名手たちのモーツァルト



フランスの名手たちを中心とした、モーツァルトの協奏曲集。
古くは30年代、新しいものでも55年と、録音は古い。中には、LP盤起こして、激しく音がひずんで気持ちが悪くなるものがある。
ボスコフスキーのヴァイオリン協奏曲の第3楽章。
プレーヤーが壊れたかっ、
と思うよ。
現代の演奏家による新しい録音がたくさん聴けるというのに、こんなCDをあえて聴くのは、単なる懐古「趣味」なのか。

決してそうではない。
リリー・クラウスの弾くピアノ協奏曲。ピアノの音は強靭で、表現は即興演奏のように自在。
競演するボスコフスキー指揮のオーケストラも、触発されたのか、移り香の漂うような、ウィーンの音色を聴かせてくれる。
あまりにロマンティックな、過剰な表現と見るか、最高と喝采するか、きっと意見が分かれるだろう。
やりすぎと思う人が多いかも。
でも、協奏曲は、そんな「過剰」さを愉しむジャンルではないだろうか。
ランドフスカの古い『戴冠式』でも、装飾音の華麗さ、自在さにひきつけられる。現代の演奏に多い、「昔はこうしたのだ」という解釈から生じたものではなく、自発的に湧き上がる音に、聴こえるから。

音のとり方も違う。

ジャズの名門レーベル、ブルーノートみたいな録音だ。
楽器をマイクに突っ込んでいるかと思われるほど、音が近接。指使い、息遣いまでが生々しく聴こえてくる。
モイーズの、とつとつと語りかけるフルート。そこからはフルートのちょっとキンキンするような、いやな音がひとつもしない。
ランパル、ランスロ、オンニュ、ピエルロ…
ステレオ時代に入って、仏エラート・レーベルに名盤を残したソリストたちも、このときはずっと若い。ずっと素朴で、ストレート。
指揮のカール・リステンパルトが、素朴につけているようで、意外に強い影響力を持っているのかもしれない。
エラートで競演しているジャン・フランソワ・パイヤールは、時には「華麗」が「派手」に聴こえることもあるから。

そんなわけで、先月、東京のディスクユニオン、お茶の水クラシック館で入手以来、毎日のように聴いている。

貴重な音源も多い。
リステンパルトやクラウスのものは、アナログ・ファンに人気(値段)の高いレーベル、ディスコフィル・フランセ原盤。名録音技師、アンドレ・シャルランの仕事でも知られる。
この人の録音は、クラウスやイヴ・ナットをきいた限りでは、レベルオーバーぎりぎりの高出力とマイクの近接が特徴と思う。
確かに、ルディ・ヴァン・ゲルダーに近い音作り。
このセットも彼の手によるものがきっとあるだろう。
詳しいデータがほしいところ。録音だって、芸術なのだから。

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コメント

コメント(4)
No title
これは貴重なセットですね!店頭で見かけた記憶もありますが、結局、買いませんでした。わが家の貧弱な装置(家電量販店の普及品)で音質を語るのもおこがましいですが、国内EMIのSP復刻は、だいぶ前にティボーの小品集を聴いてガッカリして以来、手を出すのを躊躇していました。

1950年代のボスコフスキーの録音は、最近、CD-Rレーベルから相次いで復刻されていて、その中からモーツァルトの協奏曲集を含む何枚かを聴きましたが、どれもこれも絶品揃いでした。(特に、ベートーヴェンのロマンス!)

ローラ・ボベスコの協奏交響曲は、他では見たことないような。

ピエール・ピエルロも聴いてみたいなぁ…。

このBOX、次に見かけたときは買います!
(果たして見かけることがあるかどうか…)

Loree

2010/06/28 URL 編集返信

No title
ロレーさん、コメントありがとうございます。ブログも拝見させていただきました。今後もよろしく…
さて、フランスの録音というのは、クラシックファンには憧れのようです。
ディスコフィル・フランセ、デュクレテ・トムソンなど、EMIが発売権を持っているはずですが、なかなか正規盤として再発されない。
それは、私がクラシックを聴き始めた70年代初めからずっとそうで、東芝盤もいつも品薄か品切れ廃盤だったと思います。
そうした貴重さが、かえってマニアを生んだり、伝説化のもとになるのでは。
このセットも、正規盤なのに盤起こしが混じっているくらいで、オリジナルテープの行方も定かでないのでしょうか。
もっとみんなが聴ける状態にしてほしいと思うのですが。

yositaka

2010/06/29 URL 編集返信

No title
はじめまして。
”アンドレ・シャルラン”でブログ検索の末たどり着きました。
シャルランの盤がこの度発売されるようです。実は私はシャルランのことををよく知らないので迷っています。
それらの盤が紹介されたネット通販のサイトのリンクを貼っておきます。http://www.hmv.co.jp/fl/12/646/1/?pagesize=1
http://www.aria-cd.com/arianew/shopping.php?pg=label/charlinnew

不二家 憩希

2010/07/02 URL 編集返信

No title
不二屋さん、はじめまして。コメントありがとうございます。
シャルラン・レコードのニュースは私も見ました。中野雄さんがどこかで書いていましたが、同レーベルは原盤が差し押さえにあって廃棄されてしまい、今ではコピーしか残されていないとのことです。
シャルランが他のシーベルで行った仕事、リリー・クラウスやイヴ・ナットの録音は完成度の高い見事なものでしたが、彼自身のレーベルのこれまでの国内復刻盤はあまり好評とは言えなかったと思います。今回の発売はどんな音源を使用しているのか、興味はありますが、なにせ曲も演奏家もマニアックなので…

yositaka

2010/07/02 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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