Youtubeに最近、指揮者ブルーノ・ワルターの貴重な音源が続けてアップされている。いずれも元は個人のエア・チェックと思われるが、音質は当時としては聞きづらいものではなく、MP3に変換してオーディオで聞いてみると、演奏の特徴が十分聞き取れる。
5月1日公開。
Walter conducts Beethoven & Wagner - NYP - 1944 (complete concert)
May 14, 1944; Carnegie Hall (live broadcast)
Beethoven: Symphony No.6 op.68 "Pastoral"
Wagner: Lohengrin Preludes Act 1 & 3,
Tristan Prelude and Liebestod.
これにはちょっと感激してしまった。
ワルター・ファン待望の、ベートーヴェン「田園」のニューヨーク・フィルとの演奏が含まれていたからだ。
演奏解釈は基本的に変わっていないが、NYPの演奏は強靭で、響きはドライ、独特の間の取り方についていけず、飛び出してしまう奏者もいるなど、小回りのきかないところも…
しかしなんといっても、この情感みなぎる「田園」を、当時のカーネギー・ホールで堂々と演奏していたことに胸が熱くなる。
4月29日公開。
Walter conducts Beethoven - Haydn - Strauss - BSO 1947 (complete concert)
Boston Symphony Orchestra, Bruno Walter conductor
(Live Rec. January 21, 1947)
Beethoven: “Prometheus” Ouverture
Haydn: Symphony No. 92
R.Strauss: Don Juan op.20
complete concertとなっているが、実際はボストン交響楽団とのコンサートの後半で、
前半にはモーツァルトの「ハフナー」交響曲とワーグナーの「ジークフリート牧歌」が演奏されている。会場はおそらくボストン・シンフォニーホール。音圧が高い録音のせいか、冒頭の序曲から、気迫に満ちた演奏が楽しめる。
5月7日公開。
Walter conducts Beethoven - Haydn - Wagner - NYP 1943 (complete concert)
November 7, 1943 Carnegie Hall (live rec.)
Bruno Walter - New York Philharmonic.
American National Anthem
Beethoven Egmont Overture op.84
Haydn Symphony no. 88
Brahms Symphony No. 1 op.68
冒頭の国歌は、第2次世界大戦での連合軍の優勢を賞揚する意味だろうか。
音楽的には、ワルターの演奏の中でも、テンポの変化の多いドラマティックな解釈で知られる「エグモント」序曲をはじめ、全体に熱気がみなぎっている。
後半のブラームス交響曲第1番では、ティンパニの凄い強打を伴う、パワフルな演奏が展開される。
これらの音源はいずれもgoodmanmusicaさんという、同じ人によって公開されたもの。
イタリアの人で、トスカニーニをはじめ、膨大なレア音源をアップしている。
相当なコレクターとお見受けするが、世の中にはすごい人がいるものだ。これからどんな音源が出てくるのだろう?
コメント
HIROちゃん
2017/05/08 URL 編集返信この中には一部、協会盤などで発売されたものもありますが、ラジオ中継全体を聴けるというのはファンにはありがたい贈り物です。
これがきっかけとなって放送局やオーケストラの所有する音源から正規盤として出されればいいなと思います。
世の中にはプライベート盤の存在を好ましく思わない方も少なくありません。
しかし、現在正規盤として出ているライヴ盤も、多くはかつてプライベート盤として流通し、それを契機にオリジナル音源が探索されたケースが多く、その存在価値は小さくないと個人的には思っています。
yositaka
2017/05/08 URL 編集返信SL-Mania
2017/05/09 URL 編集返信Music & Artsといえばかつての米ワルター協会で「研究用」と称しつつ、なぜか店頭でもLPを販売し、日本コロムビアから国内盤まで出て、貴重な音源を随分聞かせてもらった覚えがあります。最近新譜を見ないのは、正規音源が次々世に出るようになって立つ瀬がなくなったからでしょうか。
それでも、まだこういうものが出てくるのは驚きです。
こうなると、現在は所在不明とされている、シカゴ交響楽団とのかなり長時間のテレビ映像も、どこからか出てこないとも限りません。
放送された以上、録画した人もいると思うのです。
yositaka
2017/05/09 URL 編集返信素晴らしい情報をありがとうございます
E.I
2017/05/10 URL 編集返信昨日はブラームスの交響曲第4番がUPされました。
1942年の8月から1945年の1月まで、アメリカでは大規模なレコーディング・ストライキが展開され、この2年間半はごく一部のマイナー・レーベルを除き大多数のレコード会社はレコーディング活動を停止しています。
これらの音源は、その時期のもので「空白の2年」を埋める意味でも重要な記録だと思います。
yositaka
2017/05/10 URL 編集返信チャラン
2017/05/10 URL 編集返信V-ディスクとは、第二次大戦中に、世界各地に出征している米軍兵士の慰問用に、米政府の肝煎で製作された音楽ディスクで、頒布は1943〜49年。専属契約やストライキに関係なく収録されたものです。
ただ、ジャズ盤は多いですが、クラシックは少なく、ワルターはミルシティンの伴奏をしたメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲ただ1枚だったと記憶しています。それもオリジナルではなくコロムビア録音の転用でした。
慰問用ということで録音経費もかからないジャズやヴォーカルを中心に収録していたと思われます。ラジオ用の放送録音を転用することがあったのかは不明ですが、多分なかったのでは?
yositaka
2017/05/10 URL 編集返信生中継の録音、これは世界に1つしかない貴重な放送用録音ディスクかそのコピーと思われますね。
どうやって入手したのでしょうか?と考えたら 杜の会でのMさんの録音技師から直接入手した国債キャンペーンのレコードを思いだしました。
チャラン
2017/05/10 URL 編集返信たしかに、あのようなルートが存在するのですから、アメリカも不思議な国です。著作権に厳しい反面、ブートレグ王国でもあります。
一方、フランスのようにプライベート盤が出回らない代わりに放送局が割合気軽に音源を放出してくる国もあって、いろいろです。
yositaka
2017/05/10 URL 編集返信どうもgoodmanmusicaさんは、著作権のきれた戦中・戦後の映像・録音の放送局か公共の資料室の関係者もしくはチーム名かもしれませんね。
公共の資料関係施設なら日本も保管している映像・録音を視聴しに来た人だけにだけでなく音楽啓蒙の為、広く公開(Youtubeに投稿)してほしいですね。 でも日本音楽著作権協会がうるさくてだめか?
チャラン
2017/05/10 URL 編集返信イタリアの人らしいです。パブリックドメイン音源なので法的問題はないかと思います。それにしても膨大な数で、アップするだけでも大変な作業なのに無料公開しているのは太っ腹だと思います。メニューインとチェリビリダッケのリハーサルとは、また凄いですね。ぼちぼちと探索していきたいと思います。
yositaka
2017/05/10 URL 編集返信