急病と音楽

夕方、突然胸の苦しさに襲われて、ますますひどくなるので近くの病院の緊急外来に駆けつけました。



すると、とんでもない混雑。
救急車が次々に到着し、警察官の出入りも頻繁。そんなわけでネコパパ、心電図はすぐにやってくれたけれど、心臓に問題がないとわかってからは、どんどん後回しに。到着したのが夜10時、病院を出たのが朝5時というわけで、ほとんど徹夜仕事になってしまいました。その間、痛みがどうにもおさまらず、じっとしているだけでも大変で、不安は募るばかり。アヤママがずっとそばにいてくれなければ、どうなっていたか…つくづく妻はありがたい、と感じました。
逆流性食道炎とのこと。処方された薬「ガスターD」を服用して就寝すると、痛みはおおむね治まっていました。

翌日午前11時頃、やっと起き出してはたものの、病院で徹夜はさすがに堪えてその日の予定はキャンセル。この症状は寝るよりは起きていたほうが良いということで、午後は2階のオーディオ部屋でおとなしくCDを聴くことにしました。


ショパン:ピアノ協奏曲第2番ヘ短調 Op.21
ショパン:夜想曲集
第1番変ロ短調 Op.9-1
第2番変ホ長調 Op.9-2
第3番ロ長調 Op.9-3
第7番嬰ハ短調 Op.27-1
第8番変ニ長調 Op.27-2
第14番嬰ヘ短調 Op.48-2
第20番嬰ハ短調 WN.37『レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ』




マリア・ジョアン・ピリス(ピアノ)
シンフォニア・ヴァルソヴィア(協奏曲)
クリストファー・ウォーレン=グリーン(指揮:協奏曲)
録音時期:2010年8月29日(協奏曲)、2014年8月29日(夜想曲)
録音場所:ワルシャワ
録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)
ポーランドNIFC 海外盤CD

めったに自分からは聞かないショパンですが、体調不調時はこれが染みます。第2協奏曲はピリス、3度目の録音。以前と比べて大きく変貌したということはありませんが、一つ一つのタッチがすべて音楽で満たされているような安心感は健在です。ウォーレン=グリーンの指揮も熱く反応が良い響きでピリスをバックアップ。既出のジョルダン、アバドを上回る出来栄えと思います。
夜想曲集も同様で、有名な作品9-2も、聞き古した感がまったくありません。最後に演奏された「遺作のノクターン」第20番嬰ハ短調は、当アルバム最高の聴きものでした。


続いて取り出したのは、イヴォンヌ・ルフェビュールのボックスから。
20世紀のフランスを代表するピアニストの一人で、アルフレッド・コルトーに師事、教育活動にも力を注ぎ、リパッティ、フランソワの師でもあります。確か日本のドビュッシー演奏の権威、青柳いづみこ氏も師事していたのでは。録音は少なく、放送録音も加えて24枚にまとめたこの「大全集」は貴重なものと言えるでしょう。



仏SOLSTICE 海外盤CD  (24CDセットに含まれるもの)

CD1 <モーツァルト>
ピアノ協奏曲第24番 K.491 フェルナン・ウーブラドゥー指揮パリ室内管弦楽団(1962.11.13)INA放送録音・初出
ピアノ・ソナタ第14番 K.457 (1971 Radio-France) INA放送録音

モーツァルトらしく弾く、なんて考えは微塵もなくて、強い打鍵で、情念をこめて演奏されています。協奏曲の指揮者ウーブラドゥーは「パリのモーツァルト」という稀覯LPでマニア御用達の人ですが、この人の演奏がまた熱情漲るもの。

CD2 <シューマン>
ピアノ協奏曲 Op.54 ピエール・デルヴォー指揮フランス国立放送管弦楽団(1955.4.4) INA放送録音・初出

これまた乗りに乗った緩急自在の演奏。特にフィナーレはすごいスピードの中に、多彩な情感を描き分けていて目がくらむほどです。

CD8 <ベートーヴェン>
ピアノ協奏曲第4番Op.58 スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮フランス国立管弦楽団(1959.12.1シャンゼリゼ劇場)INA放送録音
ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 Op.111(1959.5)INA放送録音) 

スクロヴァチェフスキの、目いっぱい音を伸ばしたフレ―ジングの美しさにまず耳が惹きつけられました。
ルフェビュールのピアノは今回も濃いかと思いきや、意外に抑えた打鍵で音の粒立ちを生かします。そこに時折ハッとするような強靭さを織り交ぜる。
一方、ソナタ32番では強靭すぎるくらいの第1楽章と、情感を込めた第2楽章の対比が鮮やかです。とくに第2楽章…どのピアニストで聞いても感動的な、音楽の究極といっていい曲ですが、これもすばらしい。
基本的にルフェビュールは、「自分の弾きたいように弾く」ピアニストと感じます。とにかく、ピアノの音が自分の言葉になっていて、普通に鳴っているだけの音は一音もありません。さすがに続けて聞くには、疲労感がありますね。

そこで次は、この一枚。

リラの花咲くころ~ドビュッシー,ショーソン歌曲集
クリスティーネ・シェーファー(S)
アーヴィン・ゲージ(p)
録音1999.6 ベルリン テルデック・スタジオ
ドイツグラモフォン 国内盤CD



ショーソン
1 魅惑と魔法の森でop.36-2
2 4つの歌op.13 - 第1曲「静けさ」
3 4つの歌op.13 - 第2曲「セレナード」
4 4つの歌op.13 - 第3曲「告白」
5 4つの歌op.13 - 第4曲「せみ」
6「愛と海の死」~リラの花咲くころop.19-3

ドビュッシー
7 華やかな宴 第1巻 - 第1曲「ひそやかに」
8 華やかな宴 第1巻 - 第2曲「操り人形」
9 華やかな宴 第1巻 - 第3曲「月の光」
10抒情的散文 - 第1曲「夢に」
11抒情的散文 - 第2曲「砂浜に」
12抒情的散文 - 第3曲「花に」
13抒情的散文 - 第4曲「夕暮れに」
14白夜 - 第1曲「終わりなき夜」
15白夜 - 第2曲「彼女が入ってくると」

ショーソン
16「7つの歌op.2」~第6曲「エベ」
17「7つの歌op.2」~第7曲「蜂鳥」
18「4つの歌op.8」~第1曲「夜想曲」
19「4つの歌op.8」~第3曲「悲しい春」
20 2つの二重唱曲op.11 - 第1曲「夜」
21 2つの二重唱曲op.11 - 第2曲「目覚め」

シェーファーはドイツのソプラノ歌手で、歌い方は至極ストレートでさっぱりとしていますが、ピアニストの陰影に満ちた名伴奏とともに、心に染み込むような静かな感動があります。ドビュッシーだけでなくショーソンも抱き合わせというのが残念…とおもったら、そのショーソンがドビュッシーをに甘さを付け加えたような味わいがあってすばらしい。二人は親友で、ともにフランス近代歌曲「メロティ」の確立者だったそうです。でも、三角関係のもつれで絶交したとのこと。


なんとなく気分が良くなって「交響曲を聞こう」という気分になってきました。でも、激しいのはダメです。そこで…

シューベルト 交響曲第8番「未完成」
エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団
1978年6月12日 (ウィーン芸術週間ライヴ) / ウィーン楽友協会大ホール
日ALTUS 国内盤CD



オフマイクで音が霞んでいることで有名な「ウィーンのムラヴィンスキー」のひとつですが、ネコパパの体調にはあっていました。
演奏そのものは絶好調。弱音主体の玲瓏たる音色で、随所に独特の音楽の読みが聞かれます。第2楽章のフォルティッシモの打ち込みをさらりと弱く流す箇所など、陶酔の極み。
このアルトゥス盤は既出盤と違い、ダイナミックレンジが広く、演奏の特徴がよく伝わります。

こちらは1983年、最晩年の録画です。


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コメント

コメント(20)
No title
>突然胸の苦しさに襲われ...

どういうわけか、体調が悪くなるときは、夜中か休日と相場が決まっています。
さほどのことはなかったようで、良かったです。

クリスティーネ・シェーファーといいますと、アーノンクール/ウィーン・フィルの「フィガロの結婚」Blu-ray盤での、ケルビーノ役が印象に残っています。
この盤は、実のところ、アンナ・ネトレブコのスザンナ役が観たくて(笑)買ったのですが、ドロテア・レシュマンの伯爵夫人役も併せて、このビッグ・スリーのソプラノの競演が見事でありました。
みっちは、「フィガロ」には、さほどのファンではないのですが、それでも、このザルツブルク・ライブ盤は大事にとってあります。

みっち

2017/08/13 URL 編集返信

No title
こんばんは♪♪

御無事で何よりです、、、私は今 3日前に熱中症になってしまい未だに体調不良です。(^-^;

今年の暑さはホントに殺人的です。

お互い気を付けたいですね。

何時もナイス、ポチッ、コメありがとうございます。


ではでは

Yさん

2017/08/13 URL 編集返信

No title
どうか もう一度別の有力機関の病院にて身体の再精密検査を受診して下さい。
採血、採尿、胃カメラ、心電図、MRI、CT等一通りの主力検査を

私が受診している「がんセンター東病院」でも、事実上診断は手探り状態で何度も複数の課でクエスチョンマークを告げられているのが現実です。
しかし、思いもよらぬ身体トラブルに見舞われる年齢なんですね。お互いに

老究の散策 日記

2017/08/13 URL 編集返信

No title
> yan_yanさん
コメントありがとうございます。ファン登録もありがとうございます。4歳の時からピアノを…素晴らしいですね。一生の宝物です。私がはじめてショパンのレコードを買ったのはホロヴィッツでした。それに含まれた「幻想ポロネーズ」「英雄ポロネーズ」は今も個人的に基準としている演奏です。ルービンシュタインもハラシェヴィチも、中学校の頃からの馴染みです。ルービンシュタインのショパンでは、とくにモスクワでのライヴが素晴らしいと思います。リヒテルは、1977年ザルツブルクでの「舟歌」「スケルツォ」…ショパンはあまり聞かないと言いながら、結構いろいろ出てくるのが不思議です。

yositaka

2017/08/13 URL 編集返信

No title
> yan_yanさん
ムラヴィンスキーはもちろんロシアものも良いですが、ベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、シベリウスなども好きなものが多いのです。ロシア、ソビエトという国家には到底収まりきれないスケールをもった存在でした。ただ、ものによっては録音の悪いものもあり、盤の選択には注意が必要なのですが…

yositaka

2017/08/13 URL 編集返信

No title
> yan_yanさん
ドイツをキーワードにした、貴重な内容のブログをお書きになっているんですね。記事の対象も広範囲で驚きました。ぜひお邪魔させてください。
体調の方は、なんとか回復して、今日も妻とコンサートや買い物に出かけました。ご安心ください。

yositaka

2017/08/13 URL 編集返信

No title
> チャランさん
そうそう。病院で順番待ちの間、待合室の椅子に寝っ転がっていましたが、後から考えるとあれも良くなかった。再発防止の注意事項も聞きましたが「食べてすぐ寝っころがる」のも良くないそうです。脂っこいものは減らす、就寝四時間前はものを食べない、適度の運動も必要…大変です。

yositaka

2017/08/13 URL 編集返信

No title
> ユキさん
病院での時間はまったくハラハラでした。着いたそうそう「3時間待ですが、いいですか?」やっとのことでエコーの順番が回ってきたと思ったら、若い医師の携帯が鳴り「ちょっと待ってください」で、その「ちょっと」が80分…スタッフのあまりの多忙さがかえって心配になってしまいました。

yositaka

2017/08/13 URL 編集返信

No title
> 不二家さん
ポイント部分(心臓と血尿チェック)だけは迅速でしたから、対応としては正しかったと思います。その辺の判断はこちらにもわかったので、冷静に我慢していた、という感じです。
ご心配をおかけしました。

yositaka

2017/08/13 URL 編集返信

No title
> みっちさん
体調が悪くなるときは、夜中か休日…そうですね。現役多忙時代を思い出しても、確かにそうでした。気の緩む時間なんでしょうね。そこを狙ってくる。
ご心配かけました。
「フィガロの結婚」のケルビーノ役ですか。シェーファーならルックス的にも、声の質からも、ぴったりの気がしますね。とても気になります。ぜひ探してみましょう。

yositaka

2017/08/13 URL 編集返信

No title
> Yさん
熱中症ですか。ただ事ではない近頃の気温、そしてブログで拝見するYさんの生活ぶりから、それはありえることだと思ってしまいました。お互い年齢を意識して、健康に配慮した生活をしたいものですね。ご心配をおかけしました。

yositaka

2017/08/13 URL 編集返信

No title
> 老究さん
ご心配頂き、ありがとうございます。
私は日頃からあちこちの病院に通っていますし、検査もかなり細かく続けていますから、その点はあまり心配していません。駆け込んだところも、まさに有力機関の病院です。だからといって、すっかり安心もできません。
おっしゃるとり、医学が進歩したといっても「あらゆる診断は手探り状態」というのも事実です。そこはよく噛み締めていきたいと思っています。

yositaka

2017/08/13 URL 編集返信

No title
これはたいへんでした。くれぐれもお大事に。

> オーディオ部屋でおとなしくCDを聴くことにしました。
> 気分が良くなって「交響曲を聞こう」という気分になってきました。
こういう時は音楽の治癒力が最高かも。

へうたむ

2017/08/14 URL 編集返信

No title
あらあら,大変でしたね。
家内も心臓が痛いと言っていろいろ診てもらったら,逆流性食道炎でした。
いっときは,ニトロまで処方されたのに,食道って。診断もなかなか難しいようです。

_リ_キ_

2017/08/14 URL 編集返信

No title
> へうたむさん
ご心配をおかけしました。気分がある程度回復しないとジャズや交響曲はなかなか聞けないことがよくわかりました。まさに治癒力最高です。そういえば「音楽の薬シリーズ」という洒落たCDシリーズが昔ありましたね。

yositaka

2017/08/14 URL 編集返信

No title
> _リ_キ_さん
意外に経験された方がいらっしゃるんですね。痛いのは心臓ではなくて、胃液で荒らされた食道だったのです。
心臓と位置が近いから、紛らわしいようです。私も昔から軽い不整脈があるので、気をつけなてはいけないと思っています。

yositaka

2017/08/14 URL 編集返信

No title
大変でした。ご自愛ください。

実は私も・・・逆流性食道炎でなく、食道に潰瘍ができまして。。。
夜間救急に行ったら、診断で、朝になったら即入院してください。。。になりました。
30歳の時です。とにかく痛かったけど、隣の診察室の尿管結石の偏りは痛くなかったと思います。
前十字靭帯断裂の時もそうでしたが、看護婦があきれるくらい痛みには我慢できるようです。(決して痛くないわけではありません)

マント

2017/08/16 URL 編集返信

No title
> マントさん
ご心配かけました。
本日お盆明けの初診察で主治医のところに行き経過報告してきました。病院でもらった薬を飲み終わったら様子見で、兆候があれば飲む薬を頂いてきました。痛みに強いのは羨ましいですね。今回はひたすら我慢でしたが、まあ確かに尿管結石のときほどではなかったですね。

yositaka

2017/08/16 URL 編集返信

No title
ぼくは昨年の2月に脳ドックに行った時に、逆の体験をしました。CTを撮ったあとはみなさんと全く別メニューで、脳外科医の診察、緊急オペ、1週間の入院に。頭を打撲したことから、慢性硬膜下血腫となっていました。ようやく友人にそのことを話せるようになってきましたが、当時はショックが大きく、落ち込んじゃいました。与えられた時間が薬になるという体験をさせていただきました。
まだまだ暑い日が続きます。ゆっくり、ゆったり、お過ごしください。

”音”故知新

2017/08/20 URL 編集返信

No title
> ”音”故知新さん
それは大変でしたね。脳ドックで発見されたということは、自覚症状があまりなかったのですね。適切な対応ができて不幸中の幸いでした。こういうことがあると、人間ドック受診は大切なことだとつくづく思います。お互い、のんびりやりましょう。

yositaka

2017/08/20 URL 編集返信

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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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