フルトヴェングラー協会盤を聴く

8月某日、チャランさん宅でフルトヴェングラーの稀少盤を鑑賞しました。
今回、チャランさんが入手した盤のリストの一部です。
大変な「お宝」コレクションでした。どうにも目移りがして、「つまみ聴き」になってしまいましたが、聞いた感想をお伝えしてみたいと思います。




フルトヴェングラー協会 (フランス盤) 
ベートーヴェン 交響曲第4番 1943/1944 ベルリン BPO
ベートーヴェン 交響曲第5番 1943.6.27-30 ベルリン BPO ①
ベートーヴェン 交響曲第6番 1944.3.20/22 ベルリン BPO ②
ベートーヴェン 交響曲第7番 1943.10.31 11.3 ベルリン BPO
ベートーヴェン 交響曲第9番-1 1942.3. ベルリン BPO
ベートーヴェン 交響曲第9番-2 1942.3. ベルリン BPO
ベートーヴェン ヴィオリン協奏曲 1944.1.9-12 BPO ③
ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番 1943.10.31 公開録音 BPO ハンゼン ④
ブラームス 交響曲第1番 1951.10.27 ハンブルグ 北ドイツ放送交響楽団 ⑤
ブラームス ハイドンの主題による変奏曲1951.10.27 ハンブルグ 北ドイツ放送交響楽団 *片面盤
ブラームス ピアノ協奏曲第2番 1943.12.12-15 ベルリン BPO エッシュバッハー ⑥
ブルックナー 交響曲第6番(第1楽章欠落) 1943.11.13/16 BPO ⑦
ワーグナー 楽劇「トリスタンとイゾルデ」より「前奏曲と愛の死」1942.11.8/11

フルトヴェングラー協会 (国内盤)
ベートーヴェン 交響曲第3番 1952.12.7 ティタニア・バラスト BPO
ワーグナー 楽劇「ワルキューレ」第3幕1937.5.26 ⑧ 
ワーグナー 楽劇「神々の黄昏」1937.6.1 
以上、コヴェントガーデン王立歌劇場合唱団及びオーケストラ

①は大戦中の放送録音ながら、緊迫感に満ちた演奏として有名な演奏。
といっても、「尻上がり」に高揚していくのがこのときの『運命』の魅力なので、視聴した第1楽章はまだ冷静です。冒頭はこの指揮者独特の遅く、出だしのタイミングをあえてずらしたような不安感に満ちたもの。フランス協会盤の音は鮮度があり、バックグラウンドノイズもほとんど気にならないくらいに整音されたものでした。



②も「田園」のイメージとは距離のある、遅く暗い出だしがフルトヴェングラー調です。私にはちょっと重すぎる演奏と感じますが、完成度は高い。

③は戦時下の演奏とは思えない、イタリア的といえるようなエーリヒ・レーンの輝かしいソロを聴く盤です。オーケストラ部分のダイナミックレンジは狭いものの、ソロ中心に、十分楽しめる音でした。

④は、戦時下の一連の録音の中でネコパパが最も好きな演奏で、これは熱演というより「沈み込むような静かな叙情」をたたえたこの曲の稀有の録音と思っているものです。コンラート・ハンゼンのピアノはいつ聞いても感銘を受けるのですが、今回は、仏協会盤の音の冴えによって、演奏の真価が手に取るように伝わってきました。



⑤は戦後の録音で、戦中のマグネトフォン・シリーズのエンジニアを務めていたフリードリヒ・シュナップが、久々にフルトヴェングラーとのセッションに挑んだもの。
冒頭の凄まじいティンパニ強打が濁りのない音で再現されるのは、さすがに戦後の機材だけありますね。

⑥は再び戦時下の録音。この一年前の1942年に、フルトヴェングラーはエトヴィン・フィッシャーと同曲を演奏録音していますが、巨匠同士の一騎打ちのような激しい演奏でした。ところがこちらは、30歳の若手ピアニスト、アドリアン・エッシュバッハーが粒立ちの良い透明感のあるピアノを弾き、巨匠の伴奏も穏やかなものになっています。このピアノがまた美しく再現されているのです。



⑦は珍しいものではないでしょうか。第2楽章から残されたブルックナーの6番。濃厚すぎる7番8番を聴いているので、どうかと思いましたが、これが曲想をよく生かしたみずみずしい演奏で、冒頭楽章の欠落はなんとも残念です。

1937年、戦前のライヴという⑧の音の良さには驚きました。
といってもマイクはオーケストラ前方、ヴァイオリンは大きく、金管、打楽器は小さく、歌手の声はさらに遠くから聞こえます。それでも聴きやすい。
おそらくは放送用の大きな金属原盤に刻んだものでしょうが、保存もしっかりしていたのでは。それにしても、このポルタメントたっぷりの陶酔的な弾きっぷりには参りました。




最後の三枚のみは、「日本フルトヴェングラー協会盤」ですが、これも原盤は仏協会の制作したものを使用。どうやら、ある時期から、各国のフルトヴェングラー協会は、原盤制作を仏協会に一任しているようです。音源の管理もその方がやりやすいということなのでしょう。
というわけで、全体を通して、録音年代にかかわらず、制作には統一のポリシーがあると感じました。

音源そのものが良質であること
原音の音をそのまま生かすこと
音源の由来をできる限り詳細に明記すること

原音の音とはいっても、バックグラウンドノイズの減少はいくらかはさせているように聞こえました。
すっきりと細身で鮮度を保った音、という「フランス人好みの音」になっていると思います。
それにしても、これだけの、ミントに近い協会盤がまとめて店に出たとは。
刻印された会員番号が同じことから、個人コレクターの架蔵盤が処分されたのでしょう。
チャランさんがまとめて入手されたのは、散逸を防ぐという点でも意味深いことでしたね。
機会があれば、今度はじっくり全曲聴かせていただきに伺います…


関連記事
スポンサーサイト



コメント

コメント(4)
No title
おおっ、フルトヴェングラーのコヴェント・ガーデンにおける指輪公演ですか。
拙ブログでは、フリーダ・ライダーがブリュンヒルデを歌った1938年6月7日の公演を記事にしたことがあります。(CD盤で聴きました)
1937年の公演は、フラグスタートが歌っているBプロの録音ですかね。
38年の「神々の黄昏」第2幕ラストでのフルトヴェングラーの指揮ぶりは、ビーチャムとは違って、大変理知的で冷静な指揮という印象を受けました。

みっち

2016/08/13 URL 編集返信

No title
みっちさん、今回聴かせていただいたのは「ワルキューレ」第3幕の初めの20分間くらいで、「ワルキューレの騎行」では金管が遠く弦楽器だけが飛び出して聞こえるバランスに一瞬たじろきました。しかし、バランスはともかく音自体は鮮度があります。指揮ぶりは思いのほかすっきりと洗練された感じがしましたが、ヴァイオリンの弾き方は時代性を感じました。
この部分に限っては、歌手の声は遠かったのですが、歌中心の部分では多少クローズアップされるのかもしれません。

yositaka

2016/08/13 URL 編集返信

No title
リストの交響曲第9番-2BPOの1943.3は、1942.3の誤りです。老眼には、センターラベルの字が小さくて見誤りました。
仏協会盤には、ラベルに録音日、場所も記載されているのですね。
大戦中の録音は、ワンポイントのテープ録音と聞いていたのでお店で興味津々で試聴しff(特にティンパニーの強打)に入力オーバによる音割れや、ワンポイント録音の弱点である距離による音量の違いはあるけれど素直・明瞭・滑らか・臨場感のある演奏が気に入り即購入しました。
蛇足1.戦後の技術の進歩のミキシングやマルチ・トラック録音の音は、「私の指揮では、無い」と言うかもしれない。
蛇足2「大戦中」の録音は、TAHRAもだしているそうだけど もしかしてあまりいじっていないのが「会員用」編集で手お加えたのが「市販用」。
ネコパパさん、何時でもいいですよじっくり聴きましょう。

チャラン

2016/08/14 URL 編集返信

No title
チャランさん、確かに1942年でしたね。訂正しました。
ティンパニの強いのはフルトヴェングラーの特徴で、録音もさぞかし苦労したことでしょう。しかしウィーン・フィルのときはそれはあまり目立ちません。EMI録音がややおとなしく聞こえるのもそのためでしょう。TAHRAは仏協会と同じテープを使っていると思われますが、楽章ごとのピッチ調整など、相当細かくやっています。これがDGやオルフェオになると、演奏ミスまで修正するところまでいきます。

yositaka

2016/08/14 URL 編集返信

コメント投稿
非公開コメント

プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

ご訪問ありがとうございます

月別アーカイブ

検索フォーム

QRコード

QR