子どもの本専門店の嚆矢、メルヘンハウス閉店へ

このニュースは、ショックです。

ネコパパが高校生のころから通い詰め、ほとんど「もうひとつの大学」に等しい存在だった書店「メルヘンハウス」が閉店することになりました。

以下、引用です。

名古屋「メルヘンハウス」閉店へ 日本初の子どもの本専門店 

中日新聞WEB2017年11月17日 朝刊

 日本初の子どもの本専門店として知られる「メルヘンハウス」(名古屋市千種区今池)が、来年3月末で45年間の歴史に幕を下ろす。良質な児童書をそろえて子どもにも親にも親しまれてきたが、近年はネット通販の普及で経営が悪化。利用客ら関係者に「迷惑がかからないうちに」と閉店を決断した。

 メルヘンハウスは一九七三年に開店。店内には童話など三万冊の本があるが、雑誌や漫画は置かない理念を貫く。三重県四日市市の「メリーゴーランド」、岐阜市の「おおきな木」など子どもの本の店が全国に登場する先駆けとなった。

 おすすめの本を定期的に届ける「ブッククラブ」も人気で、最盛期の九〇年代後半には全国に会員がおよそ一万五千人いたが、最近では三分の一ほどに減少。本の売り上げも当時の半分程度に落ち込んでいた。

 創業者で代表の三輪哲さん(73)と長男の丈太郎さん(41)は今年夏に閉店を決め、関係者に伝えてきた。これまでも経営危機を乗り越えてきたという哲さんは「経営理念と売り上げを何とか両立してきたけれど、百パーセント売り上げ重視のネット通販にはかなわない。これ以上頑張っても厳しいと判断した」と明かす。

 丈太郎さんは四年前から経営に関わり、絵本選びを手伝う「大人の絵本遠足」など新企画を立案。「うちにしかできないことをやろうと工夫し好評だった。でも、それだけではどうしようもない時代の波がある」と寂しさをにじませる。

 閉店は三月三十一日の予定。それまでの間、縁がある作家のサイン会やワークショップなどを開く意向で哲さんは「お気に入りの絵本のようにメルヘンハウスが何十年たっても皆さんの心の片隅に残ってほしい。そんな心掛けで三月までやりたい」と話している。

 (川原田喜子)

◆心から賛同してきた

 <子どもの本の専門店「クレヨンハウス」を主宰する作家・落合恵子さんの話> パイオニアであるメルヘンハウスさんの閉店は言葉にできないほどショックなこと。三輪さんの活動には心から賛同し、支持し、尊敬してきました。とても寂しいですが、
三輪さんがまかれたタネは確実に次世代に枝を広げ、実を付けていると思います。



(上)閉店の理由を語る子どもの本専門店「メルヘンハウス」の三輪哲代表(左)と丈太郎さん
(下)「メルヘンハウス」の店内=いずれも名古屋市千種区で(佐藤哲紀撮影)

以上、引用。


■ここで、書店の定義が変わった

先日の講演会で斎藤淳夫さんが話されていた「子どもの本を選び、それを守り通す仕事の厳しさ」という言葉が思い浮かびます。
経営面で厳しい状況の中、「選び、守り、手渡す」という厳しい仕事に乗り出し、半世紀近くもの間続けてきた、子どもの本専門店。
メルヘンハウスはそんな書店です。

子どもの本、特に幼い子どもたちに向けた絵本は、近頃急速に発達したデータ化やネットでの流通にはまったくなじまないものです。
目で見て、耳で聞いて、手で触って選び取っていくものだと思います。

子どもの本に理解の深い店員がいて、品揃えにも配慮があり、親子がくつろいで本に触れることができる場所。
書店というものが、そんな場所でもありうるのだという提案、いわば書店の再定義を、実際の形として、日本で初めて、示して見せた。
メルヘンハウスとは、そんな書店です。

その志に応えるように、1970年代後半から80年代にかけて、数多くの子どもの本専門店が全国に誕生しました。
ネコパパも、何かの用事で遠出する機会があればそんな専門店を訪問するのが、大きな楽しみでした。
やがて時は経ち、それらの多くは経営的な問題で閉店を余儀なくされました。
それでもメルヘンハウスは「始まりの場所」としていつもそこにあった。
オーナーの三輪さんと息子さん、スタッフと支援者たちの情熱がそれを支えてきたのだと思います。

最近はすっかり怠惰になって、書籍購入もネット頼みのネコパパが言うのはまったく噴飯ものですが、それでも、やはり閉店は寂しい。
やりきれない思いが募ります。

「三輪さんがまかれたタネは確実に次世代に枝を広げ、実を付けている」
落合恵子さんのこの言葉が事実とすれば救いなのですが…実際はどうでしょうか。
「再定義された書店」のタネは、ネコパパ宅の近隣にある郊外型書店の児童書棚や、座って読める「読書コーナー」、定期的に開かれている「読み聞かせの時間」に生かされているようにも見えます。
でも、そこにアドバイザーとしての書店員の姿はほとんどありません。書棚にはそれなりの数がある在庫も、よく見ると「売れ筋」「定番」がほとんど。
枝を広げ、実を付ける」というには、まだまだ…と感じます。
忘れてはならないと思います。

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コメント

コメント(2)
No title
こういう特化した専門書店が生き残るのは、本当に難しい時代になりましたね。
私もほとんどの書籍をネット通販で購入しますが、その他にも街の本屋さんが次々と消えていく要素がありそうです。

まず、少子高齢化が進んで、絵本を読む絶対的な子どもの数が減ってしまっています。
次に、公立図書館の充実があります。
駅前の図書館に借出や返却に行きますと、大量の絵本を借り出している親子連れを頻繁に見かけます。(15冊まで)
限られた期間しか見ない絵本への支出抑制もあるでしょうが、同時にそれを収納するスペースの家屋事情もありそうです。

いつ売れるかわからないようなものを本屋さんの棚で見つけて、行くたびにまだ残っていることを確かめて安堵する、そんな気分を私も忘れて久しくなっているのですが…

gustav_xxx_2003

2017/11/21 URL 編集返信

No title
> gustavさん
変化は、ゆっくりと進むうちは対応の暇もできるのですが、ここ10年の変化の速度はあまりにも早すぎる気がします。電子書籍の普及は思ったほど進んでいないのが幸いですが、それでも速い。

少子高齢化と図書館の充実は、一般論としては言えるかもしれませんが「本を読む層」の数は、必ずしも全体の人口と比例しているとは言えず、捉えがたいのが現状と思います。
また、図書館利用の活性化は読書人口そのものを底上げする効果があると考えています。本が売れないのは図書館が無料で貸し出すからという意見も、スパンを長くすれば当てはまらない気がします。グスタフさんも図書館利用が多い方と思われますが、生涯購入冊数で見れば、圧倒的な購入層ではないかと想像します。日本人は本をよく読む、知的国民という文化は揺るがないでしょう。これからは、その文化を一層深く、強靭なものにしていかなければならないと思っています。

いつ売れるかわからないようなものが本屋さんの棚に見出せる国にこそ、未来がある…そんな妄想は、相手にされそうもないですが…

yositaka

2017/11/21 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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