カルロスのワルツ、小澤のワルツ

この冬初めての雪。
ネコパパも炬燵で丸くなりたい…でも今日は、市の図書館で地域の有志による音楽鑑賞会のある日だ。

いつもは自転車で行くのだが、今日は愛車で。
会場は図書館の視聴覚室。音響はあまりよくない。参加者は10人足らずで、ネコパパはここでは一番の若手である。
講師は近隣の退職校長で御年87歳。矍鑠として名曲を語る。会員たちは、音楽よりもこちらが楽しみのようだ。
手書きのレジュメも、矍鑠たるもの。



さて、きょうのメニューは新年第1回ということで、ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートを二つの映像作品で楽しむというもの。

ひとつは、1989年、指揮はカルロス・クライバー




もう一つは2002年、指揮は小澤征爾




どちらも懐かしい演奏で、CDは時々聞いているが、映像付きは久しぶりだ。もちろん大いに楽しめたのだが、興味深い発見がいくつかあった。

まず指揮。カルロスの演奏は例によって優雅なものだが、全体の流れはオーケストラに任せ、巧みな棒さばきでフレーズの伸縮や音の出し入れを実に細かく指示していることが分かる。
面白いのは、ウィーン・フィルの反応。
指揮者の動きが雄弁な音楽を物語るのに反して、奏者は必ずしもその動きに敏感に反応していない。全体としてはカルロスの音楽になっているが、細部は自分たちのベースを決して崩していない。



「こうもり」序曲は、カルロスの得意曲で、バイエルン国立管弦楽団との来日公演や、バイエルン国立歌劇場でのオペラ映像も残されている。これらの快演に比べると、このウィーン・ライヴ、ちょっとこなれきっていない感じがしていた。
今回、その理由がなんとなくわかったような…思えば1982年のキャンセル騒ぎで出入り禁止になって6年目、久々のステージである。
楽員たちは指揮者への警戒心をまだ解いていなかったのかもしれない。

一方の小澤征爾。
彼は細部の表情にはあまりこだわらず、全体の流れと強弱を大きく捉えて指揮している。細かいところはオーケストラにすっかり任せていて、快適に流れるが、音角の節目節目をキメたり、ここぞというところで感情移入するという曲へのこだわりはあまり感じられない。
表情も動きも硬い。なんだか緊張して、肩に力が入っているように感じる。プレッシャーもあったのではないだろうか。


老先生は
「カルロス・クライバーが行書の演奏とすれば、小澤征爾は楷書でしょうか」
とコメントされていた。含蓄ある言葉だ。

もうひとつ、興味深かったのは音質だ。
近頃のこのコンサートの録音は、個人的にヴァイオリンなどの弦楽器がとてもか細く聞こえ、隔靴掻痒の思いが募るのだが、
1989年と2002年の二つの録画を比較しても、その違いは結構わかるのではないだろうか。
前者は、弦楽器が厚みのある音でしっかり収録され、微妙な運指の強弱までが聞き取れる気がするのだが、後者はなんとなく手応えのない音になっていると感じる。
演奏のせいだけではない。録音に対する考え方が、どこかで変わった気がする。

ネコパパには、どうも、古いほうが演奏の魅力も、音そのものの魅力も大きいように感じるのだけれど。
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コメント

コメント(4)
No title
こんばんは

音楽のリズムって民族の背景が出るのでしょうか?

リズム感の良い黒人ダンサーに八木節を躍らせた
所、、、まったくダメだった。と言うのをラジオ
か何かの音楽番組で言っておりました。

ワルツのリズムは乗馬のリズムだって聞いた事が
ありますが、、、詳しい事は分かりません。

でもワルツって優雅でいいですね。

ではでは

Yさん

2017/01/14 URL 編集返信

No title
> Yさん
それぞれの民族の血が騒ぐリズムというのがきっとあるのでしょう。日本人はワルツじゃないでしょうね、多分。
でも、それぞれの民族がどんなリズムに乗って生きてきたか、生きているかをしることは、とっても素晴らしいことだと思いますよ。そこから、言葉や文化の違いを越えた共感が生まれてくる気がします。

yositaka

2017/01/14 URL 編集返信

No title
拝読して、思い出したことがありました。カルロスの若いころの練習風景のヴィデオです。ネコパパ様も御存じでしょうが、こうもり序曲を南西ドイツ放送響を相手に稽古つけていました。カルロスが細かく細かく解釈・説明して、練習して、いざ本番になると、オケは我が道を行くという……。
さて。西洋は先打ちリズム。日本のリズムは、奄美・沖縄を除き後打ちリズム。フォークで挫折した岡林が、日本では「エンヤトット」でなければ、と変身したのがこのリズム感でした。沖縄出身の歌い手さんのリズム感が、西洋的だという不思議。ワルツの話ではないですが。

シュレーゲル雨蛙

2017/01/17 URL 編集返信

No title
> シュレーゲル雨蛙さん
あの練習風景は見ましたよ。言葉を尽くして懇願するように自分の表現を受け入れさせようとしている。あれではレパートリーの拡大は困難だったでしょう。
地域や民族によるリズム感の違いも面白い研究テーマですね。同じ日本でも、山の民、海の民では異なるリズム感があったのかもしれません。

yositaka

2017/01/17 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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