間を10時半にして、食事はお寿司を用意して食べながらやることにしました。

聴き会の場所は、ネコパパ庵2階、かつては娘・テンチョウの勉強部屋だった8畳間です。
ネコパパは贅沢にも、B&WのスピーカーとDENONのプリメインアンプ、SACDプレーヤーを中心とした同ランクの「家電オーディオ」を1階4畳半の書斎と、ここの2箇所設置していて、一人の時は概ね1階で聴いているのです。
本棚でぎっしり埋まった4畳半と、やや空間があって床が板張りの8畳間はちょっと響きが違っていて、1階がデッドなのに対して2階は、一人で居ると響きます。膨らみのある音といえばそうですが、ネコパパの「悪いほう」の耳にちょっと刺激感を感じる場合もあります。
2階でいいのは、今日のように、人が4人くらい入ると、音が適度に吸収され、好バランスな音になることです。スピーカーのサランネットを外し、1時間くらい鳴らしているうちに、なかなか快調な音になります。

さて、今日は4人で、ジャズとクラシックをゆったりと愉しむことにしますか。

■コルトレーン…そこに大きな人間がいる

最初にSige君がぜひ聴いてほしいという「チェット・ベイカー&ディック・ツワージク」仏バークレイ盤の復刻LPを少し。
それから、Sumi君お気に入りの「マイケル・ブレッカー」(1988インパルス)から「My One and Only Love」冒頭の一発から激しい情熱があふれる「熱血のバラード演奏」でした。


話がジョン・コルトレーンに及ぶと、さすがに70年代のジャズ研部員、会話に熱がこもってきます。
ネコパパはそれほど頻繁にコルトレーンを聞くわけではないのですが、大学時代からとりわけ気に入っているLPがあって、久々にターンテーブルに乗せました。

1961年のヨーロッパ公演のライヴ録音を収録した「コルトレイノロジーvol.1」(BYG)です。これには「ブルートレイン」「ネイマ」「マイフェイヴァリット・シングズ」という代表的な曲が含まれ、曲によってはエリック・ドルフィーも加わっていてるという興味もありますが、
なんといっても魅力なのは、トレーンのサックスがいつになくリラックスして、求道的というよりは上機嫌に愉しみながら演奏しているという気分が漂っていることです。録音も会場全体の音をバランスよく伝えていて、クラシックファンにも好感が持てるもの。久しぶりの再聴でしたが、やっぱりいいですね。



1964年の伝説的な「至上の愛」(インパルス)や
Sumi君が「史上最高のSoftly 」と絶賛する1961年「アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード」(インパルス)から「朝日のように爽やかに」も聴きました。
なんというか…トレーンが演奏すると大曲や長尺演奏でなくても、「大きな人間がいる」「人間は大きくなりうる」という実感が堰を切るように押し寄せてくる気がします。




■ブルックナー…力まず、自然に音に遊ぶ

Emo君は、いつも小さなリクエスト・メモを用意してきます。「ブラタモリ」に出てくる「タモテバコ」みたいです。今回のは「遅い新世界」

とっさにフリッチャイが思い浮かびましたが「あれは暗いからいや」と言われる。
そこで朝比奈隆の登場。これはLPで、1982年録音の大阪フィル盤(ファイアーバード)です。



低音部がしっかりしていて微動だにしない堂々たる演奏で、ティンパニの強打も地響きのようですが、これが意外に暗くなく、楽々と呼吸するような安堵管があって、なかなかのものでした。
ただこれは、キングレコードがファイアーバード・レーベルを興して、初めてこのコンビを録音したもので、不慣れだったせいかマイクが遠め、残響が被りすぎているのが残念です。次に録音した「悲愴」は大きく改善されていて、そのせいか、キングは「悲愴」を先行発売しました。
当時朝比奈は、毎年1月に必ず「新世界」をとりあげていたので、再録音の機会はあったのに…と、今更ですが思います。

次のリクエストはなんと、ブルックナーの交響曲第8番の聴き比べです。
実はEmo君はマーラー・ファンで、ブルックナーはちと苦手です。それでもバルビローリが指揮した1970年のロンドン・ライヴ、指揮者最晩年の「遺言」というべき録音なら最後まで聴けるというのです。
そこで、他の演奏と聞き比べてみたいとのことでした。
この曲の第1楽章の聴き較べなんて、「我慢大会」になるのでは、と危惧したのですが、やってみたらネコパパは案外平気でした。
Sige君は、例によってあれこれ考えまくっていたようです。
Emo君は「やっぱりこの曲は不可解」という結論でした。
Sumi君は…あっ、もうお帰りになっていました。

バルビローリ/ハルレ管弦楽団(BBCレジェンド)
スクロヴァチェフスキ/読響(DENON)
朝比奈隆/名大交響楽団(ダウンロードMP3)
ヴァント/ミュンヘン・フィル(プロフイール)
クナッパーツブッシュ/ミュンヘン・フィル(ウェストミンスター)




たしかに違いは大きいけれど、どれもそれぞれ美しい演奏でした。ただ、この曲は80分以上もある大曲なので、「先を聞きたくなるか」が大きな問題です。そうすると個人的には、第1楽章は「力まず、自然に音に遊んでいる」感じが欲しいんです。それがもっとも出せている指揮者は、この中では朝比奈と思えます。

数ある朝比奈の第8の中で、敢えて名大盤を取り上げた理由は、Sige君とネコパパは大学時代にこの演奏をライヴで聴いていて、思い入れが深いからです。
この録音はドイツのブルックナー・サイトからダウンロード可能です。
興味がありましたらご一聴ください。
できれば正規発売も期待したいのですが、困難でしょうね…

■シューマン…内部から湧き出る「ロマンティック」  

お疲れ気味のEmo君に「これはどうかな」と思って掛けてみたのが、カール・ベーム指揮ウイーン・フィルの1969年ザルツブルク・ライヴ(オルフェオ)です。
といってもベームは、マーラーの交響曲はやらない。
お目当ては、クリスタ・ルートヴィヒ(MS)を独唱者に迎えての「さすらう若人の歌」です。

これがいいんですね。ベームの指揮は単なる伴奏には終わらず、深く、鋭く音を出して、音楽を一層彫りの深いものにしている。マーラーのオーケストラ伴奏つき歌曲は、どれも好きなのですが、この演奏は本当に見事でした。



続けて収録されているのが、シューマンの交響曲第4番
「実演で燃える」と喧伝されていたベームの絶好調の姿を伝える演奏です。とにかく30分間、緊張感が一瞬も途切れず、音は生き、音楽自体の魅力が手に取るように伝わってきます。それでもまだ余裕があって、フィナーレは、さらに燃焼度が上がるのですから恐ろしい。

このCD、実はろくに聴かないまま長いこと放置していたもので、つい最近聴きなおして驚いたのです。
敬遠していたのは、悪名高い「クラウス+アイヒンガー劣化マスタリング」の偏見からかもしれません。でもこの1枚は例外でした。こんなに鮮度の高いザルツブルクライヴは滅多にない。さすがの二人も、これだけ状態の良好なテープには、あまり手を加えなかったと思われます。

これで聴き会が「シューマン」のペースになって、交響曲第3番「ライン」第1楽章を朝比奈/大フィル(キャニオン)、交響曲第2番フィナーレバーンスタイン/ウィーン・フィル(DG)で聴きました。



いま気づきましたが、どれもライヴ録音ですね。
精神病の影響で混乱しているとか、難解とか、音が曇っているとか、いろいろ言われてしまうシューマンの交響曲ですが、こういう演奏を聴いていると、それって本当かなあ、と思ってしまいます。
これほど「作り物」めいたところや「ねらった」ところや「わざとらしい深刻」がない、内部から湧き出る「ロマンティック」だけを信じて形にした音楽というのも、あまり類がないじゃないか…
そんな気がして、ますますシューマンが好きになってしまいました。


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コメント

コメント(14)
No title
シューマンの交響曲に精神病の影響があるとかいった批評があるとは知りませんでした。フリージャズのもっと怪しいというか危ない演奏(薬物等により本当におかしくなっている人が演奏している)を色々聞いた者としては、シューマンの交響曲はとても健全な音楽に聞こえます。

マーラー編曲版はキラキラ感が増していてオリジナルを超えているかもとも思いますが。

不二家 憩希

2017/11/24 URL 編集返信

No title
> 不二家 憩希さん
たとえば第2番について、ざっとネット検索してみると…
「完成に長期間費やしたのには、彼の病気と関連があるそうです。1843年初め頃からシューマンは精神疾患を患い、44年には療養のため転居をします。45年、一旦は回復していくつかの作品を発表しますが、46年に再び激しくなり、シューマンは病気と闘いながら仕事に取り組んだそうです。 その影響か、どこか捉えどころのないところが随所に出てきて、演奏するのに非常に苦しみます」
「第2番は、1845年から翌年にかけて、精神病を悪化させていたシューマンがそこからどうにかして立ち直ろうともがきながら書いた作品である」
「精神的な不安定を抱えつつも、ピアノ協奏曲イ短調、交響曲2番、交響曲第3番など多くの作曲を残したが、1854年にはライン川に飛び込んでしまい、精神病院で、切ない最後を迎えるのだった」…

病気だったから変だ、というのは、わかりやすい説明ですが、音楽家には広い意味で病気の人が多いと思います。シューマンばかりそのことが強調されるのは、どうも不思議です。虚心に耳を傾ければいいと思うんですが…

yositaka

2017/11/24 URL 編集返信

No title
贅沢で楽しい「聴き会」ですねえ♪

> 敬遠していたのは、悪名高い「クラウス+アイヒンガー
> 劣化マスタリング」の偏見からかもしれません。
この二人、ど~も気にはなるのですが、R.ゼルキン+クーベリックの、ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集(Orfeo)は、遠めの音像ながら、ホールの客席で聴く雰囲気としては、ゼルキンのピアノの音も極美音で、悪くありません。

両人の悪名は、平林直哉氏あたりが発端と思われ、そういう部分もあるでしょうけれど、音の捉え方の感覚差=文化差もあるかもしれません。

些事ですが、お嬢様の勉強部屋が8畳とは(スバラシイ!)。で、 比ぶるに、ネコパパさんの書斎が4畳半‥‥しかも本でいっぱい(たぶん、LP、CDも?)。
う~ん^^;;;。

へうたむ

2017/11/25 URL 編集返信

No title
> へうたむさん
オルフェオ・ドールの赤ジャケ盤は、発売当時から音が奥に引っ込んで演奏の特徴がわかりにくいと感じていました。
当初は正規発売だから悪いわけはない、もともとそういう音なのだろうと思っていたのです。しかし、同一音源の別の盤ではそうではないということに気づくうちに、クラウス+アイヒンガーの制作したものはノイズ除去が最優先で音自体の鮮度は二の次という情報を目にし、納得したわけです。
もちろんテープの状態次第なので、全部が悪いわけではありません。音の捉え方の感覚差=文化差も当然あるでしょう。ノイズ除去と音質が両立できない場合は音質が優先されるべきという考えの私にとっては、このふたりのマスタリングの基本姿勢は受け入れがたいものがあります。

娘の部屋にはベッドやタンスも置いてあったので、そこは納得していましたよ。ネコパパ書斎については、ご推察の通りです。まあ、狭いほうが落ち着くという性格もあります。

yositaka

2017/11/25 URL 編集返信

No title
クリスタ・ルートヴィヒのマーラー、ヴォルフ、ブラームスなどもいいですね。

木ノ下淳一

2017/11/25 URL 編集返信

No title
う~ん 1969年時のベーム/ウィーンフィルのシューマン4番! さらに収録状態の良いもの! と言えば是非一度は耳にしたいものです

mae*a_h*210**922

2017/11/26 URL 編集返信

No title
> 木ノ下淳一さん
同感です。レコード黄金時代の名歌手です。クレンペラーとの「大地の歌」バーンスタインとの「子どもの魔法の角笛」、ベームとの「コシ・ファン・トゥッテ」など、名指揮者との名盤も目白押しですね。メゾ・ソプラノという声域が、またいいのです。声の衰えもなく長く歌手生命を保ったのは、日頃の健康管理がよくコントロールされていたせいでしょう。きっと人柄も良かったのだろうと思います。

yositaka

2017/11/26 URL 編集返信

No title
> 老究さん
ベームのライヴでの熱血演奏を捉えた録音はそれほど多くはありません。バイロイトでの「トリスタン」、日本公演での「フィガロの結婚」、ブラームスの交響曲第1番など。でもこのオルフェオ盤は普通のコンサートレパートリーでそれがしっかり捉えられているのですから貴重な一枚だと思います。
もっとも、昔よく言われたように「だからスタジオ録音はつまらない」とは考えません。それぞれに傾聴すべき良さがある、ということです。

yositaka

2017/11/26 URL 編集返信

No title
朝比奈隆/名大交響楽団・・・と言う録音があるのは初めて知りました。
バルビローリが指揮した1970年のロンドン・ライヴ・・・持っていませんがチョット興味がわきますね。

HIROちゃん

2017/11/27 URL 編集返信

No title
> HIROちゃんさん
1976年1月20日に行われた演奏会を名大交響楽団が記録用に録音し、団員用の私家版LPとして作成したもので、レコ芸別冊の「朝比奈隆 栄光の軌跡」(1997)には掲載されています。
注目すべきはこれが団員の要請によって行われた、朝比奈最初の「ハース版」による演奏で、しかも数多い朝比奈のブル8の最も古い録音だということです。
録音状態はともかく、これはアマチュア・オーケストラとは思えない水準の演奏が記録されていると思います。

yositaka

2017/11/28 URL 編集返信

No title
「ブルックナー交響曲」名古屋地区は、名大交響楽団が
昭和49年11月15日「第28回定期演奏会」でブルックナー交響曲No,9 指揮 山岡重信 市民会館 (20年の歩み)より
演奏したのが最初だと思います。
それからわずか2年後に私家録音といえ朝比奈/名大交響楽団No.8を演奏している当時のブルックナー派の学生の熱気が伝わってきますね。
ぜひ聴かしてください。

チャラン

2017/11/28 URL 編集返信

No title
> チャランさん
同じサイトには以下の演奏もアップされています。

Symphony No. 5 January 14, 1982 山岡重信指揮
Symphony No. 6 January 13, 1984 佐藤功太郎指揮

当時の名大交響楽団の、ブルックナーへの熱い思い入れが伝わってくる演奏です。これは二つともsige君はライヴを聞いていますが、私は6番だけ聞きました。
佐藤功太郎氏は指揮をバーンスタイン、カラヤンに学んだ逸材で、東京都響、京響、神奈川フィルなどの音楽監督を歴任しましたが、2004年に癌のため62歳で早世しています。

yositaka

2017/11/28 URL 編集返信

No title
いま名大の演奏第1楽章を聴いています。朝比奈の8番は、都響で2回聴きました。上野の東京文化でと池袋の芸術文化でと。池袋は1998年10月でなかったかな。上野はそれよりも何年か前。上野は第2楽章のがとってもよかった。チェロの響きがゆったりとして。名大、たしかにいいですね。叮嚀な楷書の趣。いや、後半はたたみかけていくのでしょうか。第1楽章の終わり近くまできました。おお、盛り上がった。そうして、楽章終わりの静寂。ゆっくりと。音源ご教示、感謝です。

シュレーゲル雨蛙

2017/12/01 URL 編集返信

No title
> シュレーゲル雨蛙さん
いやあ、早速のご試聴、嬉しく思います。
ところでこの曲は、ワーグナーチューバが重要な役割を担うのですが、当時の名大オケにはこの楽器がなく、調達の方法もありませんでした。そこで、吹奏楽でおなじみのユーフォニアムを代わりに使用していたのです。この録音で聴かれるアマチュア離れのした重く厚みのある低音を唸らせているのはこの楽器です。

当時のメンバーは朝比奈が涙をこぼしながら指揮していたと証言しています。

yositaka

2017/12/01 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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