黄昏の名古屋ボストン美術館~パリジェンヌ展

久しぶりに、名古屋市金山駅近くにある、名古屋ボストン美術館に行ってきました。
ここは、名古屋都市センタービルの中の3階分を占める美術館で、
エスカレータをのぼると、アメリカのボストン美術館のデザインをイメージした、二本のイオニア式円柱が見えます。
当館はその「本家」の姉妹館として、「本家」の所蔵品を中心に展覧会を行っていくことを目的に開設された美術館なのです。



さて、現在開催されているのは

パリジェンヌ展
2017年6月10日(土)〜2017年10月15日(日)


ドレスや靴といったファッション、女優やダンサーの写真など、
アメリカ・ボストン美術館の所蔵品約120点から、パリという都市を体現してきた女性の姿の変遷をたどる。
本展では、70年ぶりの修復を経て初公開されるマネの大作「街の歌い手」をはじめ、ドガやルノワールらによる肖像画を展示する。
また、この展覧会に関連したイベントも多数開催される。

…そんな内容の展覧会。

古典絵画の時代から現代まで、長い期間に及ぶパリの女性の肖像画の展示を中心にしていますが…




ドレスやヘアースタイルについての資料、絵葉書や写真、パリで人気を博したジョセフィン・ベーカーの映像等の資料もあわせて展示され、パリを中心とした文化史、ファッション史としても楽しめる展覧会になっていました。



当時のドレスの実物に目を凝らす人々も多数。
また、夏休みの自由研究なのか、解説文をにらみながら懸命にメモをとる子どもたちの姿もちらほら。
実物そのものより、文字情報の収集で終わってしまっては勿体無い気もします。

でも絵画としては、近代以降のものにやっぱり魅力がありますね。人物が装飾品の一部ではなく、個々の人間として立ちあらわれてくる気がするからです。


長期間の修復を経て、70年ぶりに公開されたというマネの「街の歌い手」。



ギターを片手にサクランボをかじりながらこちらをじっと見る女性は、マネが一時期「専属モデル」としていたヴィクトリーヌ・ムーランで、庶民の出でしたが、実際にヴァイオリンとギターのレッスンを受けながらカフェで歌い、またモデルを務めつつ自分でも絵画の修練を経てプロの画家になったそうです。
当時は画家のモデルを務める女性は賤視される存在でしたが、そんな風潮をよそに人生を切り開いていった気概が、この絵からも感じ取られます。

ビデオによる丁寧な解説もあったし、
期間中は三つの講演会やガイドツアーも企画され、4ヶ月という長期間の開催の長所を生かした内容になっていました。こういう、じっくり練られた展覧会を継続的にできるなんて、さすがは世界的美術館の姉妹館…

でも、残念なことに、この「名古屋ボストン美術館」は2018年度をもって閉館が決まっています。
あと1年ちょっとで黄昏のときを迎えているのです。

文化の香りが不足気味だった名古屋の地に、当館が1999年に誕生したときは、ネコパパも喜んで足を運んだ記憶があります。
中心街からちょっと離れた場所に、個性的な企画展示を行っている美術館がさりげなく建っている…これは都市としての、一歩成熟と思われました。
運営主体が公営ではなく、地域の企業が共同で立ち上げた財団法人というのも有意義なことでした。

今も昔もこの都市は「経済的安定」が一番の売りで、
文化に注ぐ潜在的な財力はあるはずですが「儲けを還元しない金持ちばかりだ」という声も多く聞かれます。
名古屋ボストン美術館は、それを押し返す文化の拠点として、機能しているはずでした。
それが、当初の契約である18年の区切りで契約更新せず、閉館が決定。
理由は…想像されるとおり、採算問題です。

これを読むと、大風呂敷過ぎた当初の契約が足を引っ張った感は確かにあります。不慣れな交渉に失敗して、不利な条件を呑んでしまった。いかにも日本的です。
それでもせっかくできた文化の砦を、かくも短期間で撤収してしまうのは、あまりに貧困なる精神、ではないでしょうか。

まあ、せめて閉館までは、感傷にひたりつつ、鑑賞…といきましょう。







関連記事
スポンサーサイト



コメント

コメント(6)
No title
美術館や博物館が大好きです。
名古屋に弟が単身赴任中なので機会をみて、ぜひ行ってみたいと思っています。

HIROちゃん

2017/08/17 URL 編集返信

No title
> HIROちゃんさん
名古屋でよく行くのは名古屋ボストン美術館、愛知県美術館、徳川美術館、名古屋市美術館、松坂屋美術館です。企業運営のものではヤマザキマザック美術館というのもあります。機会がありましたらぜひお立ち寄りください。

yositaka

2017/08/17 URL 編集返信

No title
>閉館が決定...

これは残念なニュースです。
ボストン美術館というネーム・ヴァリューだけでは、やはり無理でしたか。
なかなか、展示収入メインで運営するのは困難でしょう。
東京の国立美術館でも、展示収入は収入全体の1割ていどと聞きますし。
サントリー、出光、ブリジストンのように、トヨタあたりが企業名を出してスポンサーするといった方向性はなかったんですかね。

みっち

2017/08/18 URL 編集返信

No title
> みっちさん
展示収入の目算も甘かった上に、多額の寄付金が提携の条件、というのが足を引っ張ったようにも思いますね。
それにしても、企業連合体は、それくらいの寄付金は拠出できると踏んだのですから、いざとなれば東京の大企業に支援を求めてでも、継続を優先してほしかったと思います。所詮、文化を飾りと思っているからこんなことになったのでは…

yositaka

2017/08/18 URL 編集返信

No title
開館時から「ボストン美術館から借りて展示するだけ」というのが美術館なのか?バブル崩壊後の不況下で資金集めに苦労しているとの新聞報道を思い出します。
最近の美術館は、自分の所蔵品、他の美術館の所蔵、個人所蔵とかを共有して企画立案する美術館のネット・ワーク化がすすんでいます。
8月27日までですが、エヂソン近くの新栄駅にあるヤマザキマザック美術館の「よそおいの200年」これは見ごたえがありました。

チャラン

2017/08/20 URL 編集返信

No title
> チャランさん
所蔵品の充実は最近の傾向で「借りて見せる」のが展覧会という戦後の状況から進歩したと言えます。ほんらいならここも、借りて見せつつ、独自のコレクションを充実させるべきだったのでしょうね。根付かせるという意識が希薄だったのだと思います。マザックはよくやっています。

yositaka

2017/08/20 URL 編集返信

コメント投稿
非公開コメント

プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

ご訪問ありがとうございます

月別アーカイブ

検索フォーム

QRコード

QR