Dancing!踊るクラシック





3月26日に蓄音機カフェ『エヂソン』でサロン・コンサート「クラシック編」が開催されました。
不肖ネコパパが解説を仰せつかり、当日までドキドキの緊張が続いていましたが、どうにか、無事終了できました。
参加者も定員越えの盛況で、年齢層も幅広く、
ご要望に応えることができたか心配です。にもかかわらず、温かい拍手をいただき、感謝感激…

ということで、今回は、この日のために用意した原稿を披露させていただきます。
もちろん当日はアドリブやその場で思いついたこともしゃべったので、実際とは多少違いますが、まあ、ご参考までに。

■ Dancing!
 
こんばんは。
ネコパパと申します。
今夜は「Dancing!踊るクラシック」と題して、
みなさまとクラシックの名曲を楽しんでいければと思っています。よろしくお付き合いください。
 
最初は、ワルツ王ヨハン・シュトラウス二世の代表的なオペレッタ「こうもり」序曲。舞踏会に向かう人々の湧き立つ気分を描いた名曲です。
演奏はユージン・オーマンディ指揮ミネアポリス交響楽団。1935年の録音です。
 
1.喜歌劇「こうもり」序曲(ヨハン・シュトラウス)
ユージン・オーマンティ指揮ミネアポリス交響楽団 録音1935 Victor
 
オーマンディは、ハンガリー生まれのアメリカ人指揮者です。
1960年代、アメリカではバーンスタイン以上の人気がありました。
明快で整った響きの中に、ヨーロッパの伝統にとらわれない新鮮さがあります。例えばワルツに入る部分で、ほとんどの指揮者が慣習的に入れている「間」をあけないで「すっ」と入るところ。
とってもおしゃれだと思います。


 
さて次は、チャイコフスキーのバレエ組曲「くるみ割り人形」から「花のワルツ」。
私たち中高年の世代にとっては、クラシック音楽に「嵌まる」きっかけを作った懐かしい曲かもしれません。
ハープの序奏、華麗なメロディー、
とにかく「かっこいい」。
そのかっこよさをこれでもか、というくらいに強調して演奏しているのが、ストコフスキ指揮フィラデルフィア管弦楽団です。
 
2.花のワルツ~「くるみ割り人形」組曲(チャイコフスキー)
レオポルド・ストコフスキ指揮フィラデルフィア管弦楽団 録音1926.11.48 Victor
 
いかがでしょうか。
1926年の録音とは思えない生々しい音でしたね。
マイクロフォンとアンプが録音の現場で実用化されたのは、この曲が録音された前年の19253月。
電気録音の時代の始まりです。
当店の誇るHMV1631927年の発売で、1931年まで製造されました。
電気録音に対応した最新機種でした。

ストコフスキは、ポーランド系のイギリス人。アメリカで人気を博し、レコードや映画にも意欲を燃やした才人です。オーケストラによる電気録音を行ったのも彼が初めてです。(1925年4月29日録音のサン・サーンスの「死の舞踏」でした)
1940年のディズニー映画『ファンタジア』では、
アニメーションとのコラボで、世界初の4チャンネルステレオを行っています。ここでも「花のワルツ」は演奏されていますよ。



 次はヴァイオリンのソロを聴きましょう。
アメリカのヴァイオリニスト、ユーデイ・メニューインの演奏で、スペイン舞曲第5番「アンダルーサ」。異国情緒あふれる一曲です。
 
3.スペイン舞曲第5番「アンダルーサ」(グラナドス/クライスラー編曲)
ユーディ・メニューイン(ヴァイオリンファーガソン・ウェブスター(ピアノ)録音1938.3.21Victor
 
若々しくつややかな音色ですね。メニューインが20歳のときの録音。
彼のデビューは7歳。初めての録音は11歳。20歳で既に既に膨大な録音のある「巨匠」でした。1951年から5回来日して、日本でも親しまれたヴァイオリニストでしたが、大戦中には赤十字の慰問活動に参加して500回以上も弾いたダメージもあり、戦後は衰えが目立ったのも確か。これは彼の全盛期の演奏を伝える一枚です。


 
次は歌を一曲。
ヨハン・シュトラウス二世の弟、ヨゼフ・シュトラウスのワルツ「天体の音楽」。
1931年のドイツ映画『会議は踊る』のテーマ曲としても有名です。もともとはオーケストラ曲ですが、当時は流行曲に歌詞が付けられて歌われることもよくありました。
ロッテ・レーマンと並ぶドイツの名ソプラノ、エリザベト・シューマン、1934623日の録音です。

 
4.天体の音楽(ヨゼフ・シュトラウス)
エリーザベト・シューマン(ソプラノ)レオ・ロゼネック指揮ロンドン交響楽団  録音1934.6.23 Victor
 
次はチェロを聴きましょう。
バッハの無伴奏チェロ組曲がなぜ「ダンシング」なのか、と思われるかもしれません。
実はバロック時代の「組曲」というのは、前奏曲に、何曲かの舞曲がつづく形式です。
今からお聞きいただく「ジーグ」は8分の6拍子の、イギリスやアイルランドの民俗的な舞曲の形式で、速いテンポで一気呵成に演奏されます。
演奏は、チェロをソロ楽器として確立させたスペインの名チェリスト、パブロ・カザルス。193863日にパリでの録音。
 
5.ジーグ~無伴奏チェロ組曲第6番(バッハ)
パブロ・カザルス(チェロ)録音1938.6.3Victor
 
次はピアノ・ソロを2曲。
SPの時代、ピアノは、録音が難しい楽器でした。それもあって積極的に録音するピアニストも少なかったのですが、ルービンシュタインはアルフレッド・コルトーと並ぶスター・ピアニストでした。
「火祭りの踊り」は彼がアンコール曲としてよく取り上げていた曲で、1947年のアメリカ映画『カーネギーホール』では、彼が両手を高く上げて鍵盤を叩きながら演奏する姿を見ることができます。
 
6.火祭りの踊り~「恋は魔術師」(ファリャ)
アルトゥール・ルービンシュタイン(ピアノ録音1930.7.22  Victor
 
次の曲はショパンの「華麗なる大円舞曲」作品18、グラン・ヴァルス・ブリランテ。ショパンが自分でつけたタイトルです。
ピアノはロシア生まれの、アレクサンダー・ブライロフスキー。
ショパンのワルツを最も得意にした人だそうです。語り口が穏やかで、ちょっと脱力して弾いている。「華麗」というよりも「枯れた」味わいを持った演奏だと思います。
 
7.  華麗なる大円舞曲(ショパン)
アレグザンダー・ブライロフスキー(ピアノ録音1938.11.24Victor


 
クラシックファンの楽しみは「聴き較べ」です。
同じ曲のレコードやCDをいくつも買うので、家族に顰蹙を買う。それに耐えるのがファンの宿命みたいなもの。そんなマニアックな楽しみにちょっとだけお付き合いください。取り上げる曲はワルツの中のワルツ、「美しく青きドナウ」。
最初は、カラヤン指揮ウィーン・フィル。録音場所はテレビでもおなじみ、ニューイヤーコンサートの会場、楽友教会大ホール。19461030日、ちょっと古い録音です。
 
8.  美しく青きドナウ(ヨハン・シュトラウス)
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団録音1946.10.30HMV(Columbia)
 
いかがでしょうか。
カラヤンの個性であるレガート奏法、メロディの切れ目を輪郭を崩して一本に繋げていく解釈が聞き取れますね。でも、緊張感に乏しい、暗い演奏にも聴こえます。これはカラヤンがナチス裁判の被告として告訴され、演奏が禁止されていた時期の録音なのです。
ではもう一枚。「花のワルツ」と同じストコフスキの指揮で聴いてみましょう。彼自身の編曲で、全曲を半分以下にカットした演奏です。
 
9.美しく青きドナウ(ヨハン・シュトラウス/ストコフスキ編曲)
レオポルド・ストコフスキ指揮フィラデルフィア管弦楽団 録音1926.3.16Victor
 
いかがでしょうか。全体的には速いテンポですが、ここぞというところで遅くしたり、もうやりたい放題ですよね。同じ曲でもこれだけ大きな違いがある。それがクラシックファンの欲望を掻き立てるのです。お分かりいただけましたか。いや、無理ですね。

さて少し時間が余りましたので、アンコール曲を1曲。オーケストラの演奏会でもアンコール曲の定番と鳴っている曲のひとつです。ブラームスの「ハンガリー舞曲第6番」。より有名なのは「第5番」ですが、「第6番」もとてもいい曲ですよ。

★アンコール曲
10.  ハンガリー舞曲第6番
レオ・ブレッヒ指揮ベルリン国立歌劇場管弦楽団 録音1929Victor

そろそろお時間となりました。
Dancing!踊るクラシック」今夜はこれでお開きといたします。
これからも「エヂソン」をよろしくお願いいたします。



 

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コメント

コメント(11)
No title
おはようございます♪♪

大役ご苦労さまでした。

しかしSPとは思えないくっきり、スッキリの
音ですね。クラシックは良く分かりませんが、、
1920年前後の音とは思えない 鮮度 があ
ります。

私も銀座の蓄音機専門店で聴いた ギター のあの毛羽立つ様なザックリとした音を目指していました。

いま ここで聴いた音はまさしくあの時の音です。

不思議と自作アンプでも古典回路の方がこのザックリ感が出る様な気がしてしょうがありません。

何と言うか、、、、心の中に浸み込んで来ると言う
か、、、スイマセン、、上手い表現が見当たりません、、、。

何時もナイス、ポチッ、コメありがとうございます。


ではでは

Yさん

2017/03/28 URL 編集返信

No title
キッチリ原稿を用意して臨まれたんですね。
来店客の皆さんは満足されたことと思います。
あまりに上手にこなしてハードルを上げてしまうと、次回担当の人が困ってしまいますよ。(もう困っているかも?)

不二家 憩希

2017/03/28 URL 編集返信

No title
> Yさん
今回は曲がわかりやすく、楽器編成が多彩で、音の鮮度が良いもの…という観点で選びました。といっても、限られた中での選択ですが…お客様には喜んでいただけたようで、それは再生中の「気配」でわかりました。「毛羽立つ様なザックリとした音」…まさにそれが、蓄音機の魅力ですね。

yositaka

2017/03/28 URL 編集返信

No title
> 不二家さん
今回原稿を用意したのは、際限なく思いついたことを喋らないための準備です。
ちょっと興味を引くような情報提供かできれば、あとは音楽そのものが語ってくれると思ったのです。それでも、その場になってみると、これより少し、喋りすぎた気がします。
なお、お店の皆様は、ネコパパなど足元にも及ばない、見事な弁舌の持ち主ばかりですから、全く心配はありません。

yositaka

2017/03/29 URL 編集返信

No title
> チャランさん
「今回のHMV163絶好調」…まったくそのとおりで、カザルス、メニューイン、ルービンシュタインはまさにHMVによる録音。
録音側と再生装置の制作側の思惑が見事に一致したと感じられる再生音だったと思います。
ストコフスキの「青きドナウ」の裏面は「ウィーンの森の物語」。こちらは一層やりたい放題の演奏でしたね。今回は「聴き比べ」の関係でパスしましたが、ぜひ別の機会に皆様にも聞いていただけたらと思っています。

yositaka

2017/03/29 URL 編集返信

No title
ネコパパさん、熱い選曲と解説お疲れさまでした。
私の隣の20代と後ろの80代の青年の皆さん手違いでコンサートの後に配られたプログラムを「私も下さい」と読んでから持って帰られました。
機械屋の視点から今回のHMV163絶好調でしたね、ダイナミック・レンジの広いクラッシックを歪みを感じさせ無く再生していました。
これは、録音技師が、曲と装置を良く理解していないと出来ないと思います。又欧羅巴と米国の音創りの違いも良く感じられました。
ここまでくるとエヂソンさんに悪いけど同じリエントランスホーンでウッドのクレデンザと聴き比べをしたいです。
蛇足9.ストコフスキ指揮のB面を聴いたら・・・フフフここまでやるかですね。
お誕生日プレゼントありがとうございました。感謝感謝感謝

チャラン

2017/03/29 URL 編集返信

No title
いつの間にか入れ替わってしまっていますが、上記チャランさんのコメントへのご返事が、そのまた上のコメントです。
チャランさん、贈ればせながら、ハッピーバースデイ!

yositaka

2017/03/29 URL 編集返信

No title
テーマをきちんと設定してお話しする、いい企画ですね。小生、以前、一度だけ音楽でしたことあります。テーマは「俺の友だちの妹がこんなに可愛いわけがない」でした。

シュレーゲル雨蛙

2017/03/29 URL 編集返信

No title
> シュレーゲル雨蛙さん
ありがとうございます。おかげで少しは余裕をもって話ができたんじゃないかと思います。
雨蛙さんの話されたテーマ、内容が全く伝わってこないところが凄いですね。

yositaka

2017/03/29 URL 編集返信

No title
カザルス以外、ぼくは聴いたことがない演奏ばかり(聴いたことあるかなと思ってもそれらは後年の再録音)ですが、勝手な先入観とこの記事で当日の熱くて密度の濃い会の様子が伝わってきました。定員超えで年齢層も幅広いというのがいいですね。こちらでおこなわれる蓄音器コンサートでも学生さんのような若い方をチラホラ見かけます。ぼくも数枚持っていますが、電気再生なので、こういうイベントの機会に蓄音器の音を楽しんでいます。
この解説は何回周期でご担当されるのでしょう?

Loree

2017/04/02 URL 編集返信

No title
> Loreeさん
蓄音機再生を自宅で取り組む余裕はまったくないのですが、
「エヂソン」で知り合った皆様のコレクションに乗っかって、自分勝手なプログラムでやってみました。
今後の予定はまだ未定ですが、たぶんこれで終わりということにはならない雰囲気です。決定次第、記事でお知らせしようと思っています。

yositaka

2017/04/02 URL 編集返信

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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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