• アポリアー災禍の中の生を描く児童文学
    童心社 初版2016.5.16野島一弥が不登校のひきこもりになったのは、スパイクが原因だった。同じクラスの鷲田が、ふざけて隠したスパイク。買っても買ってもすぐに足がでかくなって窮屈になる。「馬鹿の大足ね」と笑って、かあさんは金を出してくれる。家にゆとりがあったわけじゃない。でもかあさんは、いつもそうした。鷲田は隠してあったスパイクをトイレの便器に投げ込んだ。咄嗟に掴みかかった一弥が抱いたのは殺意だつた。簡... 続きを読む
  • 蝶の羽ばたき、その先へ
    2019年10月25日 小峰書店不思議なタイトルのわけは、聴力。蝶の羽ばたきは10デシベルで、健康な耳が聴き取れるほとんど限界の音なのだそうです。で、これは、中学2年生に進級したばかりの結の物語。4月はじめのその日、結は目覚まし時計のベルを止めようとして、突然耳鳴りに襲われます。何とかリビングに降りて、トーストを作ろうと袋を破ると今度は吐き気が。母には事情を言わず、我慢して学校に行きます。結と母は二人暮ら... 続きを読む
  • 書店は世界に通じる窓、本は未来への道
    PHP研究所 1981.12.31大正2(1913)年3月、28歳の日本人青年が、共同租界となっていた中国・上海に到着した。名前は、内山完造。「大学目薬」の販売員として、大阪・参天堂から派遣されてきたのである。熱心なキリスト教徒であった完造は「汝ら、己をさとしとすな」という聖書の教えを座右の銘として、持ち前の我武者羅な気性で仕事に励み、業績を上げていく。翌1914年には第一次世界大戦がはじまり、その影響は中国にも波及した。... 続きを読む
  • 談話室香津原便りー蓄音機サロンで童謡を
    昨年12月、勝原オーナーの蓄音機サロンで「童謡」をテーマに蓄音機サロンを開催したことは、すでにご報告した。https://nekopapaan.fc2.net/blog-entry-1920.html先日オーナーから依頼があり、会で配布している「談話室香津原便り」の記事にしてほしいとのこと。お話した内容をすべて書くのは無理があるので、かなり圧縮し、曲も絞り込んで書き直すことにした。発行は、今のところ未定だが、とりあえず「第1稿」としてここにご... 続きを読む
  • 「あわい」こそが人間の域-内田樹『鬼滅の刃』を語る。
    同誌投書欄によると、2020年12月4日の新聞全国紙5紙の朝刊に、コミックス1億冊突破記念として、『鬼滅の刃』のキャラクターを全面にあしらった広告が出たという。それはネコパパも見ていて「これは凄いな」と思ったのだが、その掲載方法は予想を超えていて、各紙に3キャラクターが別々に掲載され、5紙全てを買えば15のキャラクターが揃うというやり方だったそうだ。(C)吾峠呼世晴/集英社この広告が載った朝刊は、各地でたち... 続きを読む
  • 「文部省唱歌」を生んだふたりの男の人生
    中公文庫 2013.5.25   「唱歌」について調べていたところ、この本に出会った。確か、シュレーゲル雨蛙さんのお薦めで入手したもの。 とても不思議な構成になっている。「僕」という語り手が、取材のテーマを明かさずに、様々な人に会い、現地取材やインタビューを重ね、結果を切れ切れに報告。そのパーツが徐々に蓄積し、読み進むうちにじわじわと全体像が表れてくる。そんな「小説」である。決して読みやすくない... 続きを読む
  • 鐘を鳴らす子供たち-ラジオドラマ出演者たちの奮闘を描く物語。
    ■2020.1.31 小峰書店昭和22年。敗戦後の混乱期、玉川上水近くの小学校に通う6年生の良仁は、隣のクラスの担任である菅原に誘われ、親友の祐介とともにラジオドラマに出演することになる。菅原は演劇指導に熱心な教員で、自分のクラスの生徒中心に児童演劇のグループを作って活動している。短期間、良仁の兄の担任だったこともある。おやつや謝礼が出るというし、頼れる優等生の祐介といっしょなら、と話に乗った良仁だったが、... 続きを読む
  • 本棚には人生があるー本の達人、ふたりの対話。
    10月11日の土曜日は、ひさびさに四日市の子どもの本専門店、メリーゴーランドに行ってきました。アヤママ同伴です。年に数回は出かけていたのが、コロナ禍でイベントもレクチャーも中止となっていたためでした。今回は当店オーナーの増田喜昭さんと、名古屋の古書店、シマウマ書店店主、鈴木創さんとの対談企画。あわせて店内に併設されたカフェ内での古書市です。対談は2時開始なので、少し早めに出かけて古書を物色しました... 続きを読む
  • 雪の人くい谷ー続・五箇山ぐらし
    偕成社 1982.5■故郷への長い旅天保13年春。松吉たちが五箇山に流刑になって2年が過ぎていた。年貢米をめぐる不満が原因で罪人となった加賀西念の村役とその家族たちは、今では五箇山利根谷の村人にすっかり溶け込み、忙しい毎日を送っている。14歳になった松吉も、つらい床下の塩硝作りを自分にまかされた特別な仕事と心得て励む日々だ。そんな彼らに命が下された。金沢本願寺の回収に必要なケヤキの五本の切り出しである。雪に閉... 続きを読む
  • YouTube版 本の海大冒険で『オーケストラをつくろう』が紹介されました。
    「本の海大冒険」はいつも楽しみに視聴しているやすこぽんの番組です。ここにオーケストラの絵本が紹介されています。指揮者はサイモン。サイモンといえば…この本です。サイモン君、なかなかかわいいじゃないですか。サイモンは、音楽が大好き。ひとりじゃなく、みんなといっしょに音楽を楽しみたい。それが指揮者をしている理由。さあ、指揮者サイモンといっしょに、オーケストラの世界をのぞいてみましょう。弦楽器、木管楽器、... 続きを読む
  • 五箇山ぐらしー続・天保の人びと
    1972.5 牧書店1982.4 偕成社■流刑の地には加賀藩の秘密があった天保10年3月、加賀の西念新保村の村役とその家族一行は、五箇山利賀谷に流罪となった。不作に苦しむ村を救うために役人に年貢の減免を願い出たのが罪とされたのである。松吉の一家も、その中にいた。長い道中を経て、ようやくたどり着いた五箇山利賀谷は、綱に渡した籠に一人ずつが乗って下り、要山たどり着ける陸の孤島のような場所にあったが、村そのものは茅... 続きを読む
  • 天保の人びと
    牧書店1968.12偕成社1982.4偕成社文庫2000.10■土蔵に忍び込む子どもたち天保9年8月。12歳の松吉は、見張りの目をかいくぐって奉行所の土蔵に忍び込んだ。中にはいわれなく引っ立てられ、責め立てられたおとうたち村役が閉じ込められている。土蔵はそもそも侵入できないよう頑丈に作られているが、知恵者の孫市じいまは、子どもなら忍び込める、壁のすき間があることを知っていたのだ。松吉は、仲間三人の手助けでうまくやった... 続きを読む
  • 星の時間の「モモ」
    NHKの番組「100分de名著」2020年8月に取り上げられた一冊はミヒャエル・エンデの児童文学作品「モモ」。講師は河合俊雄氏。視聴者には好評で、再放送も決まり、また岩波書店から出ている訳書も売れ行き好調とのこと。喜ばしいことである。ネコパパも当番組は興味深く拝見。テキストも入手した。今回はこれについて書きたい。■「聴き」に徹するモモ「モモ」は、河合氏の父である河合隼雄が、1979年に心理学の視点で論じたことがひと... 続きを読む
  • 安政五年七月十一日
    1970 牧書店1982.8 偕成社(かつおきんや作品集16)ときは幕末、金沢の町で…政吉は十一歳。町で評判の髪結い、能美屋佐吉の息子だ。父親に似て一本気で正義感が強く、曲がったことが許せない。たとえ相手が侍の子でも、機敏な動きと知恵で煙に巻く。今日も、三人に取り囲まれていた町娘を助け出したところだ。町人たちがひしめき合い、元気な声が飛び交う界隈だが、話題は黒船よりも、米の不作と激しい値上がりのことばかりだ。... 続きを読む
  • 「動物と話せる少女リリアーネ」を読む④転換する世界観
    第7巻。第6巻でとうとう「秘密の越境」…動物と話せる力のマスコミ公表をしてしまったリリアーネは、毎日取材に押しかける記者たちや「パパラッチ」たちに悩まされることになります。そんな中、リリのもう一つの力、植物を成長させる力に目をつけ、それで一儲けしようとする男達によって、リリはイザヤと二匹のペットとともに誘拐されてしまいました。連れてこられたのは、場所もわからない山奥。友達を人質にされたリリは、やむ... 続きを読む
  • 「動物と話せる少女リリアーネ」を読む③決裂、回復、秘密の「越境」
    第5巻。リリアーネの学校にやってきた転入生ヴォルケは牧場の娘でした。リリとイザヤは誘われて牧場に出かけますが、そこで見たのは経営の厳しい現状でした。望みは牧場の大黒柱である馬術競技用の馬ストームが競技大会で優勝すること。ヴォルケの「ふたりの母」は、ベテラン調教師のエゴベルトにストームの訓練を任せています。ところがエゴベルトの違法薬物を使った暴力的な調教で、ストームはすっかり人間を憎むようになってい... 続きを読む
  • 「動物と話せる少女リリアーネ」を読む②ケストナーの血脈
    第3巻。リリアーネのママは、政治番組のキャスターの座をねらうアナウンサーです。彼女は、リリの「秘密」が世に知られることで自分の仕事が脅かされることを恐れ、事あるごとに秘密を漏らさないように、リリに念押しをします。専業主夫のパパや、メカに強く大工仕事の得意な母方のおばあちゃんは、リリをいつも温かく見守っていますが、リリとママの関係はずっと緊張をはらんだままです。さて、夏休みを過ごすために、北海沿いの... 続きを読む
  • 「動物と話せる少女リリアーネ」を読む①自分だけの才能
    シリーズ第1巻。リリアーネは小学4年生。どんな動物とでも話せる力と、笑顔によって植物をたちまちのうちに成長させる力を持った少女です。でも、その秘密を知られないようにするために、もう3回も転校を繰り返しています。今回の引越しで、リリはとなりの家に住む5年生の少年イザヤと知り合いますが、彼もまた、学校のアイドルでありながら、人に知られたくない秘密を抱えていました。笑顔を隠した、煮え切らない態度のせいも... 続きを読む
  • いま、子どもの本が売れる理由~マーケティングから読む、斬新な「通史」。
    http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480017109/1997年より続く出版不況の中、逆に売上を伸ばしている児童書市場。なぜ「子どもの本」は売れるのか。気鋭のライターが豊富な資料と綿密な取材で解き明かす!■通史がなければ書いてやろう筆者は子どもの本の専門家ではなく、編集者出身でウェブ出版やコンテンツビジネスについての著書が多いライターです。自身にお子様が生まれるまでは、書店の児童書コーナーに足を運んだこと... 続きを読む
  • 勝尾金弥師・惜別の辞が「朝日」に掲載。
    我が師、勝尾金弥の追悼記事か朝日新聞夕刊に掲載された。4月4日の逝去、その時点で金沢の地方紙と中日新聞には訃報が掲載されたが、朝日には載らなかった。大変残念に思っていたところ、夕刊の「惜別」の欄に取り上げられたのである。あわせて紹介された二人は6月、7月のご逝去。どうしてこのような扱いになったのか、ネコパパにはよくわからないが、恩師の逝去がようやく全国紙にて周知されたことに、胸をなでおろしている。... 続きを読む

プロフィール

yositaka

Author:yositaka
子どもの本と、古めの音盤(LP・CD)に埋もれた「ネコパパ庵」庵主。
娘・息子は独立して孫4人。連れ合いのアヤママと二人暮らし。

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