オルカ・フィルのマーラーを聴く

オルカ・フィルハーモニー管弦楽団 第10回記念演奏会



 
日 時     2017 1 29 () 開演時間 1600 (開場1530
会 場     愛知県芸術劇場コンサートホール
指 揮     角田鋼亮
独 奏     長尾春花プロフィール
曲 目    
A.グラズノフ ヴァイオリン協奏曲
G.マーラー 交響曲第5


今年最初の演奏会鑑賞は、初めて聴くアマチュア・オーケストラ。
曲目も意欲的だし、最近急速に頭角を現している指揮者にも期待が膨らむ。
聞いた感想は…大満足でした。
どちらの曲も、実際よりも短く感じたくらい。
近頃は集中力が低下して、ちょっとでもつまらないとたちまち睡魔に襲われるネコパパも、今夜はすっかり魅了されてしまった。
 
まず、グラズノフヴァイオリン協奏曲

小柄なソリスト、長尾春花のヴァイオリンは、透明感と独特のまろ味があって、心地よい。フレーズの頭を強めるような共感音圧はなく、優等生的とも言えるが、掠れや滲みがなく、楽器から存分に自分の音を出し切っている爽快感はやはり素敵だ。
オーケストラは少なめの人数に押さえているけれど、最初の一音からはっとするような冴えた音が飛び出す。
この曲は伴奏部のウエイトも高く、ハープ、トランペット、ホルンが目立った動きをする。オルカ・フィル、よく伸びた音を難なくさらりと出す。相当に技量の高いメンバーたちである。

このヴァイオリン協奏曲、あまり演奏されないようだけれど魅力的な曲だ。民族的な響きに満ち、メロディアスで、陰鬱な感じは皆無。特に田舎のお祭りのようなフィナーレは愉しさの限りで、人気作品のチャイコフスキーの協奏曲の陰鬱さとつい比較してしまう。
満場の拍手に答えて、長尾春花はかなり長い無伴奏曲をアンコール。ネコパパ、曲目確認を失念してしまった。
超絶技巧を要する曲も、すべての音がなりきっているのに驚いてしまった。期待の若手である。

休憩後は、マーラー交響曲第5が演奏された。

テンポは速めで、フレーズも短め。曲想に応じた緩急やダイナミックレンジをあまり肥大させず、全曲をきりっと小さめに造形されたマーラーである。
後期ロマン派というより、やや古典派に接近した表現と感じられる。
造形を引き締める一方で、フレーズ内の細かな緩急や強弱には心配りが行き届き、こまかく聴けば聴くほど面白い。

指揮者の角田鋼亮、マーラーを得意としているだけあって、曲を完全に手中にしていることがわかる。長身をフルに使った指揮ぶりもかっこいい。
特にすばらしかったのは第3楽章。
弦がピチカートでワルツ風のリズムを刻み始めてからは、音彩も一段と鮮やかに。
テンポの伸縮も、遅く入って一気に加速する思い切りのよさが快感で、すっかり聞き惚れてしまった。
有名な第4楽章アダージェットでは、速めのテンポでさらりと流しつつ、ハープをくっきりと浮かび上がらせ、最後の部分で押さえていた感情を解き放つ。

この曲は、現在最も人気のあるマーラーの交響曲のひとつ。
3楽章を中心に配置されたシンメトリーな構成で、暗い情熱が渦巻く前半、情感と快活が基調の後半とが、くっきり対比される。
でも、久々にじっくり全曲を聞いて、この作曲家特有の、自在で純朴な音の戯れがもっとも素敵なのは第3楽章、次いでは第4楽章ではないか、と改めて思った。
別の言い方をすると、他の楽章は、ちょっと背伸びして「拵えた」部分が多いのではないか…あくまで個人的感想だけれど。
 
オーケストラは、トゥッティの強奏部分では、地の底まで踏み抜くような強靭さはなく、アンサンブルも若干綻びが感じられる。しかし弱音部分での、細やかで、室内楽的な透明度の高さは出色。
小編成のグラズノフから、大編成のマーラーに代わってもそれが変わらないのは偉としたい。これは、創設以来、同じ指揮者と演奏を続けてきた成果だろうか。

ぜひ次回も拝聴したい。



 
オルカ・フィルは20068月、名古屋大学交響楽団OBを中心に結成。第1回演奏会でチャイコフスキー交響曲第5番に取り組んでいたことから、当初は「チャイ5オケ」の愛称で呼ばれていたが、20071月、名古屋の象徴「鯱」から名前を取り、オルカフィルハーモニー管弦楽団と改名。2007729日、中京大学文化市民会館オーロラホールにて、指揮者に角田鋼亮氏、ピアノに田村響氏のお二人をお迎えして、第1回演奏会を開催。好評を博した。その後も毎年一回、定期的に演奏会を開催している。ー同団ホームページより
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コメント

コメント(2)
No title
オルカ=シャチでしたか。
さて。マーラーの第5が5楽章のシンメトリー構成だということは、亀山郁夫さんのカラマーゾフの兄弟第5巻の解説読んで、はっとしたことでした。亀山訳のカラマーゾフが5分冊に文庫化されたのは大切な意味があったんだと。

シュレーゲル雨蛙

2017/02/06 URL 編集返信

No title
> シュレーゲル雨蛙さん
亀山郁夫さんのカラマーゾフの兄弟には、そんな隠れた秘密があったのですか。編集部もそれを容認する度量があったということでしょう。私は米川正夫訳の河出世界文学全集で読みました。三巻本で持ち運びに不便でしたねえ。
マーラーの5番は、1.2楽章と3.4楽章はくっついている気がしていましたが、演奏会でもアタッカでした。実質3楽章の曲と見てもよさそうです。
鯱だからオルカって…魚虎なら、シャチホコ・フィルですよね。

yositaka

2017/02/06 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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