悪徳のデパートに遊ぶ愉しみ~愛知祝祭管弦楽団「ラインの黄金」

Sige君と聴いてきました。
4年間にわたる上演の初年の公演です。客席は満員の盛況ぶりでした。
 
愛知祝祭管弦楽団 2016-2019「ニーベルングの指環」4部作
序夜「ラインの黄金」


 
■主催者情報

ワーグナー生誕200年となる2013年、名古屋で舞台神聖祝祭劇「パルジファル」全3幕の公演を実現した愛知祝祭管弦楽団。各方面でご好評をいただき、2016年からは、いよいよ「ニーベルングの指環」4部作の全幕公演がスタートします!
「パルジファル」公演のコンセプトを継承し、ステージ上のオーケストラ後部に小高い舞台を配置。コンサートホールの素晴しい音響を活かしながらも、ストーリーに入り込めるように日本語字幕・照明・演出を取り入れ、「コンサートホール」ながら「オペラ」を体感できる舞台を創ります。
一作品の準備に1年ずつ、合計4年間の歳月をかけ、熱い思いでお届けします。
 
平成28年9月11日(日)午後4時開演(午後3時15分開場)
愛知県芸術劇場コンサートホール
入場料 全席指定 3,000
※上演時間 約2時間30分 途中休憩はございません。
指揮 三澤洋史
出演者 青山貴 大森いちえい 升島唯博 ほか
管弦楽 愛知祝祭管弦楽団
舞台監督:磯田有香
字幕:吉田真
企画・主催:愛知祝祭管弦楽団
後援:愛知県、愛知県教育委員会、名古屋市、名古屋市教育委員会、
公益財団法人愛知県文化振興事業団、日本ワーグナー協会

 
■指揮者三澤洋史氏のプログラム解説より
 
この音楽は美しくない。愛の陶酔の場面も、激しい情熱の発露もなければ、歌手が美声を披露する心地よいメロディーもない。つまり叙情的な部分はほとんどない。…ここにあるのは徹底的に描写する音楽。物語がどんどん進んでいき、会話が飛び交う度に、管弦楽や、登場人物が語られる単語や状況を詳細に描写する。すなわちライト・モティーフの縦横なる使用である。これは音楽の言語化であり、言語の記号化である。…これこそ未来の音楽である。

 
■ネコパパ感想

2時間30分が、それこそあっという間。舞台装置は簡素でも、ハープ6台が林立する大編成オーケストラの存在そのものが、みごとな演出になっていました。
愛知祝祭管弦楽団は、アマチュア団体ながら、技術的な脆さをあまり感じさせず、弦、管ともに響きのバランスが取れ、終始力いっぱいの音を鳴り響かせました。

金梃やハンマーの効果音が会場いっぱいに鳴り響く場面も、爽快そのもの。
オーケストラも歌手も、ある部分が突出したり物足りなかったりするところはなく、ワーグナーの音楽を、飾り立てない、すっぴんの音で差し出してくる印象がありました。
ともかく聴くこと、流れを追うことに没頭することができた2時間半。
思えばこれは…凄いことです。

字幕上演なので、ストーリーが同時進行で把握できたのも収穫でした。
これがまた、面白いんです。
台詞の内容に含まれたご都合主義の荒唐無稽さと、登場人物の浅薄さは、赤塚不二夫のギャグマンガを思わせる「底の底までいってしまった」感があり、
緻密で壮大な音楽とは、あまりにもちぐはぐです。
なにしろ出てくる人物、揃いも揃って我欲の塊で、ストーリーは「いじめ」「強奪」「詐欺」「横領」「殺人」と、悪徳のデパートみたいなもの。
これを大真面目に「壮大な神々の物語を描いた楽劇」と言い切るワーグナーの鉄面皮!
タイトルは「ラインの黄金」より「ラインの借金」と呼ぶべきでしょう。

借金王の名も高いワーグナーの胸中には、「自分の身長だけの借金」が積み上げられるようなトラウマが重くのしかかり、それが無意識のうちに「踏み倒し」を熱烈に希求するストーリーを書かせてしまったのかもしれません。

どろどろと人間臭く、欲も本音も丸出しで生きる神々が、聴き進むにつれて魅力的で身近な存在に見えてきたなら…
あなたは立派なワグネリアンです!
このプロジェクト、今年から2019年まで4年にわたって上演が続きます。
来年の「ワルキューレ」は2017年6月11日で、上演時間は5時間。
できれば全曲を聴き通したいものです。それまでは元気でいなくては…と、人生の目的がひとつ、できてしまいました。
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コメント

コメント(8)
No title
アマチュア・オーケストラが指環全曲公演に挑むとはすごいですね。
ヨーロッパでも例のないことではないでしょうか。

とはいえ、「ラインの黄金」くらいまではいいですが、その先となると、座席に最後まで座って聞く自信がありません。
私にとってワグナー・オペラは気力・体力勝負のものとなりました…

gustav_xxx_2003

2016/09/12 URL 編集返信

No title
こんばんは。ワーグナーは好きですが、時間が長い・・・
「ニーベルングの指環」などは数日かけて聴きます。それでも疲れますね。最近聴いたのは2、3年前でカイルベルト/バイロイト祝祭の1954年ライブ番ですが・・・4日間で聴きました。

アマチュアでワーグナーとは驚きですね。

HIROちゃん

2016/09/12 URL 編集返信

No title
グスタフさん、この団体は2013年「パルシファル」を上演していて、それも聞きました。3時開始9時終演という長丁場でしたが、楽しく見ることができました。
来年から3年連続で頑張れるかが問題ですが…指揮者の三澤氏は、私やsige君と同年齢で、飛び跳ねるような機敏な指揮ぶりを披露されています。こちらも元気を維持しなければ、と思っています。

yositaka

2016/09/12 URL 編集返信

No title
HIROちゃんさん、私もCDは持っていますが通し聴きはできていません。それに今の住環境で許されるかという問題もあります。つまみ聴きが精一杯ですねえ。カイルベルトはきっと素晴らしかったことでしょう。

yositaka

2016/09/12 URL 編集返信

No title
「ラインの黄金」を聴き始めたころの思い出です。
ラスト近くヴォータンがワルハラ城に挨拶を送るシーンで、突如トランペットが「剣の動機」を高らかに奏します。これが不思議でした。だって、名剣ノートゥングは「ワルキューレ」以降で登場するのですから。
あとで知ったのですが、巨人ファフナーが財宝をかき集めた後に、一見価値のなさそうな古い剣が一振り残される設定なんだそうで、これはワーグナー自身の指示とのこと。このファフナーが捨てた古剣をヴォータンが拾って、城に向かって振り上げるんだそうです。
一応つじつまが合うように考えているんだな、と分かっておかしくなりました。(笑)

みっち

2016/09/13 URL 編集返信

No title
みっちさん、そういう細部のこだわりはファンタジーには不可欠の要素で、マニアックなファンはそのような部分を楽しむのが生きがいなのでしょう。ワーグナーはファンの心理を良くわかっている人なのですね。
「これでいいのだ!あっぱれだぞワーグナー!」

yositaka

2016/09/13 URL 編集返信

No title
学生の時にマタチッチが編んだ「神々の黄昏」の組曲をやったことはあります。それだけでも凄いエネルギーを消耗した記憶があります。「ラインの黄金」を全曲やるとはタフですね。しかもこの作品は途中休憩がなく、それを考えると他の3つよりもしんどいかもしれません。ワーグナーの「指輪」は拍子が6/8とか9/8といったものが交錯しています。日本人がもっとも不得意とするところです。弦楽器は絶えず上昇下降を繰り返すし、管楽器は馬力がいります。時折、ソロになって他は全く休止という部分もあって神経も磨り減る思いがします。

SL-Mania

2016/09/13 URL 編集返信

No title
SL-Maniaさん、さすがに演奏経験者ならではのご意見ですね。ワーグナーがオーケストラ部分にかけた比重の大きさは、今回の公演でいやというほど感じました。2時間半ぶっ続けでありながら、オーケストラも指揮者も元気いっぱいの演奏が持続したのは、「これをやるために結成された集団」という強い意欲のあらわれでしょう。「パルシファル」といい、史上最遅のブルックナー8番といい、彼らの長尺演奏への執着はすごいものです。

yositaka

2016/09/13 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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