濵津清仁の「田園」を聴く




大府市楽友協会管弦楽団 第42回定期演奏会

指揮  濵津 清仁

プログラム

ヴェルディ作曲 「運命の力」序曲
J.ウィリアムズ作曲 スターウォーズ組曲
ベートーヴェン作曲 交響曲第6番「田園」

アンコール曲
グリーグ 「ホルベルク組曲」より 前奏曲

2017年11月5日(日) 午後1時30分開演
大府市勤労文化会館

SIGE君と行ってきました。
期待の指揮者、濵津 清仁の「田園」とあって、ネコパパの期待も膨らみます。
…というわけで、さっそく感想を。

第1楽章。ゆったりとしたテーマの提示、反復あり。二度目の提示で音圧がずっと強くなり、快調を予感します。
津氏の解釈は、描写性やロマンティックな表情を抑制したストイックなもの。
フレーズの息の短い、すっきりした流れの中に、各パートの響きをくっきりと描き分けていく辛口端麗のスタイルです。
オーケストラの配置も、その解釈に沿って考えられていました。第一、第二ヴァイオリンが左右に展開する「対向配置」、ヴィオラは中心からやや右寄り、チェロは左、そしてコントラバスは左の第一ヴァイオリンの後ろ側に配置され、中心に向かって鋭い低音を突き出してくる。
特筆したいのは第二ヴァイオリンが第一よりも人数の多いこと。これによって「田園」は第二ヴァイオリン、そしてヴィオラにも重要なパートがとても多いことに改めて気付かされました。
第2楽章は意表をついて、速いテンポで進みます。急流の小川です。
ここでは木管パートの活躍が期待されるところですが、ふくらみのあるファゴットに比べて、オーボエ、クラリネットは今一歩音量がほしかった。最後の小鳥の歌では、存分に美しい音色を奏でていたのですが…
遅めのテンポで始まる第3楽章は、SIGE君曰く「農民の踊りではなく、スケルツォだ」
目だって感じられたのは、ホルンの音が強く、しっかりしていること。曲の要となる楽器であるホルンが、指揮者の解釈の心強い支えになっていると感じました。
第4楽章は、ティンパニ、トロンボーンが地響きを立てて盛り上げます。でもそれは外から付け加えた迫力とは違う、コントロールが行き届いたもので、きりっとした進行は緩まず、堂々たる行進曲のようにも聞こえました。
そして第5楽章では、これまで抑制してきた「豊かな表情」―フレーズの中でのテンポの伸縮や、一瞬のリタルダント、間の効果を隠し味のように利かせ、そのひとつひとつが美しい。
「田園」のクライマックスはこのフィナーレであることを、しっかりと主張する音楽になっていました。

聴衆はこのストイックで、しかも新鮮な響きにあふれた「田園」をどのように聴いたのでしょうか。

他の曲についても、触れておきましょう。
冒頭を飾った「運命の力」序曲は、主題提示をあっさりと終わらせ、金管や木管の絡み合う中間部をじっくりと聴かせる演奏でした。とくに一音一音、くっきり音を出してくるトロンボーンの妙技には感嘆!何度も聞いているはずのこの曲が、初めて聞くように感じられました。

派手な照明効果とともに演奏された「スター・ウォーズ」組曲。
聞き覚えのあるメロディーが次々に出てくる愉しい曲ですが、映画音楽という性格もあって「展開」が弱いのが残念で、どうしても一曲一曲が「長いな」と感じてしまいました。
音楽そのものに加えて、奏者たちの「自発的な名人芸」が要求される曲だとすると、アマチュア・オーケストラにはかなりハードルが高いのかもしれません。
それと、疑問点。
プログラム解説によれば今回の演奏は、「第1作の音楽による演奏会組曲」とのことですが、第1作の時点では「帝国のマーチ」「ヨーダのテーマ」はまだ作曲されていなかったはずでは…

アンコール曲のグリーグは、「田園」のフィナーレの余韻を存分に残した、音の粒が溢れ出るような演奏で、「津節」の典型を聴くような思いでした。

津氏、腰痛の具合が良くないらしく、今回は全曲座っての指揮。
音楽への影響は全く感じませんが、今後ますますの活躍が期待されるだけに、健康面にも十分気を配っていただきたいものです。



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コメント

コメント(3)
No title
今回津氏の田園を拝聴したことは、大げさに言えば事件だった。中三の夏休み、放送でカラヤン・ベルリンを聞き感想文提出して以来、幾多の田園を聞いた。やはりワルター・コロンビアの五楽章。コーダからのあの祈りに似た演奏を聴き感動し、田園はあの核心部分を聞けばよいと、まあたかをくくっていた。それがどうだ。Vn1が伴奏にまわりVn2が主旋律にまわる。Vn2が伴奏にまわりVaLが主旋律にまわる。高音中音の弦楽が伴奏にまわりコントラバスが舞台中央に主旋律を響かせる。(コントラバスは客席を向くと言うよりは舞台全体に向くように演奏)弦五部が1対1の立場でありながら田園という楽曲を一つにする。それぞれはくっきりと鮮やかに鳴り、響きをつくる。リズムの流れを奏でる。旋律を歌う。

shige

2017/11/10 URL 編集返信

No title
ワルターやシューリヒトのように弦が泣くと言った趣には到達できていないけれど、田園というメロディやサウンドはまあこうだろうと長年つくりあげられた自分の観念は壊された。楽譜の中に風のそよぎや川の流れる音がはいっていて、それが直接音で奏でられるのでなく、合成されたことで発生するいわば音の3Dだ。ベートーヴェンにとってスケルツォも重要な楽章だと改めて知った。曲最後に僕が求める、敬虔な祈りの奏で。それは今回歌われていなかったように聴き取ったが、楽譜をきちんと鳴らすことによって発生する、田園の中にうごめく生命の立体的な声を(ぼくのオーバーな妄想かも知れないが)躍動を、確かに聴き取った。数年前にメンデルスゾーンを聴いたときも思ったが、津氏は天才だ。

shige

2017/11/10 URL 編集返信

No title
> shigeくん
ナイスなコメントですね!
またも、いい演奏会に誘っていただき感謝です。そのまた元をたどれば当団ヴァイオリン奏者のK君からのご招待、毎度毎度、ご好意に甘えさせていただいています。
それにしてもこのような地域の演奏会で先端的な演奏が聴けるというのは幸せなことです。個人的には、こういう良さを聞き分ける耳を育てるためにこれまで100何種類も聞いてきた、ということなのか…と物思っているところであります。
弦楽器の配置についてですが、そういわれてみると、どのパートもお互いの音をきっちり聞き分けられるようにしていたとも見えます。いわば人数を増員した弦楽五重奏を愉しむ趣です。真意は…機会があれば直接、津氏のコメントを取りたいと思います。

yositaka

2017/11/10 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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