硬派のコンチェルト


TIME/LIFE Home Classical Collection 協奏曲選集

■タイム・ライフ
■出版年不明(1968年頃)
■原盤 ドイツ・グラモフォン
■10LP+ボーナスLP

J・S・バッハ 二つのヴァイオリンのための協奏曲 
・イーゴリ・オイストラフ、ダヴィット・オイストラフ(Vn)ユージン・グーセンス指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 

ヴィヴァルディ ピッコロ・フルートのための協奏曲ハ長調 
・ハンス=マルティン=リンデ(sop.Ric) ヴォルフガング・ホフマン指揮 エミール・ザイラー室内管弦楽団

ヘンデル ハープ協奏曲 
・ニカノール・サバレタ(hp)ポール・ケンツ指揮 ケンツ室内管弦楽団

ハイドン トランペット協奏曲 
・アドルフ・シェルバウム(tp)クリストフ・ステップ指揮 北ドイツ放送交響楽団

モーツァルト ヴァイオリン協奏曲第五番『トルコ風』 
・ウォルフガング・シュナイダーハン(Vn)ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮 北ドイツ放送交響楽団

モーツァルト フルートとハープのための協奏曲 
・カールハインツ・ツェラー(fl)ニカノール・サバレタ(hp)エルンスト・メルツェンドルファー指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

ベートーヴェン ピアノ協奏曲第五番『皇帝』 
・ウィルヘルム・ケンプ(p)フェルディナント・ライトナー指揮 ベルリン・フィル

ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲 
・ウォルフガング・シュナイダーハン(Vn)オイゲン・ヨッフム指揮 ベルリン・フイル
 
ショパン ピアノ協奏曲第一番 
・シュテファン・アスケナーゼ(p)ウィレム・ヴァン・オッテルロー指揮 ハーグ・レジデンティ管弦楽団

リスト ピアノ協奏曲第一番 
・タマーシュ・ヴァーシャリ(p)フェリックス・プロハスカ指揮 バンベルク交響楽団

シューマン ピアノ協奏曲 イ短調 
・ゲザ・アンダ(p)ラファエル・クーベリック指揮 ベルリン・フィル

ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第一番 
・イーゴリ・オイストラフ(Vn)ダヴィット・オイストラフ指揮 ロイヤル・フィル
 
ブラームス ヴァイオリン協奏曲 
・クリスチャン・フェラス(Vn)ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル

チャイコフスキー ピアノ協奏曲第一番 
・スヴィヤトスラフ・リヒテル (p)カラヤン指揮ウィーン交響楽団

ラロ チェロ協奏曲 
サン=サーンス チェロ協奏曲第一番 
・以上ピエール・フルニエ(Vc)ジャン・マルティノン指揮 コンセール・ラムルー管弦楽団

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番 
・スヴィヤトスラフ・リヒテル(p) スタニスラフ・ヴィスロツキ指揮 ワルシャワ・フィル

ラヴェル 左手のためのピアノ協奏曲 
・モニック・アース(p)ポール・パレー指揮 フランス国立放送管弦楽団

・ボーナス盤として「ショパン・アルバム」。デビュー当時のアルゲリッチをはじめ、アンダ、リヒテル、ヴァーシャリ、アスケナーゼの演奏を収録。



これは、私にとって懐かしのアルバム。
…といっても、現物を所有していたわけではない。
あったのは、小学生の頃、我が家に届いたと思われる、このセットの販促用ダイレクトメール。そこに封入されていた「ソノシート」である。
当時はこの直径17センチ、薄いビニール製の音盤の全盛時代だった。
私がクラシック音楽に興味を持ち始めたのが中学二年の終わり頃。我が家のレコード箱に眠っていたのを「発見」し、繰り返し聴いたのだ。

収録は十分くらい。拍手のあと『皇帝』の冒頭が鳴り響くと、
ーこのほど来日して音楽ファンを魅了している、ウィルヘルム・ケンプのピアノ、ベルリン・フィルの管弦楽、ベートーヴェンのピアノ協奏曲『皇帝』です。
と男声のナレーションが入る。
続いて協奏曲とは、管弦楽と独奏楽器の競演をさす音楽ジャンルで、独奏はピアノとヴァイオリンのものが圧倒的に多いと説明が。
そしてセットに収録された曲のさわりが、エピソードに乗せて次々に流れる。
ヴィヴァルディ、ハイドンの曲のほんの一節。
ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲のフィナーレ冒頭。
チャイコフスキーのピアノ協奏曲第一番の、これも冒頭。
そしてラヴェルの左手の協奏曲で、序奏が終わり、ピアノが高い音に駆け上がると同時にオーケストラがフォルテを鳴らす、さびの部分。
最後は『皇帝』の終結部分と拍手で終わる。

見事な構成だ。素人にも、協奏曲の何たるかが、わかる。

今、現物を手に入れてみると、ずいぶん大胆な選曲だと思う。
ヴィヴァルディの『四季』もなければ、メンデルスゾーンの、ヴァイオリン協奏曲もない。ラヴェルは、取り上げられること自体異色なのに、よりポピュラーな「両手」でなく「左手」を選曲している。チェロ協奏曲にしたって、ドウォルザークをさしおいて、ラロだ。

演奏も当時のグラモフォンらしい、いぶし銀の名手たちが顔を連ね、壮観。
現在は、入手困難なものもある。
オリジナルなら、かなりの高額になるものもあるのでは。

特に感銘を受けたのが、ハープ奏者のニカノール・サバレタ。
ヘンデルでもモーツァルトでも、その音楽は一音一音をしっかりと「硬く」鳴らす風情で、テンポも遅い。ハープというよりも、ベースの音だ。レッド・ミッチェルのような。
私達がこの楽器に期待する優美さ、華麗さのないハープなのである。
しかし、だからこそ「音色」や「技巧」ではなく「音楽そのもの」が伝わる、手ごたえ。
多数の音楽家と親交のあったドイツの作家ヘルマン・ヘッセが、サバレタについて「男性のハーピスト、そのこと自体がすばらしい」、と書いていたような気がする。この二曲からはその渋い男の魅力が伝わってくる。
モーツァルトは、カール・ベーム指揮ウィーン・フィルと再録音を行っている。この盤の方がずっと有名だ。しかし、独奏者の魅力は当盤が勝っているのでは。
このモーツァルト、ベーム盤とカデンツァ(即興の部分)がまったく同じである。ライネッケの作を、第三楽章では前半の技巧的なフレーズをカットして、後半のみ演奏しているのも共通だ。遅めのテンポ、弾まない第三楽章の感じも、よく似ている。とすれば、両演奏の主導権はサバレタにあったのだろうか。

ショパンを演奏するステファン・アスケナーゼも個性際立つ。華やかさよりも、優しく語りかけてくるようなピアノで、絢爛さばかり目立ちやすいこの曲がまったく違う、内面の曲に感じられる。
ピエール・フルニエ、ウォルフガング・シュナイダーハン、内には豪胆、外には芳醇をたたえた名手。彼らの音楽は、人生を豊かな意味で、満たす。
そして、颯爽たるデビューを果たしながら、演奏ストレスによる飲酒癖に陥り、49才で自ら命を絶った、クリスチャン・フェラス。生な情熱ほとばしる30才のブラームスは、生きることの光と影を映し出す。

当時の価格、9800円とボックスには印字されている。録音は60年代になされているはずで、ブラームスは1964年、チャイコフスキーは1963年、ラヴェルは1966年の録音のはずだ。当時の最新録音をずらりと並べて10+1LPでこの価格は、思い切ったものだろう。かなり売れたのではないか。
そして、多くは死蔵された。ボックスものの宿命だ。
私の入手したものも、…通針の形跡がない。それで、100円だ。大事に、十分に聴かなければ、と思う。

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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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