ドゥダメルのニューイヤーコンサートをCDで聴く

2117年のウィーン・フィル・ニューイヤーコンサートのCDが届いた。
本番の三週間後に世界一斉に発売。いつもながらの素早さである。




録画で視聴した感想と、当日の曲目はこちら。

音質は、ずっと良かった。
ダイナミックレンジが幅広く、音の輪郭線が明瞭。隅々まで聴き取れて気持ちがよい。
でも演奏の印象が大きく変わることはなかった。
むしろ、違和感が大きくなったかもしれない。

まず、音のバランスが弦楽器中心ではなく、打楽器、金管が大きく聴こえたこと。
テレビ視聴の時は録音のせいかもしれないと思ったが、どうも、もともとこういう音作りのようだ。ウィーン・フィルの、魅惑的なヴァイオリンを前に出そうとする意図は、ドゥダメルにはなかったということだろうか。

あくまで印象だが、音量は相当大きかったと思う。
打楽器、金管を思い切って強奏し、豪快な響きを出しているためだ。ワルツ「メフィストの地獄の叫び」序奏部や「スペードの女王」序曲の主部ではそれが生きて、抜群の爽快感。
音の強弱をたっぷりつけているのも、CDで聴くと手に取るように分かる。
今回のプログラムに、行進曲、ポルカ・シュネル、ギャロップ等賑やかな曲が多いのは、きっと、このようなドゥダメルのスタイルを生かすためだったのかも。

一方、繊細優美なヨゼフの「ナスヴァルトの娘」や、ヨハン二世の曲の中では室内楽的な曲想の「千夜一夜」などは、どうもあっさりしすぎて、物足りない。
この二曲はTVよりもCDで聴くほうがずっといいだろう、と期待していたのだけれど。
若いドゥダメルには、楽器の一節にぞくりとするようなニュアンスを込めたり、ウィーン風の、くるりと歌って、そっと息を抜くような呼吸感や、千鳥足に揺れて崩れるようなリズムの表出は、やはり難しかったのかもしれない。

でも、それを補うのがウィーン・フィルだろう?
という気がしなくもない。
ウィンナ・ワルツの演奏法を熟知していながら、あえて指揮者の棒に従って、無粋ぶりを楽しんでいる、とか。
それは下種の勘繰り?
でも、ネコパパは、先日視聴したズビン・メータの日本公演でのワルツの演奏ぶりにも同じことを感じた。

結局、通して聴いてみると、騒がしくて短い曲が次々に出て、景気は良いけれど、どうも琴線には触れない…
ドゥダメルには経験値がない。
でも、彼の未来に期待して人選した以上、その「経験値」を高める仕事にするのもオーケストラの役割と思う。
ウィーン・フィル、こんな演奏を続けているうちに、ウィンナ・ワルツの演奏のツボを見失ってしまうのではないか、と心配になってしまった。

ところで、来年の指揮者はリッカルド・ムーティだそうである。

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コメント

コメント(8)
No title
去年のうちから告知はありましたね。最初は映像ソフトを思ったのですが、ここは例年通りエアチェックをして、音だけのCDを買ってみることにしました。しかし、他の商品との兼ね合いで先送り状態です。VPOの演奏ぶりのご懸念ですが、オケ自体の質の変化もあるのじゃないでしょうか。かつてはウィーン周辺出身の男性奏者という厳格な制限があったのですが、今はそれはかなり緩和されていることも関係しているではないでしょうか。ボスコフスキーあたりが指揮していた頃を懐かしむ人も多いかもしれません。

SL-Mania

2017/01/24 URL 編集返信

No title
> SL-Maniaさん
オケ自体の質の変化…たしかにそれはあると思います。でも、団員でつくったアンサンブル、例えばウィーン・ヴィルトゥオーゼン、ウィーン・リング・アンサンブルといったグループが指揮者なしで演奏するライヴや音盤に接すると、彼らが未だ「ウィンナ・ワルツ」の演奏法を熟知していることが伝わってくるのです。それなら本体でもその気になればやれるはずと思うのですが。近年でもウェルザー・メストが指揮したときには、生粋の響きを出していたように思います。

yositaka

2017/01/24 URL 編集返信

No title
こんにちは。生中継の録画を忘れ再放送で録画して聴きました。
最近、ボスコフスキーの8枚組CDのBOXを購入したばかりですが、やはり気のせいかボスコフスキーやクレメンス・クラウスあたりを好んで聴いてしまいます。
団員でつくったアンサンブルの演奏は持っていないので、聴いてみたいですね。
若いドゥダメルの今後の活躍を期待したいところです。

HIROちゃん

2017/01/24 URL 編集返信

No title
> HIROちゃんさん
ボスコフスキーやクレメンス・クラウス…歴史的な遺産ですね。クラウスの演奏は阿吽の呼吸というか、無作為の作為というか、ちょっと再現困難な気がしますが、ボスコフスキーはずっと地に着いた、舞踏感覚の典型で、これこそ受け継いでほしいものです。
もっとも私の思うワルツの理想像は、フランツ・バウアー=トイスルがウィーン・オペラ舞踏会管弦楽団を振った2枚なんですが…

yositaka

2017/01/24 URL 編集返信

No title
ウィーンフィルという一流の芸術家集団でも組織ですから、指導者(指揮者)に従う、と言うことなのでしょう。
会社組織等と同じ考え方です。
フォローとかは出来てもしないと思います。
そのあたりはドライに割り切っている。
そこがジャズやロックと違う点だと思います。

今年のニューイヤーコンサートはもう一つだったなぁと感じています。

不二家 憩希

2017/01/24 URL 編集返信

No title
> 不二家さん
建前はそうらしいのですが、先日見た1989年のカルロス・クライバーの映像で、指揮者の指示をはっきり無視する場面を目撃したり、中継番組でのライナー・キュッヒルの不敵な発言から類推しても、簡単に指揮者の思い通りになるオーケストラではない気もします。
彼らの音盤をいろいろ聞いていると、気に入らない指揮者の時は敢えて癖を強調するような意地悪さを感じることがあります(ハチャトゥリアンや初期のショルティなど)。なかなか喰えない集団です。
…まあ、プライド高き集団であるオーケストラには、もともとそういうところがあるのかもしれませんが。

yositaka

2017/01/24 URL 編集返信

No title
なるほど、そうなんですね。

欧州のクラシック音楽エリートのいやらしさみたいなものを強く感じさせる楽団というイメージは残念ながらありますね。

不二家 憩希

2017/01/24 URL 編集返信

No title
> 不二家さん
そういうプライドとか、喰えなさが独自の音を保つ底力にもなるのでしょうが…聴き手としては、全力投球することがプロの証、彼らの出すぎりぎりの音が聴きたいといつも思っています。

yositaka

2017/01/24 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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