小林研一郎の熱演を聴く



日本フィルハーモニー交響楽団第52回さいたま定期演奏会

グリーグ:ピアノ協奏曲
チャイコフスキー:交響曲第5番
終演後、小林研一郎が短いスピーチ、そしてアンコール曲として『ダニー・ボーイ』を演奏。


■指揮:小林 研一郎
■ピアノ:小林 亜矢乃
■2009年3月27日(金)19:00開演 終演21:00
■大宮ソニックシティ 大ホール(JR大宮駅 西口徒歩3分)

炎のコバケン、ここにあり。

小林研一郎のチャイコフスキー第五といえば、人も知る、彼のもっとも得意なレパートリーだ。
その熱演ぶり、予想以上に、圧倒的。
なにに圧倒されるのか。それは一小節ごとに揺れ動いていると思わせるほどの、テンポ。響きや音色まで一瞬に変わってしまう、曲想の描き分け。
この曲では、全ての音が自分のものになっているのだろう。
そして、小林にはそれをオーケストラの楽員に徹底的に伝える能力があるのだ。

一方のグリーグでのピアノ、小林 亜矢乃の演奏がこれまた個性的。
遅めのテンポを大きく揺らせ、弱音を主体に、デリケートに歌わせていく。それにあわせる、小林研一郎の指揮も、ピアノを上回る弱音を要求する。
今この場で交わされているような、ピアノとオーケストラの絶妙な対話を繰り広げていく。

両曲とも、「ロマンティックに解釈された音楽」で、これらの音楽にはぴったりのものということもできるだろう。

日本フィルは日本のオーケストラ活動の象徴ともいえる存在で、栄光の歴史と、分裂崩壊の危機を乗り越え、苦難の道を歩んでいる。これほど「物語」に満ちた音楽集団も少ないだろう。

しかし、当夜の演奏からは、疲れが見えた。
グリーグでは、個性的なピアノに合わせきれず、特に管楽器の出にズレが目立っていた。
チャイコフスキーでも、決死の熱演ではあるが、金管の不調、ファゴットの音程、全員のフォルテでの音の濁りが、やはり耳につく。
弦楽器のアンサンブルも、きれがあるとは言いがたい。
地元名古屋フィルとの演奏は何度も耳にしているが、あまり感じないことだった。
この、歴史ある日本の名門オーケストラが?

日本フィルの演奏会は、年間160回を超えるという。低賃金で生活も大変なのだそうだ。その上、この演奏回数だ。しかしその苦労が、音として感じられてしまうのには、いささか参った。

同じコンビで、別の演奏会を聞いた人のブログにも

-満員のせいかオケの音が少しこもって聴こえましたが、そんなことを吹き飛ばすかのような熱演でした。

という一文があった。その音の「こもり」が私には疲労と聴こえたのかもしれない。

会場の大宮ソニックシティ、朝比奈隆指揮大阪フィルのブルックナー、交響曲第四番『ロマンティック』の録音http://www.hmv.co.jp/product/detail/2648219も行われたところ。ならば、と期待していた。
私の座席は二階席左寄り、15列。真ん中あたり。
弱音の一つ一つの粒立ちまで鮮明。2500人収容の巨大空間だが、音の通りは良好。グリーグでは、弱音主体なのに、音の粒立ちがよく、演奏の意図がよくわかった。
アンコール前の小林研一郎の声もしっかりと聞こえてくる。
響きは少なめ。ほぼ満席なので、乾き気味の音になるのは仕方がないかもしれない。しかしフォルテではかなり混濁する。当夜だけの印象だが、総合的に見て、クラシック向けとはいえない感じ。


埼玉県、大宮。
「店長」の居住するW市は、ここから電車で二回乗換えで30分くらいのところ。
演奏会が終わって居室に戻ると、10時。
彼女は、職場からまだ帰宅していない。

特技を生かした仕事とはいえ、その分、求められる水準は高く、疲労も多く、収入は少ない。オーケストラも、デザインも、その点では共通するか。

しかし、それは幸せを生み出す仕事なのだ…。

関連記事
スポンサーサイト



コメント

コメント(0)
コメント投稿
非公開コメント

プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

ご訪問ありがとうございます

月別アーカイブ

検索フォーム

QRコード

QR