ヘンゲルブロック&NDRエルプ・フィル~ブラームス交響曲第3番&第4番
ブラームス
.交響曲第3番ヘ長調作品90
.交響曲第4番ホ短調作品98
NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団(旧:北ドイツ放送交響楽団)
指揮:トーマス・ヘンゲルブロック
2016年11月、エルプ・フィルハーモニー・ハンブルク(セッション)
Sony Classical
最近はヨーロッパのオーケストラ事情も厳しいようで、各地で統合合併、名称変更の動きが聞かれる。
しかし、ここで演奏している「エルプ・フィルハーモニー」はそれとは違い、北ドイツ放送交響楽団が新たな根拠地を得たことを機に、ホール名に合わせ改称されたようだ。
なんだかすごい豪華絢爛たるホールである。
費用と時間(完成までに9年)がかかりすぎて、完成までにひと悶着あったらしい。
同オケは終戦直後の1945年、指揮者ハンス・シュミット=イッセルシュテットが英国の依頼で創設に尽力し、のちギュンター・ヴァントの下で一躍名を馳せた。
フルトヴェングラー、シューリヒト、クナッパーツブッシュ、クレンペラーらの指揮した録音も多数ある。高齢化するクラシックファンにとっては、「このオーケストラは、現在では…」と、いちいち語彙変換するのは煩わしいが、事情もあるのだろう。
このブラームス、透明度の高いさらっとした響きで演奏されている。なんだかモーツァルトに近い響きだ。
ヘンゲルブロックはピリオド奏法を得意とする指揮者だけあって、ヴィヴラートも抑制気味。従来聴き慣れた、重厚なドイツ風の響きを期待すると、肩透かしを食らいそうだ。
第4番はもちろん、第3番も、速いテンポで、全く粘らず、軽いリズムですいすい進められる。
なかなか新鮮だ。
古いタイプのブラームス演奏の好きなファンは怒り出すかもしれないけれど…この作曲家の晦渋さがちょっと苦手なネコパパは、こんな、風のようにすっきりと耳を撫でていく演奏も悪くないなと思う。
びっくりするのは、第4番の冒頭。
「あれ、トラックを間違えたかな」とひっくり返りそうになった。
お馴染みの、上空からふわりと舞い降りてくるような主題提示のかわりに、シューマンのチェロ協奏曲の冒頭のような重い和音がずーんと出て、長く引き伸ばされる。
そのあとおもむろに、馴染みのテーマが現れる。
これは、初演を聴いたヨアヒムの助言でブラームスが追加した序奏部で、いわゆる「初稿」とは違うらしい。
作曲者はすぐ思い直して取り去ったそうなので、わざわざ演奏する意味があるのか疑問だが、ヘンゲルブロックはお気に入りなのだろうか。
コメント
SL-Mania
2017/05/18 URL 編集返信動画で見るとヴィヴラートはしっかりかけています。ディスクの印象よりは音量は豊かなのかもしれません。さらりとした透明感やデリケートなフレーズの入りは、指揮者の求める解釈なのでしょう。ティンパニもそっと鳴らす感じです。敢えて力まない自然体のブラームス。一聴の価値はありますが、繰り返し聴くかと言えば…
yositaka
2017/05/18 URL 編集返信冒頭の導入は無い方が引き込まれますね。
音色はNDRのものですよ。シューリヒトがNDR振った時の音質に似て居ます。
演奏自体は、私は然程違和感は有りません。ハーディングのブラームスは怒りましたが(笑)、これは意外に昔風のように思います。ザッツの丸め方なんかは昔風です。
ライナーやミュンシュで慣らされてますので、早目のテンポは気になりません。
私は悪くないと思います。
quontz
2017/05/19 URL 編集返信冒頭の導入は無い方が…同感ですね。しかし初演後に自分で付け加えたのですから、あの冒頭に絶対の自信があったわけではないことがわかります。いかにもブラームスらしい優柔不断さで、彼の人間味が感じられます。
NDRの音色に強い個性は感じないのですが、バンベルク、ミュンヘン、シュトゥットガルトと比べると精緻で硬質なオーケストラという印象があり、それは確固たるものがありますね。
yositaka
2017/05/19 URL 編集返信