『サライ』2016年3月号は「漫画特集」

『サライ』20163月号「漫画特集 みんな漫画で大きくなった」



29日の発売日は手塚治虫の命日となる。
小学館は手塚とも関係の深い出版社の一つだった。命日と発売日が重なる、ということで、同誌はじめての漫画特集を組むことになったようだ。
別冊付録として手塚治虫の『新寳島』前半と『ジャングル大帝』最終話の初版復刻が添付されている。
漫画の別冊付録なんて、何十年ぶりだろう…
ネコパパも、つられて購入してしまった。私たちの世代はどうも「別冊付録」iに弱い。月刊少年誌の「刷り込み」である。

特集は三部構成になっている。
 
1部「ストーリー漫画」の歴史をひもとく
2部 私の名作案内
3部 全国漫画博物館・図書館案内 
 
1部は、同志社大学社会学部教授、竹内オサムの解説で、「ストーリー漫画」の歴史がガイドされている。平安期の『伴大納言絵巻』を漫画の起源とするなど、歴史的な鳥瞰を示した上で概略が語られる。漫画史の王道を辿る感じだ。各作品初出時の表紙扉カラー図版などが多く掲載されているのは貴重だ。

・ 新聞漫画から子供向けに ふきだしとコマ割りの技法が花開く
・ 赤本から貸本へ 手塚治虫が赤本で活躍し、貸本から劇画が誕生する
・ 月刊誌から週刊誌へ 月刊誌の付録合戦から漫画週刊誌の発刊へ
・ 青年漫画誌の創刊 読者層が大人へと広がり、日本の文化として成熟
・ 別冊付録解説 漫画史に残る手塚治虫の傑作を読む
 
2部では、漫画の名作について、各作品にかかわりの深い10人が語ったもの。
でも選ばれた10作品のうち、手塚作品が3つもあるのはちょっといただけない。古典化された手塚作品は別格として、さらに選ぶべき作品があるはず。少年漫画ばかりだし…

・ 『鉄腕アトム』昭和27年 手塚治虫 
・ 『火の鳥』昭和42年
『ブラック・ジャック』昭和48年(以上 竹内オサム)
・ 『おそ松くん』昭和37年 赤塚不二夫(高井研一郎)
・ 『サイボーグ009』昭和39年 石ノ森章太郎(松本零士)
・ 『カムイ伝』昭和39年 白土三平(夢枕 獏)
・ 『あしたのジョー』昭和43年 高森朝雄・ちばてつや(小山ゆう)
・ 『ゴルゴ13』昭和43年 さいとう・たかを(鳥越俊太郎)
・ 『ドラえもん』昭和45年 藤子・F・不二雄(鴻上尚史)
・ 『まんが道』昭和52年 藤子不二雄A(川本三郎)

章末には、竹内オサム選定として『 読書案内 いま、あらためて読むべき10作品』として、以下の作品が挙げられている。
萩尾望都が入っているのはいいとしても、少女漫画のウエイトが低く、「名作案内」よりもさらにマニアックな選定になっている気がする。

・『銀河鉄道999』松本零士
・『漫画家残酷物語』永島慎二
・『スポーツマン金太郎』寺田ヒロオ
・『墓場鬼太郎』水木しげる
・『ねじ式』つげ義春
・『漂流教室』楳図かずお
・『ポーの一族』萩尾望都
・『がきデカ』山上たつひこ
・『暗黒神話』諸星大二郎
・『風雲児たち』みなもと太郎
 
そして第3部は全国漫画博物館、図書館ガイド。
★私が見学したところ。たった四ヶ所
 
・ 宝塚市立手塚治虫記念館 兵庫県-★
・ 川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム 神奈川県
・ 石ノ森萬画館 宮城県
・ 青梅赤塚不二夫会館 東京都
・ 長谷川町子美術館 東京都
・ 水木しげる記念館 鳥取県★
・ 北九州市漫画ミュージアム 福岡県
・ 立川まんがぱーく 東京都
・ 大阪府立中央図書館 国際児童文学館 大阪府★
・ 米沢嘉博記念図書館 東京都
・ 京都国際マンガミュージアム 京都府★


本特集全体を読んでみて、
これは『ストーリー漫画史』というよりも『トキワ荘史観』による1970年代はじめまでの少年漫画の流れを述べたもの…という印象が強い。
何か大きなものが欠落している感じが残るのである。
例えば日本の漫画は、1970年初頭にはじまる「大泉サロン」(24年組)による作家性導入の試みによって、大きく変質したと思われるが、それ以降の流れが押さえられていない。
これは現代児童文学が1980年に「変質」し、通史の生まれない時代となったとされる状況ともよく似ている。

私たちはどうも、いろいろな分野で
「正史づくり」
という大きな宿題を抱え込んでしまっているようである。



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コメント

コメント(2)
No title
最近つくづく思うのは、出版業界も衰えたかなというところでして、本当の意味でのプロの編集者が少なくなったかなぁという思いがあります。
今回入手された雑誌も、拝読しておりますといかにも安直な企画で出来上がっているように感じます。

とはいえ、つい先日、結構真面目な本の翻訳をめぐって翻訳者の解説的講演を聞きに行った際、その本の編集者の方の話を聞いたときは、まだプロの編集者は残っている、凄い知識量には圧倒されました。

gustav_xxx_2003

2016/02/17 URL 編集返信

No title
グスタフさん、確かに内容としての目新しさはなく、近年の流れをフォローしていない部分は感じます。(竹内氏に構成を丸投げした感じもします)けれども、貴重な写真や図版ガ掲載され、入門資料としてはまずまずの充実ぶりだと思います。高齢者向けの雑誌がこうした企画を「初めて」立ち上げたことに、世代交代の現われを感じました。
情報発信が安易となった現代こそ、優秀な編集者が必要な時代です。
私たちが知らない間に、どこかで人材が育っているのでしょう。編集者の業績は、よほど蓄積されないと一般読者の目に触れないことが多いので、アンテナを高くしていたいものです。

yositaka

2016/02/17 URL 編集返信

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プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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