「先生、ウグイスが死んでます」
女子生徒の大きな声がするので、駆けつけた。
植え込みのなかに、一羽の黄緑色の小さな鳥が動かなくなっていた。
十センチほどの体長の鳥である。
目の周りが白い輪に囲まれていた。
ウグイスではない。メジロだ。
手にとってみると、体温や鼓動が感じられた。
片側の目が閉じられ、目から頬の辺りに打ち付けたような傷があった。
余所見をしていて校舎の壁にでもぶつかったのか、
それともカラスにつつかれたのか。
息がある。
女子生徒たちがこわごわ見つめている。
「気持ち悪い。先生、よく触れるねえ」
「そうかなあ。生き物だよ。体温があるよ。でも、もうじき死にそうだ」
「埋めてあげないの」
「生きてるのに、埋められないね」
ふと目を離したその一瞬に、
メジロが飛んだ。
思わず高い声を上げる生徒たち。
しかし鳥は一瞬の羽ばたきの後に再び地面に落ちた。
校庭には梅の低木が花を咲かせている。
大急ぎでやってくる春の気配。
地面に落ちたメジロをどうしようか、考えあぐねたのち、
元の茂みの中にそっと置いておいたが、
しばらくすると姿はなくなっていた。
生と死の交錯のとき。
そこに扉がひとつ、見えた。
メジロは全長12cm前後で、スズメよりも小さめ。
緑がかった背と暗褐色の羽を持ち、雌雄同色。目の周りの白い輪が特徴であり、名前の由来ともなっている。
日本で見られる野鳥の中では、ミソサザイ・キクイタダキに次いで最も小さい部類に入る小鳥である。
花の蜜を大変好むため花期に合わせて行動し、
春には好物の花の蜜を求めて南から北へと移動するものもいる。
特に早春は梅の花に群がる様子がよく観察され、「チー、チー」という地鳴きで鳴き交わす様子がよく観察される。 ーWikipedia
Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。
コメント