『君の名は。』…現代の「すれ違い物語」

8月某日、映画『君の名は。』を見てきました。



といっても…往年の名作メロドラマではなく、
新海誠監督の、新作アニメーション映画のことです。

この監督は、「遠く離れた恋人同士が、長い年月をへて再会できたり、できなかったりする」物語を展開することが多いので、このタイトルはいかにも彼らしい。
得意の「すれ違い物語」をまたしても展開するのだろうな、という予想をしていたのでしたが、まあ、そのとおりでした。

主人公は田舎に住む女子高校生の宮水三葉と、都会に住む男子高校生の立花瀧。
1000年ぶりという彗星の接近が1カ月後に迫ったある日、三葉は、自分が東京の男子高校生になった夢を見ます。
一方、東京で暮らす男子高校生の立花瀧も、なぜか見知らぬ山奥の町で、自分が女子高生になっている夢を見ていました。
やがてふたりは、夢ではなく現実の時間でも、お互いが入れ替わっていたことに気付きます。

こうきたか。
山中恒の児童文学『おれがあいつであいつがおれで』(1980)に端を発する「男女入れ替わり物語」。今や、映画や漫画、ドラマなどでおなじみの作劇パターンです。



まあ、確かにこれでは二人は出会えませんね。
これで「すれ違い物語」というわけか。

新海監督の緻密で抒情的な美術やきめこまかな動きや表情のせいもあり、
「よくある話」ながらありきたりの展開にはなっておらず、楽しく見ることができました。とくに三葉の妹の四葉が、入れ替わり中の三葉に入れる茶々が傑作で、必死に笑いをこらえていました。

しかしこれはより大きなドラマの前兆に過ぎなかった…
「星降る夜」を境に、入れ替わり物語は突如中断。そこから、二人の「お互いを探す長く絶望的な旅」が始まるのです。
物語は荒唐無稽のコメディから、いつかSFファンタジーへと変貌していました。

その変貌をどう受け止めるかが、本作の評価を分けることになりそうです。
封切り初日の映画館の客席は、中高生でほぼ占められていました。
終了後は、相当に感じ入っていた様子も見られました。
ネコパパはといえば
「ふうん、こういうのがいいのか…」
とけっこうクールに観察していたようでもあります。

新海監督独特の、身近な風物が、抒情の光を放つほどに緻密に描かれることの感動は、ますます磨きがかっていて、
「絵そのもの」に圧倒される作品に仕上がっています。

しかし、この人物像の描き方は、どうなのか。

二人の主人公のうち、三葉には、「もう一つの世界」に入っていく資格が備わっている。
しかしなぜ、彼女の相方が、瀧くんなのか。
三葉の憧れている「東京のイケメン男子」のひとりなのは確かですが、
それだけなら彼でなくてもいいはずです。
二人の共通点といえば、母親のいないところ?
うーん、それだけではちょっと弱い。



釈然としないまま、数時間たちました。
夕方、いつものように池の公園でウォーキングしていると、ネコパパの頭の中で何かが閃きました…

そうか、瀧くんでなければいけない理由は、あれか。
瀧くんにしかできなかったことがあった。
それは…
おそらく、新海監督が作品作りで最も心を配り、力を注ぎ、
かつ自信をもって取り組んでいること。

さて、何でしょう?






関連記事
スポンサーサイト



コメント

コメント(2)
No title
「シン・ゴジラ」の上演前に流れてきた予告編を見たときに、今頃あの古いドラマをアニメ化するの?と思っていたら、どうやら違うストーリーらしいと気づきました。
男女入れ替え物語は映画「転校生」で初めて接し、なかなか面白く見ることができました。
しかし、残念ながら予告編では、映画館に足を運んで観てみたいうと思うだけの魅力を感じることはできませんでした。
観客が中高生がほとんどというのも、そうだろうなぁという感じです。
幅広い年齢層で集客できるものではなさそうですね。
(それは私が予告編で観たいと思った「後妻業の女」は、若い観客が観に来ることはないだろうというのと同じではありますが。)

gustav_xxx_2003

2016/08/28 URL 編集返信

No title
グスタフさん、その映画「転校生」の原作が『おれがあいつであいつがおれで』だったわけです。
新海作品は、個人的な思い入れですべて見ているのですが、こうまで同じテーマにこだわって制作を続ける人も少ないのではないかと思います。本作はその集大成の感もありました。
でも、内容的に共感年齢層の幅が狭いのは惜しい。個人的には、幅広い子ども層に向けた作品作りを期待しています。宮崎監督の引退後、それができる数少ない一人だと思っているのです。

yositaka

2016/08/28 URL 編集返信

コメント投稿
非公開コメント

プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

ご訪問ありがとうございます

月別アーカイブ

検索フォーム

QRコード

QR