• からすのパンやさん
    1973.9 偕成社長く親しまれ、子どもたちの大好きな絵本です。「おいしそうなパンがたくさん出てくる絵本」という印象が強いのですが、あらためて読んで見ると、かこさとしの思いは、別のところにもあったのではないかと思えてきます。からすのまち、いずみがもり。ここには大きな木が二百本、ちゅうくらいの木が四百本、小さな木が八百本あったというから広大なものです。その一角にからすのパン屋さんのお店があってあるひ、四羽... 続きを読む
  • しんでくれた
    題名だけでもう、大変なインパクトのある絵本です。谷川俊太郎の独立した詩に絵をつけて出来上がった一冊。けれど塚本やすしの絵は、決して挿絵ではなくて、絵本にとって不可欠な鋭い画面の対比と色彩の変化で、見る人の気持ちをゆさぶります。ハンバーグのおいしそうな絵の描かれた表紙をめくって扉をみると、真っ赤なページに白抜きで「しんでくれた」のタイトル。第1画面が、大きな「うし」。第2画面。左ページに血しぶき。右ペ... 続きを読む
  • おとなしいめんどり
    今回はネコパパの大好きなポール・ガルトンの絵本です。例によってイギリスなど、各地に伝わる昔話を題材にして、ガルトンらしいスパイスを利かせています。谷川さんのリズミカルで流れのいい訳文がまた、すばらしい。大人も子どもも愉しみながら、読み合うことができる一冊です。お話はごくごくシンプルな、「働かざる者食うべからず」。ねこといぬとねずみと、おとなしいあかいめんどりが、いごこちのいい ちいさないえに すん... 続きを読む
  • ピアノ調律師
    これは絵本というのかな。絵のいっぱい入った、お洒落な短編小説という趣です。先日、これを編集翻訳された末盛千枝子さんのお話をZoomで拝聴して、興味を持ったのです。ストーリーはシンプルです。両親が死去して、ピアノ調律師ワインストックに引き取られた孫のデビーは、おじいちゃんの調律を見るのが大好き。自分もいつか調律師になりたいと思っています。一方、ワインストックは孫を調律師ではなく、プロのピアニストにさせた... 続きを読む
  • いつも、まっさらに~追悼・山脇百合子さん
    今朝、2022年の12月7日の朝刊で知りました。絵本「ぐりとぐら」 画家で絵本作家の山脇百合子さん死去 80歳 2022年10月6日 16時57分 NHK NEWS WEBhttps://www3.nhk.or.jp/news/html/20221006/k10013850681000.html引用。多くの子どもたちに親しまれている絵本『ぐりとぐら』シリーズなどで知られる、画家で絵本作家の山脇百合子さんが先月29日、亡くなりました。80歳でした。山脇さんは東京都出身で、高校3年生の時に同人誌に掲... 続きを読む
  • やっぱり「読み聞かせ」は苦痛?
    また、これか!「読み聞かせノルマ」に悩む大人たちを話題にした新聞記事です。子どもたちが宿題をいやがるのと同じですね。中には、ノルマがあるから張り切るという大人もいるでしょう。でも、多くの凡人には、ノルマはいつも重荷に感じるものじゃないでしょうか。世の中これだけの絵本があって「情操教育に欠かせない」といわれる。これは、あきらかにオーバースペックであって、「めったに読めない」「手に入らない」ときのほう... 続きを読む
  • おとうさんは、いま
    ささめやゆきさんのクレヨンと墨のいりまじったような、絵のタッチがいいですね。子どもの絵に近づけたような、それでいて、大人の絵のような。もちろん、大人の絵なんですが、子どものタッチに迫ろうとしている。そこに、大人らしさと子どもらしさの緊張関係が生まれています。まゆちゃんのお父さんから電話がありました。「お仕事で遅くなるから、絵本を読んであげられない。ごめんね」代わりにお母さんが読んであげるんだけれど... 続きを読む
  • 最初の質問
    本作は、長田弘の詩にいせひでこが絵をつけたものです。「詩の絵本」ということになります。子どもに読み聞かせるのは、とても難しい。でも、大人の絵本というのでもない。これは、読み手が自分に向かって読み聞かせる絵本なのかもしれません。もしも幸運にも、子どもたちとともに読み味わうチャンスがやってきたら、決して逃してはいけないと思っています。きょう、あなたは空を見上げましたかという第1行目に続いて、詩人からあ... 続きを読む
  • ラチとらいおん
    これはネコパパが小学校4年生の時、学校の図書館で読みました。ネコパパの行ってた小学校は文部省の図書館教育の指定校ただったことがあり、当時としては充実していたんですね。なんと、専任司書教諭もいたんです。これは後になって気づいたことですけれど。それで当時、福音館から出ていた「世界傑作絵本シリーズ」は全部揃えていて、カウンターの背に表紙を向けて飾られていたんです。そこに確かにあったと思うのは『シナの5人... 続きを読む
  • さかさことばでうんどうかい
    コロナ禍で中止になることも多かった小中学校の運動会ですが、今年度はほとんど無事開催されたようです。ネコパパの4人の孫たちも、それぞれ参加しました。テンチョウの娘テンコも、ギンネズの息子ソラタも気がつくともう小学生です。マイペースで集団生活にはやや心配なきらいのあったソラタ、1年生。先月は、初参加の運動会の様子に注目していたんですが、愉し気にクラスの友達と溶け込んでいました。さて運動会といえばこの絵本... 続きを読む
  • 「ふろく」が欲しくて買った雑誌。正解でした。
    https://www.moe-web.jp/now/202207白泉社発行の月刊誌「MOE」は1979年に創刊された絵本とキャラクターを扱う月刊誌。絵本専門誌と言えば、ネコパパの世代には、らくだ書房発行『絵本の世界』、すばる書房発行の『月刊絵本』が思い浮かびます。これら2誌は1973年創刊で、とくに1979年まで刊行されていた『月刊絵本』はネコパパにとって、絵本というジャンルへの入門書であり、教科書でもありました。同社の企画した二泊三日、参加... 続きを読む
  • ぷてらのタクシー
    「恐竜」という存在を知った時には、胸がときめきました。小学校の図書館で、同級生に教えられてみた図鑑の絵ではじめて出会った時のことは忘れられません。いまはもう、いないけれど、かつては本当に存在した、神秘的な生き物たち。生命の神秘を触感で感じた原体験だったかもしれません。巨大で重い、というのが第一の印象でしたが、そうではないものもあった。そういう図巻のイラストで決まって描かれていたのが、鬱蒼としたジャ... 続きを読む
  • なにをかこうかな
    この絵本には、ネコパパの個人的な思い出があります。アヤママと結婚することになり、これまで一人で住んでいた木造2階の古いアパートから、近くの新築賃貸マンションに引っ越したばかりのころの話。当時ネコパパ夫婦には車がなく、出かけるときは電車が徒歩で、よく二人で近所を散歩したりしていました。人も知る「車の町」でそれはとても不便なことで、取り残されたような気分でもあったのですが、それはそれで楽しかった。そん... 続きを読む
  • いちご
    いちごのおいしい季節ですね。アヤママと一緒にスーパーに買い物に出かけたりすると、すぐ「いちごだ!買って!」とねだって顰蹙を買います。ま、そこそこの値段ならちゃんと買ってくれますけれどね。子どものころは、めったに口にすることもなかった。誕生日やクリスマスケーキの定番になるのも、かなり後のこと。ちなみにこれ、日本生まれのお菓子です。不二家が1922年に開発したそうなんですが普及は家庭に冷蔵庫が広まりだした... 続きを読む
  • ブレーメンのおんがくたい
    おなじみのグリム童話。広く親しまれているのは、装飾的なペンタッチで描かれたハンス・フィッシャーの挿絵版(福音館)ですが、今回ご紹介するのは、アメリカの絵本作家ポール・ガルトンの絵によるものです。この画家の作品は、擬人化が過ぎて漫画的という批判もあるようですが、ネコパパは好きです。なんといっても、登場人物の表情がみんな生き生きとしている。翻訳が作家の大庭みな子というのも珍しいかもしれません。最初に「訳... 続きを読む
  • 戦争をやめさせるための絵本。
    2022年4月21日の新聞記事。内容は、だいたいこうだ。「平和の思いが込められた絵本」を手に取る人が増えている。ウクライナ民話『てぷくろ』は注目を集める絵本の一つだ。子どもの本専門店「クレヨンハウス」では、『おおきなかぶ』と並べている。探しに来る人は、いま世界で起きていることを子どもに説明したい、という思いで来店される人が多いという。「絵本を読めば、今起きている戦争を止められるわけではない。けれど、平和... 続きを読む
  • おおかみと7ひきのこやぎ
    とても有名なグリム童話の絵本。ネコパパは昔からこのお話が大好きです。好きな場面は二つ。ひとつは、おおかみがいろんな小細工を使って、子やぎの家に入ろうとするところ。もうひとつは、末っ子のやぎが一匹だけ、時計の中に隠れて食べられずにすむところです。とくに「時計の中に隠れる」のがいい。かくれんぼのあの緊張がよみがえります。この絵本は何よりも、彦一彦(げん かずひこ)の絵がすばらしい。表紙から意表をついて、... 続きを読む
  • のらいぬ
    谷内こうた 絵 倉富千鶴子 文 初版 1973/6/1表紙に描かれているのは、青空の下、海の見える砂丘。麦わら帽子を顔に乗せて寝そべる少年。そのかたわらにの、黒い、やせた犬が一匹。最初の場面は、砂丘をいく犬。草がちらほら見え、海もかすかに見える。テキストはただひとつ。「あついひ」次の画面では、草はすっかりなくなっていて、砂丘の高いところに、麦わら帽子と少年の姿が小さく見え、黒い犬は視線をそちらに向けている... 続きを読む
  • 松岡享子さんの遺作絵本。
    朝日新聞4月4日(月)福音館書店 (2022/4/8)今年1月に86歳で亡くなった松岡享子さんは、ディック・ブルーナの『うさこちゃん』シリーズやマイケル・ボンド『くまのパディントン』シリーズ等で全国の子どもたちに親しまれる翻訳者であり、『とこちゃんはどこ』『かえるがみえる』『おふろだいすき』などの絵本の作者でもあり、さらに読書運動家・研究者として、石井桃子、土屋滋子両氏とともに、児童書専門の私設図書館である「東京子... 続きを読む
  • へいわとせんそう
    できるのであれば、この絵本は、子どもと読みたくありません。「これまで」よりも「これから」のほうがずっと長い人たちに、この世界がこのようなものであることを伝えるのは「これから」のほうが短い私たちには心苦しい。でも、子どもだって「人間」です。「人間の世界」を知らないわけにはいかない。だったら、できるかぎり優れた伝え方がしたい。この絵本の作り手はそんな願いを持っているのでしょう。痛いくらいに伝わります。... 続きを読む

プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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