西尾フィルを聴く~ロシア旋律美の世界

雨の日にコンサートに出かけました。
今回もsige君のご好意で招待されていたのですが、諸般の事情でネコパパのみ参加となりました。

西尾フィルハーモニー管弦楽団第45回定期演奏会



プログラム
ムソルグスキー 交響詩「禿山の一夜」
チャイコフスキー バレエ組曲「眠りの森の美女」
カリンニコフ 交響曲第1番

アンコール曲
チャイコフスキー バレエ組曲「白鳥の湖」より「情景」


開演前に会場に着くと、プレステージ演奏がロビーで行われていました。
弦楽四重奏にホルン1、オーボエ2が入った7人編成で、曲はモーツァルトのディヴェルティメント。これから本番があるというのに、素晴らしいサービス精神ですね。
ロビーの残響も色を添えて、音楽を愉しむ雰囲気が会場全体を包み込んでいくようです。

今回のコンサートは「ロシア旋律美の世界」と題して、オール・ロシア・プログラム。

着席したのは向かって右寄り、出入り口に近い中央から少し後方に位置です。この西尾市文化会館は中学校吹奏楽コンクールの会場として使われる、典型的な多目的ホールですが、音響面ではバランスが取れて聴きやすい。今回の席は今までと比べて音の粒立ちが際立って鮮明だったのに驚きました。
もちろんそれは、西尾フィルの精進によるところが大きいのですが。

指揮者は宗川 諭理夫。作曲家、ヴァイオリニストとして著名で、指揮者としては新進気鋭の方とのこと。
長髪をなびかせた指揮ぶりは、ちょっとポップス系の印象。
出てくる音楽も、イメージにぴったりの明るくリズミカルなもので、曲を楽しく聞かせようとするサービス精神にあふれた指揮です。

冒頭の「禿山の一夜」は、まだオーケストラのエンジンがかかっていない感じでしたが、無理なくしっかりと音が出てくるのがわかります。雨天時、ちょっと心配だった金管の安定度も嬉しい。重苦しさはまるでなく、粒立ちのいい音に身を任せることが快適な演奏でした。

続く「眠りの森の美女」は、最初の一フォルテ一撃から本調子でした。
ハープのアルペッジョで始まる幻想的な第2曲「パノラマ」、速めのテンポでぐんぐん盛り上げる第4曲「ワルツ」は、チャイコフスキーの音楽の一番いいところが詰まった曲想にあふれていますが、弾むリズムに乗って、存分に満喫させていただきました。

休憩をはさんで演奏されたのは、この日のメイン曲、カリンニコフです。



これは34歳で夭折したロシアの青年作曲家の代表作といわれているもの。近年少しずつ演奏の機会が増えてきたものの、一般にはまだまだ「幻の交響曲」ではないでしょうか。
第1楽章の冒頭から、民謡風の朗々たる歌謡旋律があふれ出ます。これは儚く、哀しげで、一度で覚えてしまうような名旋律。第1楽章は、このメロディ一つで勝負、といわんばかりに、延々とくりかえし可愛がり、歌い続けてそのまま終わってしまう。
続いて様寒としたロシアの草原をとぼとぼと旅するような哀感に満ちた第2楽章、舞曲調の素朴な第3楽章をへて、再び冒頭のテーマで開始されるフィナーレに至ります。
この流れは、チャイコフスキーの第5と似ていますね。以後の展開も、交響曲のセオリーをしっかり守るように次々に楽器を交錯させ、テンポを上げ、金管を咆哮させつつ大きく盛り上げる…と、やはりチャイコフスキーばりの展開です。

たしかに親しみやすい佳作。でも、傑作かな?

コンサートのタイトルに謳われた「ロシア旋律美の世界」とみれば、たしかにそう。カリンニコフは優れたメロディメーカーです。でも正直に言えば、交響曲と銘打つにはちょっと物足りない感じも否めません。
フィナーレの必死の盛り上げは買えるとしても、、そこを除けば、とにかく全体のオーケストレーションが薄い。魅惑のメロディは第一ヴァイオリンに任せきり、あとの楽器は支えに回る方法一貫し、多様な楽器の音色のパレットが、時には混ざり、時には浮かび出て渾然一体となって聴き手に迫る…そんなオーケストラ音楽の醍醐味や面白さが、あまり感じられなかったのです。

実はネコパパ、この曲の音盤を一枚、架蔵しています。
一時ちょっとした話題になったときに、ふと出来心で買ったのです。
そのときの印象が、やっぱりそんな感じ。この薄い響きは、ひょっとして演奏のせいか、とも思い、二度と聴き返していません。
そんなわけで今回は期待し、演奏も素晴らしかったのですが、曲の印象が大きく変わったかといえば、うーん、どうもこれは…

そのことは、拍手に応えて演奏されたアンコール曲、チャイコフスキーの「情景」を耳にしていっそうはっきりした気がします。
わずか3分の、メロディーが命と思われている音楽ですが、決してそれだけではありません。冒頭の一和音で夕暮れの色が満ち、ハープの一節が湖の波のさざめきを表現する。そんな音のカーペットに乗って、オーボエがひとり有名な旋律を奏でる。その精妙さと密度の濃さは、直球勝負で頭からメロディをかき鳴らすカリンニコフとは大きく違っています。
やはりチャイコフスキーは大作曲家だったんですね。

いずれにしても西尾フィル、演奏精度の向上だけでなく、プログラム作りにも独自の主張をもとうとする意欲を感じ取ることができました。
次回も、愉しみです。


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コメント

コメント(4)
No title
こんばんは。カリンニコフの交響曲は私もナクソスレーベルで購入しましたが、名曲かどうかはわかりませんがメロディーは良いですね。

でもこの曲をコンサートに取り上げるのは珍しいですね。

HIROちゃん

2017/06/27 URL 編集返信

No title
オケとしては取り上げたくなる楽曲かもしれませんね。

私はヤルヴィ盤(Chandos)を持っています。
ご掲出のYouTubeの演奏で、1分19秒くらいからの、あの流麗な楽想(第2主題?)はほんとうに美しく、チャイコフスキーの、むしろもっとつまらなく感じる第2、第3交響曲より魅力的に感じます(第1番《冬の日の幻想》は好きです)。

ヤルヴィ盤はそこそこ音に厚みも感じさせます。
が、ヤルヴィ盤ではホルンが音をはずしているように聞こえる箇所があります。
ご掲出のフリードマン盤で、2分47~48秒、あたり。これ、音符がそうなっているんでしょうか? フリードマン盤も、やはりホルンが「ホワァ」と一瞬???

へうたむ

2017/06/28 URL 編集返信

No title
> HIROちゃんさん
実は私もナクソス架蔵しています。当時は怪しいレーベルという見方もあった同レーベルですが、発売元が近所だったこともあって(西崎崇子さんの実家)応援する意味もありました。最初の1分で聴き手を引き付ける力は相当なものでしたが…

yositaka

2017/06/28 URL 編集返信

No title
> へうたむさん
チャイコフスキーの第2、第3交響曲と比べると…確かに微妙な感じになってきます。第2交響曲のフィナーレは結構好きなんですが。
カリンニコフはクラシック作曲家の地位が確立していない当時のロシア唯一の成功者、チャイコフスキーに学んだようですが、天才肌というよりは一生懸命勉強する真面目な努力家という感じがします。夭折せずに書き継げば、第4番当たりから傑作が生まれたかもしれません。
ホルンの一件、興味深いですね。ホルンに詳しい人にご教示願いたいものです。

yositaka

2017/06/28 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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