オオカミだー!

オオカミだー!



(新版 「あっ、オオカミだ!」)

作・絵: ステファニー・ブレイク
訳: ふしみ みさを
PHP
研究所  2006絶版

あすなろ書房 2013.3
 
テンコの大好きな「うんちっち」の続編です。
もちろん、こちらも大のお気に入りになりました。

■合言葉は「やりたいほうだい、しほうだい」

お話は、ご想像のとおり、有名なイソップ寓話集をもとにしています。
その分、第1作よりは教訓的かもしれません。
もちろんこの作者のこと、うさぎの子シモンが失敗して反省する…なんて展開はありえませんから、どうぞご安心ください。




相変わらずの悪たれ子うさぎのシモンは、

散らかし放題の部屋でお母さんに怒られそうになると「オオカミだあ!」って叫びます。



お母さんが逃げ出すと、そのすきにシモンは
「やりたいほうだい しほうだい」。
この繰り返しが何回も続きます。
幼稚園の「授業中」も、お父さんに注意されたときにも
「やりたいほうだい しほうだい」。


いいですねえ。
テンコもネコパパもアヤママも、すっかりお気に入りのフレーズになってしまいました。

もちろんしっぺ返しは来るんですが、



それだって遊びのうち。
シモンの懲りないいたずら好きは、だれにも食い止められそうにありません。

読んでもらう子どもたちも、自己肯定感をふんだんに感じて大満足です。もちろん、読んでいる大人たちだって…

ただ、「うんちっち」を読んだあと、これをすぐに読むのはちょっと…

世界観にやや矛盾があるからです。
フランスの作家だけあって、そこらあたりはおおらかなんですかねえ、と思うのは偏見かしら。

■リニューアルの謎
 
さて、この本も「うんちっち」同様、一旦絶版となって他社から再刊されました。
あすなろ書房版はタイトルが少し変わり、表紙の色も異なっています。



一瞬、別の本かなと思ったくらいですが、この変更は何故されたのでしょう。
たとえば、ついにオオカミが登場する、この場面。



PHP版は、「オオカミだあー!!」が、オオカミが脅かして言っているセリフにのようにも受け止められますね。
あすなろ書房版ではその曖昧さはありません。

でも
「オオカミだあー!!」と
「あっ、オオカミだー!!」
では、ちょっと読むときの声の出し方や受け止める側の気分が違うように思います。
「あっ、オオカミだー!!」
では、ニ文節になっていることで「怖さ」にワンクッション置いた印象があります。
表紙を見ても、
バックの赤も含めて、新版のほうがあっけらかんとして、迫力が低下したように感じるのはネコパパだけでしょうか。
テンコも、PHP版の紫色はとても気に入っているようです。

タイトルが書かれた「吹き出し」も変。
旧版では黄色、新版では青の白抜きですが、
旧版の方がアクセントが鋭く、迫力があると思います。また、位置が左側に変更されているのも解せません。
シモンの目線は右側に向かっているのですから、吹き出しも右側に置くのが自然なように思います。

もちろんこの改訂は、著者のブレイクさんに了解を得ているのでしょう。
あまりこだわらない人なのかな。
「原書はどうなっているんだろう」と思って検索してみたら、どうもこれらしいです。




なんだかシモンに遊ばれているような気分になってきました…

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コメント

コメント(4)
No title
ここに訳者の「ふしみみさを」さんのインタビューが載っています。
ttp://www.ehonnavi.net/specialcontents/contents.asp?id=48&pg=1
3/3には、『あっ、オオカミだ!』の表紙の絵や版組を一部原書と変えた理由などが書かれていて興味深いです。

みっち

2017/04/10 URL 編集返信

No title
> みっちさん
いやー素早い反応にびっくりです。興味深いインタビューでした。ふしみさんの工夫で場面構成までが変更されているのにびっくりです。
こうしたことは、作者と編集者の協力でなされることが多く、傑作絵本の業績のかなりの部分が編集者の手腕になることは案外知られていません。ふしみさんには編集者のセンスもあるようです。
ただ、絶版になった事情や、「オオカミだー!」再改訂の理由については述べられていないのが残念です。このあたりは、インタビュアーの知識やセンスにも大きく左右されます。「史料」となるような貴重な証言が引き出せる聞き手が、この業界ではなかなか少ないのです。

yositaka

2017/04/10 URL 編集返信

No title
昨秋児童文学学会時の森絵都さんとの対談のときも、編集さんが創作に大きく係わっているのを感じました。児童文学に顕著なのか? いやきっと大人の文学も編集者の関わりは大きかったと思います。野村美月の『半熟作家と“文学少女”な編集者(ミューズ)』を思いだしてしまいました。

シュレーゲル雨蛙

2017/04/10 URL 編集返信

No title
> シュレーゲル雨蛙さん
児童文学に顕著なのか?…おそらく。芥川龍之介や有島武郎、宇野浩二らの原稿にもバンバン手を入れた鈴木三重吉主宰「赤い鳥」以来、児童書における編集者の役割はとりわけ大きいものがあります。近年になって書籍の商品化が加速すると、そのウエイトはますます高くなっているのではないでしょうか。児童文学研究には「編集者論」が必要だと思います。

yositaka

2017/04/10 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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