ペルルミュテールの不思議なモーツァルト

先日ほんとに久しぶりに、名古屋駅近辺の大型レコード店に立ち寄った。
最近は、何かのついででもないと、新譜を扱う店舗にはいかなくなってしまった。お世話になっていた人に不義理をしているような後ろめたさもあって、ちょっと、買ってしまった。
その一枚…

モーツァルト
ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K. 467
フランス国立放送管弦楽団
ルドルフ・アルベルト(指揮)
録音: 23 May 1957
ピアノ協奏曲第9番 変ホ長調 「ジュノーム」 K. 271

パリ室内楽協会管弦楽団

フェルナン・ウーブラドゥ(指揮)

録音: 16 February 1955
ヴラド・ペルルミュテール (ピアノ)



INA(CD)IMV076 (2008)
 

モーツァルトのピアノ協奏曲2曲を、知る人ぞ知る往年のフランスのピアニストが弾いたもの。聴いてびっくりしたのは、演奏の傾向が各曲で随分違うことだ。
 
素晴らしいのはK. 271
第9番「ジュノーム」は初期の作品だが、同じ調性をとる後年の大作、第22K482との関連性が強い。劇的な第1楽章、短調の悲痛なモノローグのような第2楽章、間に遅い部分を挟んで、快活さの中にも哀愁を漂わせるフィナーレ…
傑作ぞろいのモーツァルトのピアノ協奏曲のなかでも、個人的には五本の指…いや、十本の指に入る作品だと思う。
ペルルミュテールとウーブラドゥは冒頭からのめりこむような感情移入を見せる。
表現自体はオーソドックスなモダン・スタイルなのだけれど、その音には血が通い、切羽詰った気持ちがあふれ出すような勢いがある。
このような「ただ音を出しているのではない、強い共感度」こそ、モーツァルトの演奏には不可欠なのだ。
 
一方、第21番K. 467は、すっきりした美音で淡々と演奏されている。
わずか2年後の演奏なのに、K. 271で感じられた切迫感と自発性はあまり感じない。デリケートな弱音はつかわず、細部までくっきりと聞こえてくるのが美点。
1楽章のカデンツァや第2楽章の有名なテーマなどで聴けるしっとりと優雅な音の運びに、いかにもフランス的な風情が漂う。
個人的にはこの曲、もちろん名作に間違いないけれど、モーツァルトとしてはかっちりとして天衣無縫の自在感が少ない。十本の指に入るかどうか、ボーダーラインなのだが…それを見直させてくれる演奏とまでは、いかない。
 
それにしても、両曲で別のピアニストの演奏のように感じるのは、なぜだろう。
「ジュノーム」を振っているのが、稀少盤として有名な「パリのモーツァルト」シリーズの指揮者であることとも、何か関係があるのだろうか。
 
放送局蔵出しのライヴ録音らしい。
モノーラルである上に、経年劣化のためか、高音部の歪が少し気になるが、オンマイクのくっきりとした音はなかなか好きだ。
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コメント

コメント(4)
No title
音楽を聞き始めた頃、ペルルミュテールはフランス音楽、とりわけラヴェルの録音でかなり有名であったように記憶しています。
当時から、フランスのピアノ曲というとサンソン・フランソワにぞっこんでありましたので、この人の録音を聞く機会は、未だもってありません。
その方がモーツァルトも演奏していたというのは、ピアニストとしては当然でありましょうが、昔の勝手なイメージからすると、ちょっとビックリしました。

gustav_xxx_2003

2016/07/25 URL 編集返信

No title
このモーツアルトの協奏曲は、どちらも何枚も持っていますが、ペルルミュテールは残念ながら聴いたことがありません。
投稿文を読んでいると興味がわきますね。特に21番の第2楽章を聴いてみたいですね。この楽章はタイトルは「美しくも短く燃え」だったかな~・・スウェーデンの映画音楽としても使われましたね。リバイバルで1970年代の学生時代に東京の新宿で映画を見た事を思い出しました。

HIROちゃん

2016/07/25 URL 編集返信

No title
グスタフさん、私もペルルミュテールというとラヴェルしかイメージできなかったのですが、アナログ愛好家の中では彼のモーツァルトのソナタがただならぬ金額で取引されていると知り、そういう面もあったのかと気づかされた次第です。
問題の仏VOXのソナタは聞いたことがないのですが、この一枚からも、そのモーツァルティアンぶりが伺えました。

yositaka

2016/07/25 URL 編集返信

No title
HIROちゃんさん、21番の第2楽章はすばらしいメロディーですが、これを有名にした映画はまだ見たことがありません。メロディーメーカーのモーツァルトとしても、このように息長く歌いこんでいくテーマは珍しいでしょう。あと、第1楽章には交響曲第401番の冒頭主題も顔を出し、ペルルミュテールはカデンツァでも見事にこれを生かしています。

yositaka

2016/07/25 URL 編集返信

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yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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