静かな勇気を与えてくれる、ラトル、BPOの「第九」

ラトル&ベルリン・フィル201510月ライヴ~ベートーヴェン交響曲全集より



交響曲第9番ニ短調 Op.125『合唱』


アンネッテ・ダッシュ(ソプラノ)
エーファ・フォーゲル(アルト)
クリスティアン・エルスナー(テノール)
ディミトリー・イヴァシュシェンコ(バス)
ベルリン放送合唱団
録音:2015101016日ベルリン、フィルハーモニー(ライヴ)
24bit/192kHz
録音

Berliner PhilharmonikerCD KKC-9151
 
年の瀬に第9を聞きました。

本日、12月30日にBSフジで放送予定のライヴ映像と、同時に収録されたものと思われます。
この番組と、NHK交響楽団の演奏は録画して後日拝聴予定。
年を越してしまうので、どうせなら年末にいちど、ということでCDで聴いてみました。
 
ラトルにとっては二度目の全集。
今回はピリオド奏法ではなくモダン奏法で、という噂だったので、そこに期待していました。

拝聴した感想を一言で言えば、精緻、自在で、力んだところが一切ない、完成度の高い演奏と思いました。
第1、第2の両楽章は、まだピリオド奏法の残滓を感じるところがあり、各声部が対等に、しなやかな自在さをもって進められます。
第2楽章では例の「硬いバチ」のティンパニの音がいささか私には気に触り、
人数が少ないせいもあるのか、強音で盛り上がる箇所で腹に応える底力があまり感じられないことも、個人的には物足りない気がするのも事実でした。

素晴らしいのは第3楽章。

ゆったりしたテンポで、湧き上がるように演奏されたAdagiomolto e cantabile

ここではベルリン・フィルの各パートの自発性が最良の姿で発揮され、フレーズの一つ一つが新鮮に響きます。
この澄んだ水のような質感は、ちょっとほかの演奏では聞けないものでしょう。

そして…一転して前のめりの速いテンポで開始されるフィナーレ。独唱者たちも意識的にか、出を焦るように心持ち早めに飛び出してくる。聞き手が構える暇もなく楽想が生み出されてくるような感覚も新鮮です。
ソリストも合唱も「力んで歌い上げる」唱法を排して、全員がリートを歌っているように、そっと優しく語りかけてくる。
第1楽章ではいくぶん物足りなさを感じさせた「抑えた」演奏姿勢が、フィナーレでは全く物足りなくない。
それどころか、音楽の新しい魅力に光を当てているのです。

外側から煽り立てるような、カラ元気の励ましではなく、人々の疲れ切った体と心にそっと寄り添い、静かな勇気を与えてくれるような音楽。
それが、ラトルとベルリン・フィルが作り上げた新しい「第9」の姿でした。
いろいろな意味で「煮詰まった」感のある2016年の日本を見送るには、こんな音楽が最もふさわしいのかもしれません。

ネコパパ、とても気に入りました。


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コメント

コメント(7)
No title
最近年末に「第九」聴かなくなっていましたが,心に染みます~。

jazzclub

2016/12/31 URL 編集返信

No title
> jazzclubさん
意識して年末に聞くと、かえって旬のものというイメージが沈着してしまうので、こだわらずに聞いているのですが、こういう「イケイケ」でない演奏なら、年中でも聞けそうです。問題はセットもので高価なこと。実はこれ、「借り聴き」なんです。

yositaka

2016/12/31 URL 編集返信

No title
元旦、TV放送を録画で視聴しました。音声が奥に引っ込んでいて、残念ながら記事に書いた演奏の魅力はあまり伝わってきませんでした。
楽章間にCMが入るのも興ざめでしたし。
演奏前のドキュメンタリーは、ラトルの楽曲解説が面白く、興味深い内容だったのですが…

yositaka

2017/01/01 URL 編集返信

No title
我が聴き納めは本当に久しぶりのワルターの第9でした。
ラトル、今度聴いてみます。

シュレーゲル雨蛙

2017/01/07 URL 編集返信

No title
> シュレーゲル雨蛙さん
年末に聴いたワルターは「第5」でした。某グレヒ店で入手した10インチ盤で、ステレオだったのに驚きました。
「第9」はライヴ盤も含めると4種類のワルター盤がありますが、お聴きになったのはステレオ盤でしょうか。私はニューヨーク・フィルとのモノラル盤が好きなのですけれど。

yositaka

2017/01/07 URL 編集返信

No title
コロンビアとのステレオです。これ1つしか持っていません。いろいろあるのですね。

シュレーゲル雨蛙

2017/01/08 URL 編集返信

No title
> シュレーゲル雨蛙さん
モノラルとステレオでは大きく解釈は変わりませんし、演奏味一長一短なので、これは好みでしょう。
ワルターはこの曲ではライヴとセッションとの違いが大きく、2種類のライヴはものすごく速いテンポの爆演です。ワルターの芸風の幅の広さを伝える興味深い記録です。

yositaka

2017/01/08 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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