カラス侵入禁止

朝日新聞NIEのサイトに、こんな記事が紹介されていました。
マリア・カラスではなく、鳥のカラスの話です。
小山茂喜教授による授業案もセットで掲載。
これ、新聞で読んで非常に面白い記事だと思ったのですが、さて授業で扱うとなると、どの教科になるのでしょう。
小山氏は教育学者ですが、著書から類推すると「社会科」がご専門のようです。
そうするとこれは「公民」の授業なのかな。でも、理科のような気もするし…
まずはご覧ください。




「カラス侵入禁止」警告文、なぜか効果~大槌の東大研究施設、今年3年目
(朝日新聞社発行 2017年 5月12日付岩手版20P、5月16日夕刊11P)


「カラス侵入禁止」。そう書いた紙をつるしたら、本当に来なくなった――。岩手県大槌町にある東大の研究施設は春になると、カラスに「警告文」を出す。研究者が放つ奇策だ。今年で3年目、東大が連勝している。



カラスが食い破ったとみられる断熱材の周りに警告文をつるす佐藤克文教授
=岩手県大槌町赤浜3丁目


 4月中旬の午後、大槌湾に面した「東京大学大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センター」の1階で、佐藤克文教授(動物行動学)がパイプや窓枠に紙をつるしていた。パイプ周りの断熱材はむしられてボロボロだ。「カラスが巣作りで持っていきました」。佐藤教授は苦笑いする。

センターは世界的な海洋研究の拠点として1973年に前身がオープンした。だが、震災の津波は3階建ての最上階まで到達した。その後、3階だけ仮修復したが、1、2階はがれきの撤去後、物置になった。

佐藤教授によると、カラスの被害が目立ち始めたのは15年春。むき出しになった1階天井のパイプの断熱材がむしり取られ、羽根やフンが落ちるようになった。
津波で周囲の住宅が壊滅して人影が消え、センターも扉や窓がなくなった。このためカラスが繁殖期に建物に入り込み、巣作りの材料として断熱材を「拝借」するようになったらしい。

センター職員から相談を受けた佐藤教授も決定打がなく、知人で「カラスの専門家」の宇都宮大「雑草と里山の科学教育研究センター」の竹田努研究員(環境医学)に相談したところ、「警告文を出してみては」とアドバイスがあった。

佐藤教授は「冗談だろう」と思ったが、試しに警告文をつるしてみると、カラスはすぐ来なくなった。一時的かと思われた効果も長続きした。
竹田研究員によると、警告文を目にした職員や学生がカラスに視線を向けたり指さしたりすることで警戒して寄りつかなくなる、ということらしい。「不思議に思って、みんな空を見るでしょ」

佐藤教授は今年も数十枚の警告文を建物にぶら下げた。津波の痕跡が生々しいセンターの頭上を数羽のカラスが飛び交うが、スタッフや学生は出入りの際、ちらちらと空に目をやる。「見る人が増えれば増えるほど効果が上がる。お気軽にお越しください」 (星乃勇介)





★学習のポイント★ 
信州大学教授・小山茂喜 
(朝日新聞社発行 2017年 5月12日付岩手版20P、5月16日夕刊11P)

季節の風物詩であるツバメの巣作りが、建物の軒でせっせと始まりました。巣の下は、ツバメのフンで大変なことになるのですが、昔から農家にとっては米の害虫を食べてくれることなどから大切にされ、「フン害」も大目にみられていると思います。ところが、紙面のようにカラスになると、一転して人々は「被害」として対策を考えています。この記事を参考に、人と動物とのかかわりを考えたり、カラスの習性などを調べたりしてみましょう。

(1)カラスが来なくなった理由は?
見出しは「『カラス侵入禁止』警告文なぜか効果」です。
カラスが警告文を読んで来なくなったかのようにも思えますが、記事をよく読んでみると、来なくなった理由はちがうようです。カラスが来なくなった理由を確認して、自分だったらどんな見出しを付けるか考えてみましょう。学校や家で、見出しについて話し合ってみると、いろいろな意見が出ておもしろいと思います。 

(2)カラスによる被害を調べてみよう
カラスの行動を「被害」と私たちが思うのはなぜかを、考えてみましょう。
まず、カラスの行動による被害には、どのようなものがあるのかを調べ、次になぜ「被害」と思うのかを考えてみましょう。最近は、「鳥獣被害対策」ということばも使われることも多いので、他の鳥や動物の場合について調べてみることも大切です。 

(3)カラスの賢さを調べてみよう
よくカラスは賢い、頭が良い、記憶力が良いといわれますが、なぜ、そういわれるのか、具体的なカラスの行動について、図鑑やインターネットで調べてみましょう。同時に、カラスの行動の特性を活用した「被害」を防ぐ方法について調べてみると、よりカラスのことがわかると思います。身近にいるカラスの行動を、実際に観察してみると、おもしろい発見があるかもしれません。 

(4)カラスとの共存を考えてみよう
カラスを害鳥と考えるだけでなく、どのようにしたら共生できるかも考えてみましょう。
カラスの習性や能力をうまく利用すると、害鳥という発想だけでなく、有益な鳥となることもあるかもしれません。

ワークシート



まあ、社会にしても理科にしても、面白そうな授業ができそうですね。
ただ、ネットに上がっていた佐藤教授自身が書かれた文章によると、
竹田研究員の話された理由は、ちょっとニュアンスが違うんです。

その後は建物にカラスは入ってこなくなりました。夏に視察に訪れた東京大学総長も「そうですか、カラスは文字が読めますか」と面白がったとか。
そのことを竹田先生に報告すると、「東大の人はマジメなので、そんな張り紙があると足を止めてじっくり観察してしまうのではないかと思って、提案してみました」とのことでした。悔しいことに、私たちの行動もまた先生の読みどおりだった模様です。

記事には「警告文を目にした職員や学生が…」とさりげなく書いていますが、竹田氏は「東大の人、限定」のニュアンスで提案したのですね。
その前の総長の台詞がまた、このことを裏付けるように、ばっちり決まっています。
私が授業をするとしたら、道徳で、「東大の人」に、ちょっと重きを置いた授業がしてみたいな。

そこでまず、事前準備を思っていたら、いい題材があった!

ここ数日、ネコパパ宅ではカラスに生ごみ袋が食い破られるトラブルが続いています。ネットでしっかり覆っているのですが、それでもしつこく嘴でつついて破ってしまう。
そこで実験です。
ネコパパ庵の軒先に同じような「カラス食い破り禁止」の看板を出したら、効き目はどうか。
効き目、皆無…だったとします。
子どもたちにその事実を示した上で、同じことをしてもなぜ海洋研究センターでは効果があるのか、を考えさせます。

近所のカラスはバカだから
人通りが少ないから
ネコパパ先生の字が下手だったから
住民がそんな看板に興味を示さないから…などの意見が出ると予想されます。

そのあとで、竹田氏の言葉を伝える。
もちろん「警告文を目にした職員や学生が…」ではなく「東大の人はマジメなので、そんな張り紙があると…」のほうですよ。
それから、感想を自由に話し合います。
指導内容(主題)は、指導要領番号1-(4)「真理愛・真実の追究」。

どうでしょう?
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コメント

コメント(6)
No title
こんばんは♪♪

これは面白い話ですね!! カラスは本当に頭が良いらしく、私の親戚に空気銃で野鳥退治をやっているヤツがいるのですが、、、顔を覚えられるとある
距離以内には絶対入ってこないし、日が経つの連れてその数は増えて行くそうです。

SONYがアイボと言うのを製品化して、、、購入者が ”アイボは賢いのよ 台所で炊事をしていると見守っていてこっちに入ってこないのよ”と

これを聴いた設計者が ”単に段差を降りれない
だけなんですけど、、、” と言ったそうです。

カラスも何か勘違いしているのかな?


ではでは

Yさん

2017/06/20 URL 編集返信

No title
> Yさん
カラスは人間で言うと小学校2年生くらいの知能があるそうですから、文字は判別出来なくても別の感覚で状況を察している可能性がありますね。
もしかするとアイボも、本当は段差を降りられるのを、内緒にしているのかも。

それにしても東大総長の素直な反応は微笑ましい。
2014年の話ですから総長は濱田 純一氏で、この人はメディアと法の関わりを研究する法学者です。日本マス・コミュニケーション学会会長でもありますので、人と他の生物のコミュニケーションにも共感的なのかもしれません。

yositaka

2017/06/21 URL 編集返信

No title
カラスは頭が良いですよ。考えて行動しています。
私はカラスに「ヨォ」とか「調子はどうだ?」とか、声をかけるようにして居たら、来なくなりました。
意外と正攻法が良いのかも知れませぬ。

quontz

2017/06/21 URL 編集返信

No title
> quontzさん
なるほど。では家の前の通りに定住しているあいつにもちょっと声かけしてみましょう。以前は二羽だったのが今は一羽、もしかすると、つれあいを亡くして荒れているのかもしれないと思ったりします。

yositaka

2017/06/21 URL 編集返信

No title
へ~。講演を頼まれたので久しぶりにカラス侵入禁止の反響を調べていました。ちなみに私は信州大学教育学部附属長野小学校卒業でした。 信州大学で教材になっているのがうれしいです。 竹田@宇都宮大

竹田努

2018/12/21 URL 編集返信

No title
> 竹田努さん
竹田先生ご本人からコメントを頂けるとは…なんとも光栄です。
ブログを続けていると、こんなことがあるから嬉しいんですね。
記事を教材とした教材で「主体的な学び」のある授業を多くの学校でやっていただけるなら、道徳の教科化の意味も十分あると思いますが、いかがでしょうか。

yositaka

2018/12/21 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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